第10話 光を失う(3)
(もう、どうしようもないよな)
先ほどよりもさらに肩を落とし、とぼとぼとした足取りで町を歩く。
そんな彼を心配して目をやる者はたくさんいるが、ハルトだと気がつくと、冷ややかな目線を向ける。どうせまた酔っているのだろうと思い、誰も声をかけてこない。
そんな町の人たちの反応も気にならないほど、ハルトは深く考え込んでいた。
あれほど強い人間は見た記憶がない。そんな彼女が、一人では魔竜と戦えないと言い切った。彼女が言うのなら本当なのだろう。ならば他の誰に頼んでも一緒だ。
仲間にさえなってくれれば何か方法もあったかもしれないが、それすらも消え去った。
わずかに灯った光に、何も準備せずに飛びついたせいで、その光自体を失ってしまった。もう二度とチャンスはない。
もっとも、彼女の言う通り赤の他人のために、しかも治るかもわからない薬の素材のために、命をかける人間なんてそうそういない。
そんなお人好しがいるとしたら、この町の人たちの手助けだけで人生が終わってしまうだろう。
ハルトの心の中を表すように、ぽつり、ぽつりと雨が降ってきた。
瞬く間に雨は強くなり、まるで滝の中にいるような土砂降りになった。
町の人たちが慌てて雨宿り場所を探す中、ハルトは微動だにしない。そして握りしめた拳を大きく振り上げ、誰かの家の壁に叩きつけた。
鈍い音と、じんわりとした痛みと熱が広がる。
「くそっ!!」
大きな声を上げるが、その声すら雨音にかき消され、誰にも届かなかった。




