青木くん編第三話 青木くんと水泳
僕は青木一樹。今は放課後でなぜか長谷川陸とさいたま市うなぎ区の近くにある市民プール。下うな合プールに自転車で向かっているところだ。
「長谷川くん。なんでこんなところに連れて来たの?」
「修が連れてこいって言ってきたんだよ! あと青木! 『くん』 は付けなくていいって言ってるだろ!」
僕が素直に疑問を投げかけても答えてくれない……
「君が『くん付けで呼べ』って言い出したんでしょ!?小学生の時に!」
とりあえずこっちの問題を片付けるか……!
陸は渋い顔をして、
「確かにそうだけどよ……」
とハッキリとしない態度をとる。
「じゃあ、幼稚園のときみたいに『陸』って呼ぶよ! いいの長谷川『くん』?」
なので僕はからかうふりをして本音を言ってみる。
「しょうがないな……くん付けよりかはマシか……わかったよ青木。陸で良いぞ」
「え!? いいの!? じゃあ陸さ、俺のことも一樹って名前で呼んでよ!」
幼稚園の頃の呼び名で呼べることに嬉しさのあまりに、思わず声が上ずりながら、僕はこう陸に提案する。
「いやだよ……お前は一生青木だよ……」
「えぇー! なんでだよ!? りーくー!」
「気が向いたらな!」
縦に並んで話しているので、前を走る陸の表情は見えないけど、きっと照れてるだろうな!
「ほら青木。見えてきたぞ!」
楽しい時間はあっという間に過ぎて、下うな合プールが見えてきた……
……見えてきてしまった……!
***
「林くんと……芹沢くん!? なんで!?」
そこで待っていたのは未来からやってきたとは、僕は信じてない林修くんと、大勢の彼女がいるとウワサの芹沢勇気くんだった……
「ねえ……陸、なんで芹沢くんなのかな?」
僕は小声で陸に聞いてみる。
「……ちゃんと理由があるんだよ。な! 修!」
「そうだよ青木くん。青木くんさぁ。さっきの僕の質問に即答できなかったじゃん? だからプランBのユーキパターンの策を使うことにしたんだよ!」
林くんは胸を張ってまた豪語する! プランAはなんなのか気になるけど、とりあえず置いとこう……
「林くん。そのプランBってなんなの?」
「もちろん! 青木くんを水泳大好きに戻す作戦だよ! それはカナヅチに水泳を教えることだよ!」
***
——男子更衣室にて
芹沢くんと林くんは堂々と着替えているけど、僕は隅の方で着替える。
「おい。青木……なんで隠れるように着替えるんだ?」
陸が心配して声をかけてくれる。
「実は、知り合いに会わないか心配なんだよ……」
僕は昔から地元では「将来オリンピックに行ける!」と皆さんに期待されてきた選手だ。
こんなところで泳いでいるところを見られでもしたら……
「何をやっているんだ!」っと怒られるかもしれない。
「青木くんいいモノがあるよ!」
ここで林くんがぬっと出てきた!
「いいモノって?」
こう聞くと林くんは着ていた青いパーカーのポケットに手を突っ込む。……そして!
「じゃじゃーん! 『ちょっと目立たなーい粉振り機』!」
まるであのネコ型ロボットのように何かを出してきた!
それはまるで粉チーズを入れる容器のような見た目だ。
「林くん……それってどんなモノ?」
「ふっふっふっ! これは振りかけるとその人を目立たなくさせる未来の道具だよ!」
林くんは半目で、腕を組みながら、自信満々に言ってくる!
「えっと……誰にも見つからないの?」
僕は疑問をぶつける。
「青木くんさぁ……そんなヤバい道具なんてあるわけないじゃん。これはあくまで目立たなくさせる道具だよ。大切な人なら発見されるけど、知人くらいの人なら気づかないよ!」
「えっと……俺のことをテレビで見たことがあるくらいの人なら発見されないの?」
そこが大事なところだ。僕は小学校の時に地元のテレビで特集されたことがある。
「多分大丈夫だよ〜」
「林くん『多分』じゃ困るんだけど……」
「青木くん。やってみなきゃわからないじゃん! とにかく早く着替えて、プールに行くよ!」
「えぇ……」
僕はイマイチ信用できないけど……
まあ、気休めにはなるか!
シャワーを浴びる前に粉を振りかけてもらった。水では流れないみたいだけど……ホントかな?
***
——屋内プール
「これから、青木くんには最高にカナヅチの芹沢勇気に水泳を教えてもらうよ!」
林くんは僕に指を指しながらこう言ってくる。
「いいけど……二人はどうするの?」
「僕と長谷川くんは別のレーンで勝手に泳いでいるからね! いっくよー! 長谷川くん」
「ああ! 修! 勝負するぞ!」
陸と林くんは準備運動もせずにプールに入って行った……
「えっと芹沢くんってどのくらい泳げないの?」
取り残されてしまった僕は芹沢くんに話しかける。
「水に浮けないレベルだよ……」
ポツリと答えてくれた。芹沢くんとは小学校時代には関わりがあんまりなかったから、気まずいな……
「とりあえずしっかり準備運動してから入ろうか……」
***
——プールの中にて
「芹沢くん……さっきの話は本当だったんだね……」
芹沢くんは水泳の授業で始めに習う「だるま浮き」すらできないレベルだった。
水に浮かぼうと頑張ってるんだけど水に沈んでいってしまう。
「芹沢くん。悪魔の実の能力者なの?」
あんまりにもひどいので僕は冗談を言ってみた。
「ははは……俺は実はヨミヨミの実を食べたのかもしれないよ!」
「ははっ! 芹沢くんって面白いね! 今日は水に浮く練習をしようよ!」
——その後はひたすら水に浮く練習を教えた。
全然芹沢くん……いや! ユーキくんはできなかったけど楽しかった!
僕って水泳が好きというよりも、プールが好きなのかもしれない……!
水の中に久しぶりに入ったけど、冷たい、だけど心地いい水の中は最高だった!




