表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
d+d【先行公開版】  作者: Hilde
【先行公開版】第三章 戦闘 - Battles -

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/94

バグダード - Baghdad - 1

◯アッバース国・首都直轄州・バグダード市・バグダード円城外・西門付近(日替わり)


正円の城壁に護られた〝平安の都〟バグダード市。

その城壁に設けられた4つの門の西門、シャーム門。

その門から、荷馬車が続々と出ていく。


荷台には、大きな衣装箱や高価な絨毯が積み込まれ、

武装した護衛が周囲を固めている。


市民1「ほら見ろ、また高官の奥方が西へ逃げていく」


市民2「あの噂は本当なのか? カリフの軍が負けたっていう」


市民3「レイから急使が来たらしいからな」


空から白いものがヒラヒラと、いくつも舞い落ちてくる。


市民1「何だ? こりゃ」


拾い上げると、フスハー語の文面が記されている。


市民1「誰かの手紙か? お前、読めるか?」


市民2「いや。イマーム(指導者)様のところに持って行こう」



◯バグダード市・バグダード円城外・カルフ地区・南部・市場(スーク)


円城の外に広がる市民の生活圏、カルフ地区。

モスクを中心に市場や病院が充実し、住民や商人、職人たちの住居が密集している。


南部最大の市場では、日除けで覆われた通りが幾筋も伸びる。

通路の両側には多種多様な店が軒を連ね、多国籍の商人や買い物客でごった返している。


買い物客「おやじ、小麦を2袋くれ」


店主「2袋? 昨日も買っていただろう」


買い物客「あと、その干しナツメヤシも全部」


店主「おいおい、買い溜めか?」


買い物客「念のためな」



市場(スーク)・入口


市場の入口周辺に、空から白いものが次々と舞い落ちてくる。


通りかかった商人「何だ? こりゃ」


拾い上げると、何やら文章が書かれている。



◯バグダード市・バグダード城壁・東門


円城都市バグダードの城壁に設けられた4つの門の東門、ホラーサーン門。

帝国東方へ通じるホラーサーン街道の起点であり、東方から都へ至る者は必ずこの門を通る。

分厚い石造りの城壁に守られた正門で、左右には重厚な望楼がそびえ、城壁上には射撃陣地が並ぶ。


「守りを固めろ!」

東門守備隊長が号令をかけ、慌ただしく防衛準備が進められている。


守備兵1「ホラーサーン軍は魔神(ジン)に守られてるってさ」


守備兵2「魔神(ジン)だぁ? 嘘くせぇ」


守備兵1「だが、砲撃が効かなかったんだとよ」



◯東門・望楼


空から白いものがヒラヒラと、いくつも舞い落ちてくる。


見張りの兵が拾い上げる。

「何だ? こりゃ」


見張りの兵、守備隊長に報告に走る。


ビラを受け取った守備隊長、文書に目を走らせる。


バグダードの民よ、勇敢なる宮廷軍の戦士たちよ、

我はイスマイール・イブン・ハーリド・アル=シャリーフなり。


我が目的はただ一つ。

先帝ハーリド・アル=シャリーフが定めた協定を回復し、アッバースの団結を取り戻すこと。

我は弟ラフィを討つために上るのではない。

協定を破り、帝国を争乱へ導いた者たちの過ちを正すために上るのである。


バグダードの民よ、恐れるな!

ホラーサーン軍は、汝らの家を傷つけず、財産を奪わず、血を流さぬことを神に誓う。我らは略奪者ではなく和解の使者だ。


宮廷軍の戦士たちよ、剣を収めよ!

汝らが攻撃せぬ限り、我らも剣を抜かぬ。汝らも、我らも、同じアッバースの民。共に手を携え、帝国の分裂を終わらせよう。


民よ、戦士よ、和平への道を開け!

我はただホラーサーン門を通り、協定の履行を求めるのみ。

帝国は争いによってでなく、団結と繁栄によって強くなる。

アッバースの旗を再び一つにしよう。


神の導きがあらんことを!



◯バグダード市・バグダード円城外・カルフ地区・南部・隊商宿(キャラバンサライ)(日替わり)


市場に隣接する隊商宿で、商人組合の会合が密かに開かれている。


穀物商である商人組合長が切り出す。

「隊商からの情報を総合すると、ホラーサーン軍の進軍速度が予想より速い」


油商「現在、大量発注をかけているが、間に合わなければ在庫が枯渇する恐れがある」


乾物商「買い溜めをする客が出始めている。

大勢の市民が買い溜めに走れば、店の棚はすぐ空になるぞ」


香辛料商「店に品物が無くなったら…倉庫に押し寄せるだろうな」


鉄器商「打ちこわしや、暴動もあるかもしれん…」


織物商「その上、ホラーサーン軍が来たらどうなる?

戦火で店や倉庫が燃えたら、破産だ」


宝石商「貴族方は財産を隠し始めている。

皇太子殿下のビラには、ホラーサーン軍は略奪しないと書いてあるが…」


軍馬商、首を振る。

「ホラーサーン軍が略奪せずとも、宮廷が兵糧や馬を徴発すれば同じことだ」



◯カルフ地区・南部・倉庫街


会合を終えた商人組合長、在庫確認のために倉庫街へ向かう。


裏通りの暗い路地に差し掛かった途端、頭上からふわりと白い人影が降りてくる。


商人組合長「ヒッ!」

思わず飛び退く。


中空に、白い長衣の男が浮かんでいる。


商人組合長、腰を抜かす。

「ジ…ジジ…魔神(ジン)…!」


白い長衣の男、宙に浮かんだまま、片言のフスハー語で、尋ねる。

「商人組合長カ?」


商人組合長「は…はいぃ」


白い長衣の男、イスマイールの書簡を差し出す。

「イスマイール殿下ハ、略奪ヲ禁ジ、商人ノ財ヲ保護スル。

商人ナラ、戦ト開城、ドチラガ得カ判ルダロウ」


商人組合長の足元へ書簡を落とし、

白い長衣の男、掻き消える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ