首長会合1 - Majlis of Sheikhs - 2
◯カナン地区・東側の地域
ジェームズ、東側の首長の案内に従って各県を巡り、首長たちをバスに乗せていく。
西側と東側の首長たち、互いに現状を報告し合う。
ハーン・ユーニス県首長と、ラファフ県首長が訴える。
「予想を超える難民がアル=マワシ沿岸地帯に流入している。
着の身着のままで、テントもなく路上で寝泊まりする者も多い。
炊き出しを行っているが、とても追いつかない」
東側の地域、ジェニーン県首長が、険しい表情で口を開く。
「ついに、東側でもシオン軍による軍事介入が始まった。
〝テロリストの残党の掃討〟という口実で、複数の難民キャンプが攻撃されている。
3年前に土地を失った避難民たちが多く暮らしているキャンプだ」
トゥールカリム県首長「シオン軍は避難民を強制的に追い出し、難民キャンプを占拠した。
一帯を封鎖し、避難民が戻れないよう住宅を破壊している」
エリコ県首長「…まるで3年前の悲劇の再来だ。
土地を失った者たちが、また追放されるなど──こんな残酷なことは許されない」
ヘブロン県首長「兵士に護衛されたシオン教徒も、銃を持ち村々を襲撃している。
暴力や執拗な嫌がらせに耐えきれず、村を放棄する住民も出てきた。
このまま手をこまねいているわけにはいかない」
◯カナン地区・東側の地域・草地
ジェームズ、カナン地区の首長たちを乗せたバスを、開けた草地にそっと降ろす。
ルイとジェームズ、バスの外に立って周囲を警戒する。
◯バスの中
アヴェスを司会進行役として、カナン地区の首長会合が始まる。
アヴェス「今週の月曜日、世界連帯構想本部で、緊急特別総会が開催されました。
カナン地区の加盟について採決されましたが…、残念ながら、否決されました。
領土奪還のため決起していただいた方々も…その多くが犠牲になられました」
首に鍵を下げた年老いた首長、視線を落とす。
他の首長たちも、重いため息をつく。
アヴェス、続ける。
「加盟承認に関しては、再討議を申請しており、世連加盟国と日程調整をしています。
──前回の状況を踏まえ、再討議を土曜日に行うよう要望しました」
首長1、首を傾げる。
「土曜日…シオン教徒の安息日か?」
アヴェス、うなずく。
続いて、ニザームが首長たちの前に進み出て、胸に手を当てる。
「アッバース国ホラーサーン地方書記官、ニザーム・アル・ニーシャープーリーです。
我が主、イスマイール皇太子殿下が親征中であるため、私が殿下に代わってお伝えします」
ニザーム、イスマイールが認めた手紙を開き、読み上げる。
「汝らに平安あれ。
我はここに約す。
次の決議でカナン地区の世連加盟を実現させる。
決死隊の犠牲を教訓とし、次の領土奪還作戦は、カナン地区住民による総力戦とする。
首長会合で同意が得られれば、明日から準備を始めよ。
一、カナン地区全土の男たちに銃を配備し、訓練を施せ。
一、その中から前衛4,000人を選抜し、現在保有する新型銃で錬成せよ。次週、追加の3,000丁が到着する。
一、教練は、市街戦を想定せよ。
一、手練れの騎手と駿馬を集めよ。
教練の指揮はファーティマーン大尉に一任する。
この計画、努々シオン国に漏らすな。住民にも目的を伏せよ。
──各々、役目を果たせ」
アリー、胸に手を当て、深くうなずく。
アヴェスが首長たちに呼び掛ける。
「再討議は、早ければ2週間後の土曜日になります。前衛以外の方が使う銃は、本日中に注文してください」
離れた席に控えるコメルコ商会のマシューが一礼する。
首長たちが、低い声で相談を始める。
首長2、軽く身を前に乗り出す。
「先の総会で、カナン地区の世連加盟は否決されている。
再討議でも、また否決されるのではないか?」
アヴェス、回答する。
「承認に反対したのは、白銀国ただ一国です。
白銀国が賛成に回れば、承認は実現すると考えています。
私には、白銀国に通じる伝手があります。
次週までに、必ず白銀国を説得してみせます」




