首長会合1 - Majlis of Sheikhs - 1
◯カナン地区・北ガザ県・上空(土曜日)
バスのような形状の乗り物が2台、飛行している。
先頭のバスの屋根には、シルヴィアとエーリンが並んで腰掛け、3人の女魔道士たちとおしゃべりに花を咲かせている。
バスの中には、カナン地区に出荷された大量の商品が詰め込まれている。
後続のバスは、アヴェス、ニザーム、コメルコ商会のマシューが屋根に乗り、その前後をルイとジェームズが浮遊している。
◯北ガザ県・ベイト・ラヒア市・アル・シマー小学校・校庭
小学校の校舎は、既に人が住めないほど半壊している。
ルイの作ったシェルターは無傷で残っており、その横でゾットとマフムード首長が待機している。
少し離れた場所には、カナンの男たちが集まっている。
輸送担当の女魔道士、バスをそっと地面に降ろす。
少し遅れて、ジェームズのバスも後に続く。
✕ ✕ ✕
魔道士たちやアヴェス、カナンの男たちが荷下ろしを始め、次々と荷物を運び出す。
シルヴィアとエーリン、マフムード首長と挨拶を交わす。
マフムード首長「せっかく来てもらって申し訳ないが、引き取ってもらう子供はいないのだ。
シオン国から、北部の住民全てに退避勧告が出た。
残った者は、全員テロリストとみなして標的にするという。
南に移動できる家族の子供たちは皆、移動を始めている。
様々な事情で移動できない家族の子供は、ここに留まる覚悟を決めた」
シルヴィアの表情がこわばる。
「…わかりました。
皆さんと子供たちの無事を、お祈りしています」
✕ ✕ ✕
アヴェスが、マフムード首長に駆け寄る。
「首長、私たちの力が及ばず、多くの方の命を犠牲にしてしまいました。
大変申し訳ありませんでした…っ」
深く頭を下げる。
マフムード首長、アヴェスの肩に触れ、顔を上げさせる。
「…あなたが謝ることではない。
彼らは定命に従い、殉教者として逝ったのだ」
通訳したゾットが説明する。
「ディーン教徒にとって、信仰や正義のために戦って死ぬことは最高の名誉だそうだ。
お前が背負う話じゃない」
アヴェス「…でも…」
ニザームが近寄る。
「アヴェス殿、我々の神は、正義を貫くことを重んじます。
他の首長たちも、謝罪ではなく、正義のために前へ進むことを望むでしょう」
✕ ✕ ✕
2台のバスの積荷が全て降ろされる。
アヴェスたちとゾットとマフムード首長、ジェームズの指示でバスに乗り込む。
ジェームズ、バスを浮遊させ、カナン地区の首長たちのピックアップに向かう。
◯カナン地区・西側の地域
ジェームズ、マフムード首長の案内に従ってバスを移動させる。
カナン地区西側の残りの4つの県を巡り、首長を一人一人乗せていく。
ラファフ県では、ラファフ県首長と共に、首に鍵を下げた年老いた首長と、アッバース国ホラーサーン軍大尉アリーが乗り込む。
北部一帯は、がれきに覆われた灰色の大地と化している。
北部と南部を繋ぐ大通りを、多くの人々が移動しているのが見える。
人々は、中央付近にあるシオン軍の軍事回廊を越えて南部へ向かう。
南部には、多数の難民キャンプが形成されている。
その中でも、ことさらテントが密集している地域がある。
青をたたえるノストルム海の沿岸に、帯状に細長く伸びるベージュ色の砂丘地帯。
「アル=マワシ沿岸地帯だ。シオン国が避難先に指定しているそうだ」
ディール・バラフ県首長の話を聞いていたゾットが、アヴェスに説明する。
アヴェス「避難先…って…」
アヴェス、砂丘にひしめくテント群と、北部から移動してくる人々の群れを見る。
「あの人たちは…とても入りきらない」
「…ああ」
ゾット、硬い表情でうなずく。




