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d+d【先行公開版】  作者: Hilde
【先行公開版】第三章 戦闘 - Battles -

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アル=マワシ - Al-Mawasi - 2

◯カナン地区・ラファフ県・ラファフ市(日替わり・午後)


カリドたち一行、再びラファフ県に戻ってくる。

先頭に、ハサンの担架を運ぶカリドとユスフ、子供たちと女教師たちを挟み、後尾にカースィムの担架を運ぶヤットとミロが続く。


街には、シオン軍による攻撃の跡が生々しく残っている。

崩れた建物のがれきが道を塞ぎ、空気に塵が混じり喉に絡みつく。


男1「こっちだ!」


男2「声がする! ここだ!」


倒壊した建物に男たちが集まり、がれきをどかして生存者を救い出そうとしている。

別の建物の隙間には、力なく垂れた手が覗いている。


カリド、ハサンに親戚の家までの道を確かめながら進む。

「道は合っていますか?」


「…ああ。方角は合ってるが…、目印になるものが、何もかも壊されちまったな…」

気落ちしているハサン。


がれきを道の端に片付けている男たちの中から、一人の青年が近寄って声を掛ける。


青年「伯父さん…?」


ハサン「サリーム!」


「やっぱり伯父さんだ!」

サリーム、ハサンに駆け寄る。


ハサン「みんな無事か!?」


サリーム、うなずく。

「うちは運良く砲撃されなかった。

伯父さんこそ、皆で心配してたんだよ」


ハサン、脚を指差す。

「砲撃をくらって動けなかったんだ。

ここまで、この人たちに運んでもらった」


ハサン、肘をついて身を起こし、カリドたちを紹介する。


サリーム、胸に手を当てる。

「伯父を連れてきてくれて、ありがとうございます」


サリーム、仲間に応援を頼み、カリドとユスフからハサンの担架を受け取る。


ハサン、サリームに顔を寄せて尋ねる。

「俺みたいなのがもう一人増えても、手間は変わらんか?

放っとけねぇ奴が居るんだ」


サリーム「…まあ、どうせ俺が面倒を見るから」


ハサン、カースィムに声を掛ける。

「カースィム、俺と一緒に世話になるか?」


暗い目でうつむいていたカースィム、驚いて顔を上げる。

「…俺も?」


ハサン、にやっと笑みを浮かべる。

「これも、定命(カダル)ってやつだ」


サリーム、笑顔を向ける。

「よろしく、カースィム」


カースィム、ほっとしたように視線を伏せ、

「…よろしく」


カリド、サリームに尋ねる。

「俺たちはラファフ難民キャンプに行くつもりなんだが、空きはあるか?」


サリーム、表情を曇らせる。

「ラファフ難民キャンプは放火されて多くの犠牲者が出ました。他の難民キャンプも狙われるかもしれません。

それに、今朝これが…」


サリーム、手のひらほどの大きさの紙をポケットから取り出す。


カリド「…え?」


紙には、カナン地区の地図が描かれ、シオン語とフスハー語が書かれている。

カナン地区全土に✕が付けられ、海岸沿いの細長い帯状地帯へ向かう矢印が大きく描かれている。


サリーム「…『アル=マワシ沿岸地帯へ向かえ』…『アル=マワシは〝人道支援地域〟だ』と」


カリド「〝人道支援地域〟?」


サリーム「シオン国が指定した安全地帯だそうです。野戦病院やテント、食料や水、医薬品も用意していると」


ハサン「そんなの眉唾だ。神に誓って、俺はもう動かねぇぞ」


サリーム、ハサンに同意する。

「父さんたちも、ここを離れるつもりはないんだ。一度出たら、もう戻れない。それだけは嫌だって」


カリド、テクラや子供たちを見回す。

「…俺たちは、移動するしかないだろうな」


ハサン、カリドたち一人一人の顔を見て別れの挨拶をする。

「短い間だったが、世話になったな。

皆、ありがとな」


サリーム「どうか、ご無事で」


カリド、胸に右手を当てる。

「あなたたちも」


カースィムが、ヤットにそっと声を掛ける。

「…世話になった」


ヤット、首をふる。

「こういう時は、お互い様だ」


カースィム、ちらりとライラのほうに視線をやる。

「…うまくいくといいな」


ヤット、顔を赤くして、微笑む。

「ありがとう」


カースィム、わずかに目を細める。

「じゃあな」

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