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2.カトレアの憶測と、ナイトメア。







 放課後、俺はすぐに学校を飛び出した。

 そして佐那に連絡を取ろうとする。しかし電話は繋がらない。メッセージにも既読が付かない。不安がだんだんと募っていく。

 俺は電車に乗ったところで、賀東に電話をかけた。

 すると――。



「…………分かった」









 短い電話のあとに、俺が駆け込んだのはあの日の総合病院。

 受付で確認をしてから、制止を振り切って走った。目指すのは三階の西棟、一番奥の個室。心臓が跳ね上がるのを感じながら、俺はその病室の扉を開いた。




「え、拓馬さん……?」




 そこには、佐那がいた。

 ベッドに腰掛けた彼女は、驚いたように目を見開く。

 どうして俺がここにいるのかと、そう訊ねるような表情だった。だがすぐに、なにかを察したのか泣き出しそうな顔になって言うのだ。




「そう、ですか。誰かから、聞いちゃったんですね」




 無理矢理に笑顔を浮かべながら。





「わたし、もうダメみたいです。先日の検査で、お医者さんにも――」

「佐那……!!」




 見ていられなかった。

 いつも明るかった彼女の、そんな表情は。




「拓馬、さん……?」

「…………!」

「泣いているんですか、わたしのために?」




 小さな佐那の身体を抱きしめる。

 震えているのが伝わったのか、彼女は俺の肩に手を回して言った。




「ありがとう、ございます。わたしのために、泣いてくれて」――と。




 まるで、赤子をあやすように。

 佐那は俺の背中を、ぽんぽんと、優しく叩いた。




「嘘だって、言ってくれ。頼む……!」

「……ごめんなさい、です」

「…………!」




 必死に懇願する。

 それでも俺より小さな身体をした少女が、静かにそう答えた。

 奥歯を噛みしめて、感情を押し殺す。これ以上みっともない姿を見せては、佐那を不安にさせてしまうから。


 だけど、こんなのってないだろ。

 どうしてだよ。どうして、佐那なんだよ。


 彼女を抱きしめる腕に、自然と力が入っていった。

 あまりにも儚い存在の少女が、消えてしまわないように祈りながら。









「…………」



 談話室で、俺は一人考えていた。

 自分にはもうなにも、できることはないのかと。

 だけど、なにも思いつかなかった。俺には医学の知識もなければ、技術もない。そもそも佐那の身体を蝕むものの正体を知らないのだ。


 ただ、時間が過ぎていく。

 その中で俺は――。



「ずいぶんと、沈んだ顔をしているんだね。キミらしいけどさ」

「……え、なんで?」



 その時だった。

 思いもよらない人物に声をかけられたのは。



「凪咲に聞いてね。ボクだって、彼女の友人だからさ」

「カトレア……」



 その人物――カトレアは、俺の向かいの席に腰掛けると大きく息をつく。



「しかし、曖昧な存在だとは思っていたけど。想像より早かったな」

「……え? それって、どういう意味だ」

「………………」



 そして意味深なことを言うが、俺の問いかけには答えない。

 カトレアは少し考えてから、こう口にするのだった。



「もしかしたら、裏で手を引いているものがいるかもしれない」――と。



 それは、あまりにも謎に満ちた言葉。

 俺には首を傾げることしか、できなかった。



「誰かが、裏で……?」

「気にするな。これはあくまで、ボクの推測だ。それより――」




 カトレアは短く言って、話題を変える。

 周囲を見て、こう口にした。




「強力な、ナイトメアがいるな」――と。




 そして、ある方向に視線を投げる。

 その先にいたのは――。





「え、あれは――賀東?」





 見舞いの花を手に、病室へと向かう賀東の姿だった。



 


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