表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/63

3.心の強さと、覚悟。









 賀東にナイトメアの侵攻が始まっている。

 カトレアはそう言っていたけど、彼からそんな素振りはまったく感じられなかった。それどころか、佐那の前でも明るく振舞っている。

 俺は病室の扉越しに、二人の会話を聞いてそう思った。


 傍から見れば不安になりそうな妹と、それを励ます兄貴の構図。

 そのはずのに――。



「なぁ、カトレア。本当に賀東なのか?」

「なんだ、ボクの言うことを疑うのかい」

「そういうわけでは、ないんだけど……」



 なんだろう。

 モヤモヤしてしまった。



「ナイトメアに襲われる基準って、なにかあるのか?」



 その中で、俺はふと思ってカトレアに訊ねる。

 少女は俺の隣で椅子に腰かけ、足をぶらぶらさせながら言った。



「そうだね。一つに、心が弱っていることが前提となる」

「だったら攻め込まれるのは、佐那の方じゃないのか?」



 俺が疑問を投げかけると、そうとは限らないとカトレアは首を左右に振る。



「そうとも限らない。身体の強さと、心の強さは必ずしも合致しないんだ。キミの目にはどう映っているか知らないが、佐那の心は存外に強いものだよ」

「強い、って……佐那が?」

「あぁ、そうさ」



 椅子から飛び降りると、彼女は腕を組んでこう語った。



「ボクは都合上、その人間の心の強度が見える。佐那という少女は身体こそ弱いが、その心には確固とした覚悟があるように思えるのさ」



 ――だけど、と。

 ふっと息をついて、少女は赤の眼差し扉に向けた。



「兄の方は、生きる理由にしてきた妹を失う恐怖に怯えている。ボクには、そう思えて仕方がない」

「失う、恐怖……」



 それを聞いて、あの日――海辺で話した賀東のことを思い出す。

 たしかに彼は震えていた。佐那のいない夢を見て、誰よりも強そうなその心に揺らぎを見せていたのだ。それに、これはあくまで夢の中だが――。



「賀東は、たしか……」



 大切な者を失い続けた賀東。

 俺は、その可能性の一端を見ていたかもしれない。



「どうすればいい、カトレア」

「どうすれば、とは?」



 深呼吸一つ、少女に訊ねた。



「どうすれば、二人を救えるんだ」――と。




 それを聞いてカトレアは、どこか難しい顔をして答えた。




「救えるか、か。ハッキリ言おう、ボクらにできるのは悪夢を払うだけ。佐那の身体は治せないし、兄の喪失感を消すことはできない」

「それでも、なにか――」




 ――なにか、あるはずだ。


 俺は拳を握りしめる。

 すると、そんなこちらを見て彼女は言うのだった。



「まぁ、諦めないのは良いことだ。それに何より、キミらしい」

「え……?」



 どこか、誇らしげに笑って。





「できる限り、後悔は残すな――それが、ボクから送れる唯一の言葉だよ」





 カトレアは、こちらに背を向けるのだった。



「おい、佐那に会っていかないのか?」

「よろしく言っておいてくれ。それだけで、ボクは十分だ」



 そして、ゆっくりと歩きだす。

 その後姿を見送って、俺は彼女の言葉を繰り返した。




「できる限り、後悔は残すな――か」




 握った拳に力が入る。

 俺は一つの覚悟を決めるのだった。



 


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ、というか大賞頑張れ!


もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより☆評価など。

創作の励みとなります。


応援よろしくお願いいたします。

<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ