1.噂。
がっくりと肩を落としながら、俺は教室で机に突っ伏していた。
今朝はマジで死ぬかと思ったというか、死んだ。佐那も一緒に事情を説明してくれたけれど、結婚前の男女が何事かと、古風な説教を喰らってしまった。
「おいおい、ずいぶんと疲れてるな」
「学校休んで女と一緒にいたのが、そんなに疲れたのか?」
「うるせぇー、好きでこんなことになってるわけじゃねぇよ。ていうか、佐藤と伊藤がなんでそれを知って――あぁ、またどうせ凪咲か」
そんなこんなで。
俺は午後の授業から出席となった。
休み時間になると、佐藤と伊藤が茶化してくる。こいつらと話すのも随分と久しぶりな気がするが、そういえば夏の予選も近いのか。
昼休みも練習が入ることがあって、単純に会ってなかっただけだ。
しかし夏の予選といえば、賀東にとっては最後の大会だった。
強豪校のエースだという話だったけど、そのへんどうなのだろうか。
「なぁ、二人とも。賀東礼二って、知ってるのか?」
そう思って、なんとなく訊いてみた。
練習試合で対戦していたから、知らないわけがないのだけれど。俺が訊くと二人は目を丸くして、こう言うのだった。
「馬鹿、お前――賀東礼二、っていったらドラ1候補の有名選手じゃねぇか」
「去年の甲子園で二年生エースとして、ベスト4だぞ?」
「え、そんなに凄いピッチャーだったのか」
改めて驚く俺。
賀東のやつ、普段はそんな雰囲気じゃないからな。
そう思っていると野球部コンビは、訊いてもいないのにこう話し始めた。
「なんでも、男手一つで育ててくれた親父への恩返しで野球やってるとか」
「加えて美少女で病弱な妹さんまでいるなんて、どんな主人公だよ、ってな。噂では契約金はすべて、妹の治療費にするつもりだとか、聞いたことあるぞ」
他人の家庭事情をまた、ベラベラと。
それに辟易としながら俺は、なんとなく窓の外に目を向けた時だった。
「でもさ、妹さんの身体だって――」
佐藤が何気なく、こう言ったのは。
「もう、長くはもたない、って話だろ」
「え……?」
俺はなにかの聞き間違いだと思い、二人を見る。
すると彼らは、どうしたのかといった感じにこう続けるのだった。
「もっぱらの噂だよ。妹さん――佐那ちゃんだっけ? あの子、近いうちにまた入院することになったんだって」
「もう手術もできないって話から、きっと最後なんだろうなって」
「うそ、だろ……?」
こんな話、嘘でするもんかよ。
伊藤と佐藤は、真剣な表情でそう言うのだった。
「………………」
――佐那が、死ぬ?
世界から音が消えていく。
その中で俺は、ただ呆然とするだけだった。
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ、というか大賞頑張れ!
もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより☆評価など。
創作の励みとなります。
応援よろしくお願いいたします。
<(_ _)>




