4.友人と、仇と。
「すみません。わたし、可愛いものに目がなくて……」
「だからって、無許可にボクに抱きつくな!!」
「すみません、すみません!!」
「どうどう、落ち着いて」
さて、佐那の発作が一段落して。
俺とカトレア、凪咲、そして佐那の四人は円を描くようにして座っていた。一応はブルーシートを敷いているのだが、コンクリートの上であることは変わらない。
絶妙に尻が痛いが、文句は言えなかった。
「それで、カトレア? 佐那の夢について、分かることはあるか」
「いや、残念ながらないね。ボクだって万能ではない」
「そうか、残念だな……」
俺が顎に手を当てて考え込むと、咳払いを一つ。
カトレアはこう続けた。
「それでもここにきたのは、まったくの無意味でもないだろうさ」
「……と、言うと?」
訊ねると、彼女はこう言う。
「ボクが佐那の友達になってやろう、というんだ。夢の中の人物は、佐那と友達になることを望んでいたのだろう?」
「いや、それは別に繋がらないような気がするぞ」
「いいや、繋がるったら繋がるんだ! これはボクの直感だ!!」
「お、おう……?」
なにやら分からないが、勢いで押し切られてしまった。
しかし、この提案は佐那にとっても悪くない申し出だったらしい。
「ほ、ホントですか!?」
「うん。ボクは今日から、佐那の友達だ」
「ありがとうございます! 嬉しいですっ!」
「――ストップ。でも、抱きつくのはダメだ」
歓喜のあまりにカトレアに抱きつこうとするも、手を広げた姿勢で釘を刺された。しょんぼりと元の位置に戻っていく少女を見ながら、俺は苦笑いするしかない。
ちらり、凪咲の方にも視線を投げてみると。
「ん、どうした凪咲」
「いや……。あのカトレアが興味を持つのは、珍しいと思ってな」
「そうなのか?」
「うむ……」
一人、何やら考え込んでいた。
そうやって二人で話していると、こちらにカトレアの声が飛んでくる。
「凪咲、拓馬! 二人には特別任務を命じる!!」
あまりに突拍子のない言葉に、俺たちは顔を見合わせた。
そして、その内容もまた突拍子もないものだった。
◆
「――なぁ、拓馬」
「え、どうした。カトレア」
俺たちが帰り支度をしていると、カトレアがふいに声をかけてきた。
振り返ると廃墟と外の狭間に彼女は立っている。
そして息をつき、こう言うのだった。
「佐那に何かあれば、すぐにボクに言うんだ」――と。
いつになく真剣な表情で。
しかし、それについては――。
「さっき、凪咲にも言ってただろ? どうしてまた、俺に?」
そうだった。
先ほど、凪咲のいる場でも言っていた。
それなのに改めて、俺に対してだけ告げるのか。
首を傾げているとカトレアは、眉をひそめてこう言うのだった。
「凪咲を、信用し切ってはいけない」
苦虫を噛み潰すような表情になりながら。
「彼女は、裏切っているかもしれないからな」――と。
ふっと、強めの風が吹き抜けた。
俺は声も出せずに、カトレアのことを見つめるしかできない。
「え、それって……?」
「キミには教えておこう。ボクの【眷属】は――」
困惑するこちらに、少女は感情を殺した声で最後に言った。
「立花凪咲。彼女は【眷属】であり、ボクを仇として見る者だ」
言葉が出ない。
背筋に冷たいものが、流れていった。




