3.佐那とカトレア、ファーストコンタクト。
文芸部の活動を終えて、俺と凪咲、そして佐那の三人はとある場所を目指して歩いていた。もっとも、その目的地について凪咲は良い顔をしなかったが。
歩くこと小一時間。
辿り着いたのは、カトレアの住む廃墟だった。
「明海氏――安易にあの女を頼るのは、やめた方がいいぞ?」
「でも、言うほど危険じゃないだろ。大丈夫だって」
「あのー、お二人はなにを話しておられるのですか?」
入り口前で、俺と凪咲が言い合っていると佐那が首を傾げる。
「ここに、夢に詳しい奴がいるんだよ」
「夢に詳しい方、ですか?」
そんな彼女に答えると、また首を傾げられた。
その様子を見て凪咲は諦めたのか、ため息交じりにこう言う。
「夢に詳しいといっても、少し毛色が違う気がするがな。とりあえず気を付けるのだぞ? カトレアは、とにかく寝起きが悪い。まともに会話になるかどうか……」
そして、中に入っていった。
俺と佐那はそれに続く。相も変わらず殺風景な中を進むと、暗がりに彼女の姿があった。クマのぬいぐるみを抱きしめて、静かに寝息を立てている。
ゆっくりと近づく。
しかしカトレアは物音に敏感に反応してみせた。
「……だれだい?」
むくり、だらしのない格好で起き上がる。
目をこすって、半眼で俺たちのことをじっと見つめた。
「凪咲に拓馬――そちらの女の子は、初顔だね」
そして、一つ大あくび。
クマのぬいぐるみを抱きしめ直し、それに顔を埋める。
瞼がいまにも落ちそうな表情で、カトレアはこう続けるのだった。
「曖昧、だね」――と。
佐那を見て、ぽつり。
「そこの子は、存在自体があまりに曖昧だ。これはヴィンセントの言うようなイレギュラー、というやつなのかもしれないが……」
「イレギュラー……」
――また、それか。
俺はそう思ったが、あえて口には出さない。
というより、いまのカトレアは完全に寝惚けていた。
「なぁ、カトレア? 寝起きのところ悪いんだけど、話を聞いてほしい」
「どうした拓馬、キミから頼み事とは珍しい」
「珍しい……?」
ダメだ。凪咲の言ったように、会話になりそうにない。
俺はそこでふと、佐那の方を見た。すると――。
「――わいい、です」
彼女はなにか、口元を手で押さえながらそう呟いた。
「え、佐那……?」
そして、俺がどうしたのか聞こうとすると……。
「可愛いですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
「ふぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
佐那が、カトレアに飛びついた。
そしてその綺麗な顔に、必死になって頬ずりをする。
さすがに寝起きが悪いカトレアも、これで目が覚めないわけがなかった。凪咲と俺は互いに顔を見合わせて、苦笑い。
その最中にも、廃墟の中にはカトレアの絶叫が木霊していた。




