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2.佐那の見る夢と、願い。








「夢の中のわたしは、必ず真っ暗な闇の中にいるんです」



 佐那はそう切り出し、語り始めた。









 佐那は闇の中にいる。

 自分の姿さえ、手の形さえ確認できない暗闇の中に。それでもたしかなのは、自分がそこにいるということ。生きているということ。


 感情がある。

 もっと、みんなと遊びたいと。

 もっとたくさん、いろんなことを知りたいと。



 しばらく、同じ夢を見ていると気づくことがあった。

 この世界は生と死の狭間なのだと。それは、誰かに教えてもらったでもなく、なにか証拠を見つけたでもない。ただ漠然とそう感じただけだった。


 自分はこれから生まれるのか、それとも死んだのか。

 そのどちらかは、分からなかった。

 ただ――。



「わたしは、出会いたい」



 記憶があった。

 おぼろげながらも、彼女には記憶があった。



 頼りになる兄と、その友人の記憶。

 そして、もしかしたら出会えるかもしれない数多の人の声。

 誰のものかは分からない。それでもきっと、誰かに出会うこと、生きることは素晴らしいことなのだと思えた。だから、佐那は願い続ける。


 少しでもいいですから、わたしもあの輪の中に入りたい――と。



『キミは、そうか。キミもいたんだね……』



 そう願い続けること幾度目か。

 ふいに、幼い女の子の声が聞こえた。

 どうやら相手は、自分を知っているらしい。


 でも、自分に彼女の記憶はない。

 もしかしたら、出会う可能性がなかった人、なのかもしれない。



『キミは、行きたいんだね。みんなのところに』



 ――はい。わたしも、みんなと遊びたい。



『きっと、苦しい思いをすることになる』



 ――それでも、わたしは生きたいです。



『そうだね。それが、生きる、ってことだ』





 声の主とのやり取りの後、光が差した。

 眩しさのあまりに、佐那は目を瞑ってしまう。



『もし、そっちのボクと出会えたなら、友達になろう?』




 そして最後に、そんな言葉と共に。

 佐那は目覚めるのだった。









「毎日のように、決まってこんな夢を見るんです」

「………………」



 佐那が話し終えると、俺たちは自然と黙っていた。

 抽象的ながらも、たしかな記憶に基づく夢。物語的な焼き直しではなく、そこにあるのは間違いない。彼女の中にある経験であるように感じられた。

 しかしそうなると、生死の狭間とは、どういうことなのだろう。



「佐那は、その……。この夢のこと、どう思ってるんだ?」

「わたし、ですか?」



 俺が訊ねると、少女は少しだけ考えてから答えた。



「どうしてかは、分からないのですが――」




 どこか、晴れやかな表情で。




「ありがとう、って気持ちが大きいです」――と。




 それは、心からの感謝だと思った。

 でなければ、このように裏表のない笑顔ができるだろうか。



「あの、みなさんにお願いがあるんです」

「お願い……?」



 するとそこで、佐那がそう口にした。

 俺たちが首を傾げると、彼女は小さく頷いて言う。




「夢の中の女の子、一緒に探してもらえませんか?」――と。





 陽子先輩、凪咲と三人で顔を見合わせた。

 だが、断る理由はない。



「……分かった! 探そう、その女の子!」




 こうして、俺たちの今後の活動が決まったのだった。



 


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