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1.火花散る文芸部。







 賀東の遠征は、今日から二泊三日。

 それほど長い期間ではないが、相棒から頼まれたことであれば完遂しなければならない。そんなわけで、放課後からさっそく俺は動き出した。



「あの、本当にお邪魔してもいいんですか……?」

「気にしないで良いよ、先生には許可を取ったし」

「そうなんですか?」



 ホームルームが終わると、俺はまっすぐに駅へと向かう。

 そして、そこで待っていた佐那と合流した。それから再び学校へと戻り、文芸部の部室に案内する。手間ではあるが、彼女を見守るにはこれが良いと考えた。

 二人で過ごすより、他の人とも友達になれたら。

 俺はそう考えた。









「え、っとー……?」



 ――その、はずだったんだけど。



「みなさん、どうしてそんなに睨み合ってるんですかね?」




 文芸部に彼女を連れてきた瞬間。

 和やかであった空気が、あからさまに凍った。



「ん、拓馬くんは気にしなくていいよ?」

「そうだな。明海氏は知らなくていい」

「ですね、拓馬さんは鈍感さんですし」



 女性陣――陽子先輩、凪咲、そして佐那。

 この三人は先ほどから、にこやかに、されど鋭い気を放っていた。全員が気にするなと言うものの、どう考えても俺が渦中の人物であることはたしか。

 佐那は俺のことを鈍感と呼んだが、さすがにそれは分かった。



「ま、まぁ……。ひとまず、いつも通りの活動を……」



 ここで気圧されてはならない。

 俺は咳払い一つ。三人にノートを出すように言った。

 佐那にも夢日記を書くように、事前に言ってある。それぞれがノートを出すのを確認してから、俺は息をついてこう切り出した。



「それじゃ、俺から――」



 そして、色々脚色しながら。

 最近の夢の中で、話せることを話した。



「兄さんと、夢の中で……?」

「うん、そうなんだよ」

「へぇ……」



 すると佐那は、少しだけ興味深そうにする。

 そして、考え込むようにして頷くのだ。



「次は誰が話す?」

「アタシは、今日は遠慮しておこう」

「そうなのか? だったら――」



 凪咲に視線を投げると、紅茶を啜りながら返事がきた。

 そうなってくると、次は――。



「朝く――陽子先輩、お願いできますか?」

「うん、わかったよ~!」



 陽子先輩が適任だろう。

 そう思って声をかけると、彼女は意気揚々とノートを開いた。

 そして元気よく、第一声で――。




「私はね、大好きな男の子と結婚する夢を見たよっ!」




 そんな爆弾を投げ込んできた。



「大好きな男子と……」

「結婚、ですか……?」



 なぜだか分からないけど。

 凪咲と佐那が、それに低い声で食いついた。



 どうしたんだ、みんな。

 先輩にだって好きな男子の一人くらいいても……。




「結婚は意外に和風でね? とっても綺麗な衣装を着てたんだぁ~!」

「はぁ、それは良かったですね」

「あぁ、たしかに。めでたいな」

「………………」




 ウキウキとしながら俺に笑顔を向ける先輩。

 相槌を打とうとするのだが、もう二人の圧が怖かった。キミたち、別に仲が悪いわけじゃないんだよね? なにが、キミたちをそうさせるの?

 俺が首を傾げていると、話は終わったようだった。



「いつかできると良いね、こんな結婚式っ!」

「先輩、どうして俺を見て……?」



 とりあえず、次は佐那の番だろう。

 俺は彼女の方を見た。




「あ、わたしの番ですね」




 すると、佐那は頷いて。

 ほんの少しだけ難しい顔をしてから、こう切り出した。







「実は、みなさんに相談があるんです」――と。





 


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