1.佐那とペットショップへ。
ここから8章。
「あ、拓馬さん! こっちですー!」
「こんにちは、佐那」
ちょうど太陽が頂点へと昇る頃。
俺と佐那は、彼女の家の最寄り駅で集合した。
こちらの住んでいる地域とは少し違って、市街地に近い場所だ。数分歩けばそれなりの大きさのショッピングモールもある。
だが、そんな情報よりも気になることがあって……。
「すごいお洒落だね、今日は」
「えへへー! 気合い入れちゃいました!」
それは、佐那の服装。
昨日も私服を見たには見たが、気にするほどではなかった。しかし今日は、ばっちり決めている。爽やかな色のスカートに、身軽な印象を受ける白の上着。
ファッションセンスなどない俺でも、かなり可愛らしいそれだと分かった。
「似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます!」
手提げのバッグを前に持ち直して、彼女は深々とお辞儀。
その姿に思わず笑ってしまった。
「な、なんで笑うんですかぁ!?」
「――い、いや。ごめん! それじゃ、行こうか!」
「えー!」
訴えてくる佐那の言葉を躱しながら、俺はそう言う。
そして、せっかくだし――ということで。
「あ……」
少女の、小さな手を取った。
すると佐那は顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。
ひょこひょこと、恥ずかしそうにしながら俺の隣を歩いていた。それでも繋いだ手はしっかりと、軽く力を込めて握ってくる。
「卑怯です……」
佐那はぽそっと口にした。
俺はそれを聞こえないふりをして、歩き始める。
とにかく今日はいっぱい遊んで、楽しむんだ――と、そう思って。
◆
「見てください、拓馬さん! ペットショップです!」
佐那が俺の手を引く。
どうやら、楽しいものを見つけたようだった。
「あぁ~! 可愛いです! 見てくださいよ、この子猫!」
「あはは、元気だなぁ。それにしても、猫とか好きなの?」
「はい! 子猫とか子犬とか! 家ではずっと動画見てます!!」
俺のことを見て満面の笑みを浮かべる佐那。
そんな彼女の姿に、微笑ましい気持ちになるのだ。
賀東は最近まで佐那が入退院を繰り返していたと語っていた。もしかしたら動画で見ていたというのも、一人病室で、ということもあったのかもしれない。
それを考えると、身体が勝手に動いていた。
「佐那、ちょっとこっちに」
「え、どうしたんですか?」
俺は彼女の手を引いて、店内に入る。
そして、スタッフに軽く相談して許可を得た。
佐那はそんな俺のことを、首を傾げて見つめている。
それから、数分後だ。
「わぁ……!」
少女の小さな手のひらには、一匹の子猫がいた。
生後間もないのかもしれないその子は、キョトンとした表情で佐那の顔を見つめている。彼女の顔に手を伸ばして、小首を傾げるような仕草。
佐那はそれをまるで、夢を見るように蕩けた顔で見ていた。
「さすがに、飼うことはできないけど、ね?」
「い、いえ! ありがとうございます!」
俺の言葉に大きく首を左右に振る少女。
そしてまた、子猫をジッと見た。指先で遊んであげる彼女の姿もまた、愛らしいの一言。そんな微笑ましい様子を眺めていると、こちらも自然と笑っていた。
楽しい時間が過ぎていく。
愛おしい、誰もが望むような平凡な時間が……。
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