1.佐那と病院にて。
ここから、7章。
先日のソフト部との一件で、実は頭を数針縫っていた。
一週間が経過して、今日は街の総合病院で抜糸が行われる。ちょちょいとやって終わりだ、とは言われたが――大丈夫なのだろうか?
不安を抱きながらやってきたが、存外痛みもなく終わった。
そんな土曜日のこと。
「へ、へへ……。緊張してたのが馬鹿らしいぜ……」
看護師に見送られて、俺は適当に病院内を歩く。
そして偶然にも食堂を発見した。そういえば昼も近いし、家に帰る前に腹ごしらえをするのも悪くないだろう。
そう考えて俺は、中に足を踏み入れた。
「ん、あれって……?」
偶然、二つ目。
俺は食堂の列の中に、見知った顔を発見した。
彼女はこちらに気付いていないらしく、何やら財布を開くのに必死になっている。おっちょこちょいなのは、なんとなくあの子らしい。
周囲も慌てる少女を見て、ほっこりしていた。
「ん、あ――カレーひとつ!」
俺は自分の番が回ってきたことに気付いて、厨房のおばちゃんに注文する。
まもなくカレーを受け取って、俺は食堂内を歩き始めた。
そしてすぐに、件の女の子を発見。
「久しぶり、佐那」
「はえ……?」
俺が声をかけると、少女――佐那は、ポカンとしてこちらを見た。
手には何故か、食後のデザートとしてのゼリー。断っておくが、他の食品にはまだ手を触れていない様子だった。
数秒の間を置いてから、佐那はハッとして頭を下げる。
「お、お久しぶりです! 拓馬さん!」
「そんなに畏まらなくても良いよ。あ、隣良いかな?」
「はい、どうぞ!」
俺はカレーをテーブルに置いてから、彼女の隣に腰掛けた。
すると今度は、佐那の方から声をかけてくる。
「もしかして、先日のケガですか?」
「あぁ、それの抜糸だね」
「うー……」
カレーを口に運びながら答えると、どこか申し訳なさそうにする佐那。
首を傾げていると、少女はこう言うのだった。
「改めて、すみませんでした。他校の方なのに、巻き込んでしまって」
しょんぼり。
分かりやすく落ち込んで、彼女はため息をついた。
「気にしなくていいのに。朝倉先輩のこともあったし、無関係じゃないよ」
「うぅ、本当ですかぁ?」
「本当だって」
そんな佐那を元気付けようと答える。
どこか疑うように俺を見た彼女に、思わず苦笑い。
「それに、悪いことばかりじゃなかったよ」
「え……例えば?」
「佐那と友達になれた」
「ふえっ!?」
俺の言葉に、変な声で驚く少女。
周囲の視線が突き刺さり、顔を真っ赤にして小さくなった。
「うぅ、拓馬さんは天然さんですか……!」
「どういう意味?」
そして、何やら恨めしそうにこっちを見る。
意味が分からず笑って誤魔化すと、彼女は「いいです!」と言ってそっぽを向いてしまった。なにが気に障ったのだろうか。理解できずに首を傾げていると、チラチラと視線を送られていることに気付いた。
「どうしたの、佐那」
「あ、あの。もし、でよければ良いんですが――」
訊ねると、佐那は勇気を振り絞った風に言うのだ。
「う、嘘じゃないなら! 本当に、友達になってください!」――と。
俺は呆気にとられる。
しかしながら、彼女の目は本気だった。
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