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5.緊急事態。

6章は、もう少し続きます。








 帰宅すると、俺はすぐにベッドに横たわった。

 時計の針はまだ夕方を示しているが、今日はずいぶんと疲れたのだ。仰向けになると、自然に瞼が落ちてきて――。





「ん、スマホが鳴ってる。――誰だ?」





 まもなく眠りに落ちようとした、その時だ。

 スマホの着信音で、俺の意識は覚醒する。必死に手を伸ばして画面に表示された名前を確認した。そして、軽く首を傾げてしまうのだ。



「はい、もしもし」



 不思議に思いながらも、俺は電話に出る。

 すると相手は息を切らしながら、状況を説明してきた。



「え、ソフト部の上級生が!?」



 その一報は、放ってはおけない内容。

 俺は即座に起きて、家を飛び出すのだった。









 陽子はまだ、踏ん切りがつかないでいた。

 真っ暗な部屋の中で、彼女は先ほど後輩から言われた言葉を思い出す。



「待っています、か……」



 まさか、彼からあのように力強い声で言われるとは思わなかった。

 女の子のような容姿をした、少し頼りなく思える男の子。それでも芯の部分は自分よりも強いのか、少年はまっすぐに、陽子へと気持ちを伝えた。


 みんなが、待っている――と。


 今まで自分は必要とされていないと、思っていた。

 それなのに。どうしてだろうか、今なら彼の言葉を信じられた。



「私、もう許してもらえるのかな……?」



 陽子はかつてのチームメイトたちを思う。

 彼女たちと全国大会に出るのが、ずっと夢だった。

 だから、執拗なイジメにも立ち向かえたのだ。それが――。



「…………!」



 あの日の事故で、すべてを失った。

 仲間も、それまでの苦労も、憧れた未来も。

 思い出して彼女はまた、気持ちが重くなるのを感じた。



「…………あ、れ? 着信」



 その時だ。

 スマホが可愛らしいメロディを奏でたのは。

 陽子はそれを取って画面に表示された名前を見て、少し首を傾げた。



「…………はい」



 少し迷ったが、彼女は電話に出る。

 そして、その相手――拓馬の声を耳にして、息を呑んだ。




「そん、な……!」



 スマホを取り落とす。

 運良くスピーカーが起動して、少年の声が聞こえた。

 彼は息を切らしながら、こう説明するのだ。





「いま、賀東の高校のソフト部で暴力沙汰になっているみたいです! このままだと、下手をしたら取り返しのつかないことになるかもしれません!!」――と。




 そこで、通話は途切れた。

 陽子は目を見開いて、吐き気をぐっと堪える。



「どう、しよう……!」



 呼吸が荒くなる。

 どうすればいいのか、考えがまとまらない。

 いいや。どうすればいいのか、どうしたいのかは、決まっていた。



「…………!!」



 そして、脳裏によぎったのは。





『待っています……!』





 拓馬の、あの言葉だった。



 


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