表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/63

2.記憶を頼りに。










 乾いた音が響く。

 何度も、何度も――俺はナイトメアに向かって引き金を引いた。

 銃弾は特殊なものらしく、必要としない。俺は凪咲の位置を常に把握しながら、ゆっくりだが確実に前へと進んでいった。

 夢の記憶があるから、なのだろうか。

 こうやって戦っていることには、まったく違和感がなかった。



「明海氏、お前はいったい……」



 そのことには、凪咲も驚いている様子。

 俺自身も多少の驚きはあったが、しかし今は気にしている場合ではなかった。

 ここは戦場であり、一歩間違えれば命を落とす。そのことは少女も俺も、重々承知していることだからだ。

 互いに目配せをして前へ。

 ナイトメアと遭遇すればそれに対応。

 それを繰り返して、不自然に広い廃屋を行く。



「でも、さすがにそろそろ――か?」

「そうだな、気配がする」



 その気配を追って、俺と凪咲は二階の廊下を歩いていた。

 現実の世界であれば、おそらく先輩の部屋があった位置である。だが今は壁のあちらこちらが朽ち果て、崩壊していた。

 それがナイトメアによるものなのかは、分からない。

 そして、そんなことを考えた瞬間だった。




「きたぞ、明海氏!!」

「――――!!」




 轟音が鳴り響く。

 直後に、ひときわ大きな影が物陰から姿を現した。

 うごめくそいつは大きさを何度も変え、這いずるようにゆっくりとこちらに迫る。これが、親玉であるに違いなかった。

 他のナイトメアと違って、圧倒的な迫力だ。



「く、しかし場所が悪いな……!」



 凪咲が銃を構えるものの、そう口にする。

 たしかに、屋内では少々足場が不安定だった。いつどこが崩れるか分からない。そんな状況で二メートルはあろうかという魔物と戦うのは、不利に違いなかった。



「外におびき出そう!」

「分かった!」



 だから俺は凪咲に提案する。

 彼女も素早くそれに反応して、後方に一歩下がった――その時だった。



「なっ――!?」



 彼女が踏んだ足場が、崩壊したのは。

 ガラガラ、という騒音と共に。凪咲は階下へと叩きつけられそうになった。だが間一髪で、俺がその手を掴む。

 裏界の構造はあべこべだ。

 現にいま、凪咲の落ちようとする先には闇が口を開けている。



「明海氏、逃げろ! 手を離すんだ!!」

「できねぇだろ、そんなこと!!」

「だが、そうでないと明海氏まで死ぬぞ!?」



 たしかに、彼女の言う通りだった。

 背後からは大型ナイトメアの迫る音がしている。このままでは、俺まで餌食にされてしまう。それに間違いはなかった。

 だが、ここで凪咲を見捨てる選択肢もあり得ない。






 だから――。







「なぁ、凪咲? 一発でナイトメアを倒す方法、教えたよな」

「明海氏……? なにを、言って――」

「タイミングを合わせろ。合図と同時に、俺の眉間を撃て」

「え……!?」




 そう言って、笑った。

 夢の中で俺は凪咲に教えているのだ。

 どうすれば、大型のナイトメアが倒せるのか、ということを。




「……本気、なのか?」

「あぁ、もちろんだ」




 こちらの考えを読み取ったのか、少女はもう一方の手に持った銃を握りしめる。ここでの失敗は許されなかった。

 それを理解しているからこそ、彼女は笑うのだ。

 その笑顔を見て、確信する。



「さぁ、行くぞ!」






 そして、背後の気配を探って。

 俺は声を張り上げた。





「いまだ、撃て! 凪咲!!」






 直後、乾いた音が響き渡った。




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ