1.初めての戦闘。
6章!
その日、俺と凪咲は学校を休んだ。
理由はいうまでもなく、朝倉先輩を助けるため。駅で待ち合わせてから先輩の家へと向かうのだが、その途中で隣に座った少女は言った。
「この世界の反対側――裏界という場所に、ナイトメアは潜んでいる。何度でも言うが、一歩間違えれば死ぬから気を付けるんだぞ」
それを聞いて、俺はふっと軽く息をつく。
いよいよ後戻りはできなくなった。嘘のような本当の話が、始まる。
そう思っていると、もう一つ、と前置きした上で凪咲はこう口にした。
「もしかしたら、陽子の夢を覗き見ることになるかもしれない。下手に干渉すれば、精神の崩壊を招く可能性があるからな」
「…………分かった」
先輩の夢――か。
俺はどのような悪夢なのか、それを考えた。
その時にちょうど、電車が止まる。どうやら到着したらしい。
駅を出てしばらく歩くと、朝倉家が見えてきた。
「それで、ここからはどうするんだ?」
「待ってろ。すぐに準備する」
「準備……?」
家の前に着くと、凪咲はおもむろに荷物を下ろしてそれを展開。
すると、そこからは御札のようなものが大量に……。
「これを、こうする」
そして、朝倉家の塀にぺたぺたと。
決まりがあるのかないのか、それは分からないが貼り付けていった。たまたま通りがかった他の住人が、奇妙なものを見るような目を向けてくる。
俺はそれに苦笑いして会釈しつつ、少女に声をかけた。
「お、おい凪咲!? 見られてるぞ!」
「気にするな。どうせ、記憶には残らない」
「は……? それって、どういう――」
「さて、行くぞ」
「お、おい!」
しかし彼女は気にした素振りも見せずに、そう言うと荷物を片付ける。
次いで御札を貼った壁に手を当てるのだった。すると……。
「え……!?」
◆
――世界が、反転したような感覚。
俺は気付けば、荒廃した住宅街の中に立っていた。
先ほどこちらを見ていた住人はいない。いいや、正確には俺たちが裏界にきたから、こっちが消えたように見えているのだろうか。
空は鉛色に染まっている。
雨が降るわけでもない。とても、空気は乾いていた。
「ここが、裏界?」
「そうだ。さぁ、武器を準備しろ」
いつか見たような、そんな景色に唖然としていると凪咲は指示を出す。
俺はそれに従って預かった銃を取り出し、構えた。
その姿を見て――。
「む、意外に様になってるな。明海氏」
「そうか……?」
少女は驚いたように目を見開いた。
なんだろう。銃を構えると、自然と身体が決まって動くのだ。
「もしかしたら、才能があるのかもな」
しかし凪咲は軽く片付けると、気持ちを切り替えたらしい。
目の前にある朝倉家だったであろう廃墟を睨んだ。そして大声で叫ぶ
「……くるぞ!」
直後――夢の中でも見た黒い影が、計五体!
凪咲は二丁拳銃を抜き放つと、連続して五発の銃弾を放った。
「く、一体そっちに行ったぞ!」
しかし、そのうち一発は回避される。
逃げたナイトメアは、偶然にも俺の前に降り立った。
そして俺のことを弱いと踏んだらしい。そいつは、真っ正面からこちらへと飛び掛かってきた。だが――。
「悪いな」
自然と、そんな声が出た。
俺は腕をスッと前に伸ばして、引き金を引く。
狙い過たず。銃弾はナイトメアを打ち抜き、霧散させた。
「明海氏、お前……」
その流れを見ていた凪咲は、眉をひそめる。
しかし首を左右に振って、こう言うのだった。
「まだ、これは雑魚にすぎない。親玉がいるはずだ」――と。
その言葉に頷く。
俺たちは、周囲に注意を払いながら廃屋の中に足を踏み入れた。
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