3.夢との邂逅。
先輩の家を出て、俺はあの浜辺にやってきていた。
夕日に染まった水平線を眺めながら、砂浜に腰掛ける。そして考えた。とにかく、いまの状況を変えるにはどうすれば良いのか、を。
色々な失策があった。
しかし、いまはそれを振り返っている場合ではない。
「くそ……!」
それなのに。
俺はなにも思いつかない自身が腹立たしくて、砂を叩きつけた。
じんとした痛みが、手に伝わってくる。
「先輩は、自分で自分を責めている。でも、どうして……?」
冷静になれ。
俺は再度、自分に言い聞かせた。
そして状況を整理し、疑問を口にあえて出す。
朝倉先輩に、非はまったくない。
むしろ周囲からの外的要因によって傷つけられていた。
それなのに彼女は、何度も謝罪の言葉を口にする。自分が悪いのだ、と。自分はみんなに必要とされていないのだ、と。
その勘違いの出所がまるで、理解できなかった。
「………………」
――役立たずは、俺の方だ。
そんな苦い思いが胸に湧き上がって、闇を作り出す。
しかし、そんな時に思い出されるのは夢の中の少女の言葉だった。
「諦めが悪い、夢の塊……」
カトレアは俺のことを、そう称した。
何事についても、とにかく諦めずに藻掻き続けるから、と。
その言葉が寸でのところで、俺のことを支えていた。頭のどこか、あるいはもっと曖昧な心のどこかで、彼女の言葉を信じているから。
だけど、所詮は夢に過ぎないのではないか。
そう思い始めた。
その時だ。
「ここにいたのか、明海氏」
「え、凪咲……?」
クラスメイト――悪友の少女が、姿を現したのは。
「どうして、お前がここに?」
「………………」
俺が振り返って訊ねると、凪咲はどこか無感情にこちらを見た。
そして、一言だけこう口にする。
「明海氏に、会いたいという人がいる」――と。
◆
やってきたのは、街外れにある廃墟。
かなりの距離を歩いた。その証拠として、すっかり日は沈んでいる。
しかし、そんな距離を歩いたにもかかわらず凪咲の息は切れていなかった。無言で前に進む彼女を必死に追いかけて、俺はすでに疲労困憊。
それでも、目的地に到着したらしい。
凪咲は俺の方を振り返ると、硬い表情でこう言った。
「この建物の中に、その人がいる」
そして、ゆっくりと中に足を踏み入れる。
俺は少し緊張と警戒をしつつ、それに続いた。
少女の後ろを歩くこと数分。ついに、その人物の姿が現れた。
「連れてきたぞ」
ぶっきらぼうに、凪咲は声を投げる。
俺は下に向けていた視線を、ゆっくりと持ち上げて――。
「――――!?」
息を呑んだ。
何故ならそこにいたのは、間違いなく彼女だったから。
「カトレア……?」
長い黒髪に、赤の瞳。
クマの人形を抱えた美少女。
夢の中で語り合った少女――カトレアの姿が、そこにあった。




