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3.夢との邂逅。







 先輩の家を出て、俺はあの浜辺にやってきていた。

 夕日に染まった水平線を眺めながら、砂浜に腰掛ける。そして考えた。とにかく、いまの状況を変えるにはどうすれば良いのか、を。

 色々な失策があった。

 しかし、いまはそれを振り返っている場合ではない。



「くそ……!」



 それなのに。

 俺はなにも思いつかない自身が腹立たしくて、砂を叩きつけた。

 じんとした痛みが、手に伝わってくる。



「先輩は、自分で自分を責めている。でも、どうして……?」



 冷静になれ。

 俺は再度、自分に言い聞かせた。

 そして状況を整理し、疑問を口にあえて出す。



 朝倉先輩に、非はまったくない。

 むしろ周囲からの外的要因によって傷つけられていた。

 それなのに彼女は、何度も謝罪の言葉を口にする。自分が悪いのだ、と。自分はみんなに必要とされていないのだ、と。

 その勘違いの出所がまるで、理解できなかった。



「………………」



 ――役立たずは、俺の方だ。


 そんな苦い思いが胸に湧き上がって、闇を作り出す。

 しかし、そんな時に思い出されるのは夢の中の少女の言葉だった。



「諦めが悪い、夢の塊……」



 カトレアは俺のことを、そう称した。

 何事についても、とにかく諦めずに藻掻き続けるから、と。

 その言葉が寸でのところで、俺のことを支えていた。頭のどこか、あるいはもっと曖昧な心のどこかで、彼女の言葉を信じているから。



 だけど、所詮は夢に過ぎないのではないか。



 そう思い始めた。

 その時だ。




「ここにいたのか、明海氏」

「え、凪咲……?」




 クラスメイト――悪友の少女が、姿を現したのは。



「どうして、お前がここに?」

「………………」



 俺が振り返って訊ねると、凪咲はどこか無感情にこちらを見た。

 そして、一言だけこう口にする。




「明海氏に、会いたいという人がいる」――と。









 やってきたのは、街外れにある廃墟。

 かなりの距離を歩いた。その証拠として、すっかり日は沈んでいる。

 しかし、そんな距離を歩いたにもかかわらず凪咲の息は切れていなかった。無言で前に進む彼女を必死に追いかけて、俺はすでに疲労困憊。


 それでも、目的地に到着したらしい。

 凪咲は俺の方を振り返ると、硬い表情でこう言った。



「この建物の中に、その人がいる」



 そして、ゆっくりと中に足を踏み入れる。

 俺は少し緊張と警戒をしつつ、それに続いた。

 少女の後ろを歩くこと数分。ついに、その人物の姿が現れた。



「連れてきたぞ」



 ぶっきらぼうに、凪咲は声を投げる。

 俺は下に向けていた視線を、ゆっくりと持ち上げて――。






「――――!?」






 息を呑んだ。

 何故ならそこにいたのは、間違いなく彼女だったから。













「カトレア……?」




 長い黒髪に、赤の瞳。

 クマの人形を抱えた美少女。



 夢の中で語り合った少女――カトレアの姿が、そこにあった。




 


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