1.何を語るか。
ここから4章
翌日の部活。
相も変わらぬ緩い空気の中で、俺は一人だけ緊張していた。
昨夜、あのような夢を見たせいだろう。あまりにも悪質で許せない、しかしそれでいて真に迫っているような、そんな夢だった。
凪咲の緊張感のない、間抜けな夢の話を聞きながら考える。
――あれはなんだったんだ、と。
現実と夢の区別はついているつもりだ。
それでも、どうも忘れられない。夢日記というものは、夢と現実の混同があり得るからやめた方が良い――ネットで調べると、そんな記述もあった。
もしかしたら、今の俺はそのような状態なのだろうか。
「……くん。拓馬くん?」
「え? あ、はい?」
「次は拓馬くんの番だよ?」
「あぁ、そうなんですか。分かりました」
そんなことを考えている間に、俺の発表が回ってきたらしい。
しかし、何を話せばいいのだろうか。俺は――。
「……えっと」
二つの選択肢があった。
一つは、カトレアのこと。
夢の中で出会った不思議な少女との会話。
この場でそれを言えば、冷やかしを受けるに決まっていた。
もう一つは、賀東のこと。
夢の中で出会い、そして現実でも出会った相棒。
しかし、彼の話をすれば遅かれ早かれ、俺があちらの高校に行ったことが先輩にバレるだろう。
しばらく考えて、俺は答えを出した。
「俺は二種類の夢を見ました。不思議な女の子と過ごす夢、そしてもう一つ夢の中で出会った人に、実際に会いました」――と。
◆
夢の中でカトレアと出会った話と、現実に賀東に出会ったこと。
それらのことを合わせて語り始めると、朝倉先輩と凪咲は両者ともに黙ってしまった。そして、すべてを話し終わったとき、文芸部にはかつてない重苦しい空気が漂う。俺は思わず気圧されて、困惑してしまった。
「え、っと? なに、この空気は……」
少々おどけた口調で言うと、すっと凪咲が立ち上がる。
そして、真剣な声でこう言った。
「少し用事が出来たから、今日はこれで帰る」
「お、おう……」
先輩も止めることなく、少女が出ていくのを見送る。
結果的に俺と朝倉先輩の二人だけになって、さらなる静寂が訪れた。
「そっか、礼二先輩に会ったんだね……」
「………………」
だが、それを先輩が破る。
少し懐かし気に目を細めて、ふっと息をつくのだった。
「礼二先輩には、とてもお世話になったんだよ? 中学時代には困ってる私の相談に乗ってくれたし、色々動いてくれたりもした。佐那ちゃん、っていう妹さんもいてね。三人でよく一緒に遊んだりもしたっけ……」
「そう、だったんですね」
そうか、佐那は賀東の妹だったのか。
俺は先輩の話を聞きながら、一人勝手に納得していた。
「二人は元気そうだった?」
「はい、とても元気でしたよ」
「あはは、それは良かった」
「………………」
問いかけられて、真っすぐに応える。
すると朝倉先輩は儚げに笑んで、少しだけ自分のノートを開いた。そして、ちらりと確認してから頷く。
「実は私も、最近二人の夢を見たの」
「賀東と、佐那の?」
「うん」
俺が確認すると、肯定してから彼女は静かにこう言うのだった。
「二人とも、私のことなんか忘れてるよね……」――と。
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