5.悪夢――葬儀。
ここまで、3章です。
――喪服を着た人たちが、列を成している。
俺もその中の一人。学生という身分上、服装はそれに準ずるものだったが。淡々と進む式の中では、そんなことを気にする人などいなかった。
誰もが自分の元から去ってしまった彼女のことを、悼んでいる。
凪咲は俺の傍らで、大声を出して泣いていた。
賀東は、静かに怒りを堪えるようだった。
そして俺はただ、呆然と――。
「どうして、こんな若くして、ねぇ」
「自ら命を絶ったらしいわよ?」
「しっ、それは言わない!」
「あらあら……」
無神経な老婆たちの会話が聞こえてきた。
でも、それは事実だ。変えようがない、戻しようがない事実。
彼女はあの日、突然に俺たちの前から姿を消した。次に発見された時には、もう手遅れだった。誰にも見つからないような、そんな場所で。
孤独という言葉を体現したように、彼女は首を吊っていたのだ。
それもまた、俺が又聞きした話に過ぎない。
賀東はもっと詳しく知っている様子ではあったが、話そうとはしない。
彼は言っていた。
どうして自分はなにも、救えないのか、と。
どうして、恩義を果たすことができないのだろうか、と。
「賀東……」
「すまない、拓馬。少し席を外す」
「……あぁ」
短い会話を交わして、彼は退出した。
そして直後に壁を叩くような音が聞こえ、泣き崩れる声が響く。
俺と凪咲はそれを耳にして、また涙が出そうになった。それでも、ここで泣いてはいけない、そう感じてしまう。
何故なら、彼女はみんなの笑顔が大好きだったから。
誰よりもきっと、文芸部のことが大好きだったから。
「でも、どうしてだよ……!」
そうは思っても、悔しくて悔しくて、握った拳に力がこもった。
爪が手のひらに食い込み、薄っすらと血がにじむ。
食いしばると、奥歯が軋む音がした。
「どうして、こんなこと――」
俺は、遺影を見て彼女の名を呼ぶ。
大粒の涙を流しながら。
「朝倉、先輩……!」――と。
◆
全身から、脂汗がにじむのが分かった。
俺は呼吸を荒げながら、大急ぎで身を起こす。
ノートを手に取って――いいや。それより先に、電話をかけた。
「あ、あの……」
緊張で、声が震える。
つながった相手は、キョトンとした風に言った。
「こんな遅くに、どうしたの? 拓馬くん」
声の主――朝倉先輩は、小首を傾げているのが分かるような声色で。
深夜の電話に、なんてことなく応対した。
「あ、いや……。すみません、変な夢を見ちゃって」
「変な夢……? もしかして、今日みたいな?」
俺が素直に言うと、先輩はメイド喫茶でのことを話題にして笑う。
「あ、まぁ……、そんな感じです」
「そっか。ごめんね、今日は」
「いえ、楽しかったです」
俺は当たり障りのない言葉を選んだ。
そして、別れの挨拶をして電話を切った。
ものの数分のやり取り。ただ、その後に襲い掛かってくるのは――。
「なん、なんだよ――あれは!」
あまりにも生々しい、現実味を帯びていた夢の内容。
ノートを取る手が震えた。文字が、歪む。それでもどうにか書き終えて、俺は大きく息を吸い込んだ。そして、唇を強く噛む。
怖い、とにかく怖かった。
理由の分からない、恐怖心に苛まれる。
ただ何故だろう。
この出来事は、遠くない未来に起こり得る。そう思えた。
「なんなんだよ、なんなんだよッ!」
深夜の自室で。
俺は誰に向けることのできない怒りを、延々と吐き出し続けていた。
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