5.いつか、彼女にも。
その日の俺は、帰るとすぐに眠りに落ちた。
◆
「カトレアは、俺のことどう思ってるんだ?」
「どうした。そんな、藪から棒に」
いつだったか。
俺は黒髪の少女――カトレアにそう訊ねた。
これといって特別な理由なんかはない。ただ彼女が【眷属】としての俺を、どう思っているのかが気になったのだ。
こちらの問いかけに、レーションを頬張っていたカトレアは腕を組む。
考え込み、出てきた答えは――。
「あぁ、そうだな。本当に使えない奴だ、というところか?」
「お前なぁ……」
あまりに素直すぎるものだった。
俺はついつい苦笑しながら、がくっと肩を落とす。
「気にするな、拓馬」
「いや、気にするだろ」
そんなこちらを見て、美しい少女は赤い瞳にしっかりとした光を宿しながら言った。俺がツッコミを入れると、首を左右に振る。
「そうではない。使えない、というのはこちらの落ち度だ」
「……? それって、どういうことだ?」
首を傾げてしまった。
対してカトレアは、こう続ける。
「その部下が使える、使えないは上司の技量によるところだ。人にはそれぞれ得手不得手があり、それを理解して配置するは上の役割だろう?」
「はぁ、つまり……?」
「お前が【使えない眷属】である所以は、すなわちボクの力不足だ」
そして、スッと立ち上がって俺のもとへとやってきた。
小さなその手をこちらの頬に当てて、スッと、蠱惑的な目を細める。
「安心すると良い。まだ能力の発現はないが、その分だけ拓馬には可能性が眠っている。もしかしたら、魔物との戦いに終止符を打つような――な?」
吸い込まれるような、その輝き。
思わず見とれているとカトレアはニヤリと笑った。そして、
「いてっ!?」
俺の頬を軽くつねるのだ。
口元には小悪魔らしい笑みを浮かべて。
「だから、お前は今まで通り。自分にできることをやる拓馬で良いんだ。諦めの悪い、その意地の強さだけを頼りにな?」
「諦めが悪いは、余計だろ……」
「ん、褒めているんだぞ、ボクは。それだけ真っすぐ、という意味で」
「褒めてない。絶対に……!」
口調だけまともに聞こえるが、目が笑っている。
というか、小馬鹿にしてきている。俺はこの少女とそれなりに長い付き合いだから、そういった機微については聡いのだ。
「おやおや、可愛くない配下だな」
「どーせ可愛くないっての……」
「ふふふ、そうだな」
「…………」
こちらが不貞腐れると、彼女はどこか嬉しそうにテーブルに置いてあったブラックコーヒーを飲む。まるで子供をあしらう親のような、そんな表情だった。
俺の両親はとっくに死んでるから、なんとなくだけど。
「あぁ、でも良い言葉があった」
そう思っていると、不意に彼女は思い出したようにこう言った。
俺のことを見て、こう例えるのだ。
「アレだ。お前は――」
今度は無邪気な子供のような、そんな笑顔で。
「ロマンの塊。つまるところ『夢の塊』というやつだな」――と。
ただ、その時の俺は。
それさえも小馬鹿にされているような気がして、素直になれなかった。
◆
目を覚ますと、すでに日はそれなりに昇っていた。
「誰が、諦めが悪い夢の塊だ、っての……」
俺はボンヤリとしながら、そう夢の住人に文句を口にする。
とりあえずノートを手に取って、内容を書き加えた。相も変わらず分からないことばかり。だけど一つ思ったことがあった。
それは――。
「……会えないかな。カトレアにも」
いつか、賀東のように。
あの少女にも出会ってみたいものだ、ということだった。
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