1.出会い――賀東礼二。
ここから第2章。
今日は土曜日だ。
そのため学校は休みで、文芸部の部活もない。
しかし俺の足は学校へと向かっていた。何故かというと――。
「おー、伊藤と佐藤はスタメンなのか」
歓声湧き上がるグラウンド。
父兄のみなさんが、やれ打てやれ守れの大合唱だった。
俺が休日の高校にきた理由。それは、クラスメイトの二人の雄姿を見るため。伊藤はファースト、佐藤はサードを守っていた。
「しかし、こんなに盛り上がるんだな」
独り言を口にしながら、俺は先日のベンチに腰掛ける。
そして、安物のスコアボードに書かれた校名を確認した。すると、
「あぁ、これは盛り上がるわけだ」
すぐに納得する。
そこに刻まれていたのは、県下で有数の甲子園常連校。
現在、春夏と夢舞台に立っているそのチームの選手を見てみると、やはりガタイが違った。伊藤と佐藤もそこそこ良い身体をしていたはずだが、こればかりはさすがに見劣りしてしまう。
「んぐ、ぷはぁ……。それにしても、意外に食らいついてるな」
持ってきた清涼飲料を喉に流し込みながら、俺は得点差を確認した。
四回を終えて、相手の二点リード。中堅校であるうちにしては、大健闘なのかもしれない。そう思い、俺はベンチに戻ってきた二人に声をかけに――。
「え……?」
行こうとした、その時だった。
相手の高校の投手を目にし、言葉を失ったのは。
思わず手に持っていたペットボトルを取り落として、呆然としてしまった。
「どうし、て……?」
だって、そこにいたのは紛れもない。
あんな大柄な男性――高校生離れした外見の人物を見間違えるはずがなかった。
◆
――試合は、相手の高校が大差で振り切って勝利した。
グラウンドの整備が始まり、一時休憩ということらしく父兄も散っていく。その中で俺はベンチから立ち上がると、一直線に相手の野球部の方へ向かった。
そして、先ほどの投手を探す。
ひときわ大柄な人物。
探し始めて、間もなく見つかった。
「あの、すみません!」
「あ……?」
そして声をかけると、その部員はぶっきらぼうにこちらを見る。
首を傾げ、あからさまに警戒した様子で。
「あ、えっと……」
「なんだ、てめぇ。用がないなら、話しかけてくるなよ」
「そ、そういうわけじゃなくて!」
「……ん?」
俺は慌てて深呼吸し、彼にこう訊ねた。
「賀東礼二、さんですか……?」――と。
その野球部員の、名前を。
「そうだが、お前は誰だ?」
彼――賀東は、少し驚いたように答えて訊ね返してきた。
心臓が早鐘のようになっている。
春麗らかな日差しの下。
俺は夢の中の相棒と、現実の世界で出会ったのだ。
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