5.相棒。
ここまでが、第1章。
というか、一日単位で区切る感じかな。
自室に戻り、布団に潜り込む。
凪咲に言われたことを思い出しながら、俺は目を閉じた。
もしもカトレアという少女が可能性なのだとすれば、すぐに会いたい。そして、訊きたかった。キミはどうして泣いているんだ、と。
呼吸を整える。
すると、意外にも早く意識は暗闇の中へ……。
◆
「賀東、右からナイトメア三体!」
「了解だ、拓馬!」
ガタイの良い男性――賀東と情報共有しながら、俺は物陰に隠れた。
銃に弾を装填して、一つ息をつく。そして賀東が前に出た瞬間を見計らって、一気に駆け出した。戦場が止まることはない。
俺は賀東に襲いかかった魔物のうち、一体を確実に撃ち抜いた。
同時に、賀東は大きな斧で二体の敵を真っ二つにする。
「他には、いるか!」
「あぁ、残り――後方から二体! 任せろ!」
相棒の言葉に、俺は振り返って銃口を向ける。
黒い影――ナイトメアの輪郭は、あまりにも曖昧だ。それこそ掴みにくい夢、そのもののように。その中心に照準を合わせて、引き金を引いた。
すると乾いた音と共に、影は霧散。
二体を難なく討伐し終えて、俺はようやく深く息を吸い込んだ。
「ふぅ、今日はこれで終わりだな」
そして、一つ頷く。
賀東を見ると、彼もまた大きく頷いていた。
相棒――賀東礼二は、俺がこの世界に飛び込んでから、一緒に行動している仲間。年齢は俺の二つ上のはずなのだが、やけにオッサンに見えるのはどうなのか。
しかし外見にさえ慣れてしまえば、とにかく頼りになる存在だった。
「よし、今日もカトレア様に報告に行くとするか」
彼はそう言って、俺に背を向ける。
歩き出す賀東に並ぶように駆け寄ると、こう声をかけられた。
「ところで拓馬。お前、カトレア様のことどう思ってるんだ?」
「はぁ? 急になんだよ」
その問いかけに、俺は首を傾げる。
すると彼は、少し考えてからこう言った。
「いや、な? お前は唯一、正式な【眷属】だろう。そのお前から見て、カトレア様はどういった存在なのか、って意味でな」
「んー……、そう言われてもな」
つい、悩んでしまう。
俺はたしかにカトレアという少女の【眷属】だった。
しかしながら、それもある種の『事故的』な結果でしかない。加えて俺には、子供の頃の記憶がすっぽりと抜けてしまっているのだ。
だから、カトレアのことをどう思っているか、というのは難しい。
「とりあえず、上司――かな」
だから、そう答えるしかなかった。
この仕事をする上で、俺たちに指示を出す存在。
「ふーん……」
「なんだよ、その顔は」
「いいや? なんでもねぇよ」
しかし、賀東は納得したのかしてないのか、分からなかった。
少し笑いを堪えているようにも見える。そんな相棒にムッときて、俺は彼の横腹を小突いた。ちょっと強めに。
それでも、この大柄な戦士にとってはくすぐったい程度だったらしい。
なにやら身をくねらせて回避された。
「ぷっ……!」
その動きがあまりに滑稽で、俺は思わず吹き出す。
釣られて相方も笑い始め、廃墟には俺たちの愉快な声が響き渡った。
色々、悩みはあったけれど。
俺にとっての今は、決して悪いものではなかった。
◆
目を覚ますと、俺はすぐにノートを手に取った。
「カトレア、賀東礼二、そして【眷属】……?」
知らない情報のオンパレード。
俺は昨日とは違う、難しい顔をしながらペンを走らせた。ただ決して、不快だったわけではない。家にいながら、変な表現だとは思うが――実家のような安心感。
まさしく、それを感じさせる時間だった。
むしろ、それこそが俺の居場所であったような。
そんな錯覚を思い抱かせるほどに。
「なんなん、だ? これは……」
――可能性。
俺はその言葉を思い出して、首を傾げた。
そしてベッドから抜け出して、カーテンを勢いよく開く。
今日も快晴。
一日の始まりには相応しい輝きだった。
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