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5.相棒。

ここまでが、第1章。

というか、一日単位で区切る感じかな。








 自室に戻り、布団に潜り込む。

 凪咲に言われたことを思い出しながら、俺は目を閉じた。

 もしもカトレアという少女が可能性なのだとすれば、すぐに会いたい。そして、訊きたかった。キミはどうして泣いているんだ、と。


 呼吸を整える。

 すると、意外にも早く意識は暗闇の中へ……。









「賀東、右からナイトメア三体!」

「了解だ、拓馬!」



 ガタイの良い男性――賀東と情報共有しながら、俺は物陰に隠れた。

 銃に弾を装填して、一つ息をつく。そして賀東が前に出た瞬間を見計らって、一気に駆け出した。戦場が止まることはない。

 俺は賀東に襲いかかった魔物のうち、一体を確実に撃ち抜いた。

 同時に、賀東は大きな斧で二体の敵を真っ二つにする。



「他には、いるか!」

「あぁ、残り――後方から二体! 任せろ!」



 相棒の言葉に、俺は振り返って銃口を向ける。

 黒い影――ナイトメアの輪郭は、あまりにも曖昧だ。それこそ掴みにくい夢、そのもののように。その中心に照準を合わせて、引き金を引いた。

 すると乾いた音と共に、影は霧散。

 二体を難なく討伐し終えて、俺はようやく深く息を吸い込んだ。



「ふぅ、今日はこれで終わりだな」



 そして、一つ頷く。

 賀東を見ると、彼もまた大きく頷いていた。

 相棒――賀東礼二は、俺がこの世界に飛び込んでから、一緒に行動している仲間。年齢は俺の二つ上のはずなのだが、やけにオッサンに見えるのはどうなのか。

 しかし外見にさえ慣れてしまえば、とにかく頼りになる存在だった。



「よし、今日もカトレア様に報告に行くとするか」



 彼はそう言って、俺に背を向ける。

 歩き出す賀東に並ぶように駆け寄ると、こう声をかけられた。



「ところで拓馬。お前、カトレア様のことどう思ってるんだ?」

「はぁ? 急になんだよ」



 その問いかけに、俺は首を傾げる。

 すると彼は、少し考えてからこう言った。



「いや、な? お前は唯一、正式な【眷属】だろう。そのお前から見て、カトレア様はどういった存在なのか、って意味でな」

「んー……、そう言われてもな」



 つい、悩んでしまう。

 俺はたしかにカトレアという少女の【眷属】だった。

 しかしながら、それもある種の『事故的』な結果でしかない。加えて俺には、子供の頃の記憶がすっぽりと抜けてしまっているのだ。

 だから、カトレアのことをどう思っているか、というのは難しい。



「とりあえず、上司――かな」



 だから、そう答えるしかなかった。

 この仕事をする上で、俺たちに指示を出す存在。



「ふーん……」

「なんだよ、その顔は」

「いいや? なんでもねぇよ」



 しかし、賀東は納得したのかしてないのか、分からなかった。

 少し笑いを堪えているようにも見える。そんな相棒にムッときて、俺は彼の横腹を小突いた。ちょっと強めに。

 それでも、この大柄な戦士にとってはくすぐったい程度だったらしい。

 なにやら身をくねらせて回避された。



「ぷっ……!」



 その動きがあまりに滑稽で、俺は思わず吹き出す。

 釣られて相方も笑い始め、廃墟には俺たちの愉快な声が響き渡った。




 色々、悩みはあったけれど。

 俺にとっての今は、決して悪いものではなかった。









 目を覚ますと、俺はすぐにノートを手に取った。



「カトレア、賀東礼二、そして【眷属】……?」



 知らない情報のオンパレード。

 俺は昨日とは違う、難しい顔をしながらペンを走らせた。ただ決して、不快だったわけではない。家にいながら、変な表現だとは思うが――実家のような安心感。

 まさしく、それを感じさせる時間だった。



 むしろ、それこそが俺の居場所であったような。

 そんな錯覚を思い抱かせるほどに。




「なんなん、だ? これは……」




 ――可能性。

 俺はその言葉を思い出して、首を傾げた。

 そしてベッドから抜け出して、カーテンを勢いよく開く。




 今日も快晴。

 一日の始まりには相応しい輝きだった。




 


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