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姫宮衣千子・四日目・02「幽霊」

 休み時間の度に、クラスメイト達から俺に似た人物の目撃情報が入ってきた。

 その都度、目撃現場に向かったのだが、凜子を見つけることは出来なかった。

 凜子は体が弱いから早く移動出来ないはず、なのに俺が行くと姿は消えている。

 それと少し気になる情報も聞いた。


 俺に似た人物が壁をすり抜けたとか、体が透けていたとか、空中に浮かんでいたとか色々だ。

 まるで実体がない幽霊だと言わんばかりだ。

 だが凜子の幽霊が学校に来ているのなら、俺が行った時に姿が消えているのも納得出来る。

 俺はスマフォを取りだして、凜子に電話を掛けた。

 しかし、凜子は電話には出なかった。


 スマフォを閉じようとして、俺は宝くじのことを思い出した。

 もう当選番号が発表されているかもしれないと思い、当選番号を確認する。

 やはり柊と凜子の買った番号は当たっていなかった。

 だが、それはおまけだ。本当の目的は一等の番号を覚えること。


 また意識の入れ替えと時間遡行が起きた時に一等を当てるためだ。

 もし俺が忘れたとしても神崎に頼べばいいのだが、神崎がそういうことに能力を使いたくないと言い出すないとも限らない、保険という奴だ。


「よしっ」


 一等の番号を頭の中で復唱してしっかりと覚えスマフォを閉じた。

 その時、視界の隅に動くものを捉えた。

 顔を上げて見るが、目の前にはフェンスがあり、その奥は空中だ。

 普通そんなところに人間はいない。

 だが、凜子ならと思い、俺はフェンスに駆け寄った。


「よう、姫宮。何か捜し物か? もしかして昨日買ってっやった宝くじでも落としたのか?」


 俺がフェンスにしゃがみこんでいると、後ろから声を掛けられた。

 声だけで誰が来たのかすぐに分かった。

 だが、今は柊の相手をしている場合ではない。


「うっさい! あっちいけ! 話かけるな!」

「おお、怖い。はいはい分かりました。失礼しましたね」


 柊が離れていく足音が聞こえた。

 俺はフェンスにしがみついて下を覗いた。

 しかし、凜子らしき人影は見つけられなかった。

 ──カラン。


 ボルトのような物が落下していった。

 どうやらフェンスを固定していたボルトの一部が緩んでいて外れてしまったようだ。

 柊と桜木さんが落ちるときに、なぜフェンスが外れたのか、その理由が分かった。

 二人には落ちてもらわないと困るので、これはこのままにしておこう。

 ついでに、他のボルトも緩めておく。



 放課後、部室で五人全員がそれぞれ中二病自己紹介をした。

 その後、雑談をして部活は解散になる。

 帰り際に桜木さんに呼び止められ、優太のことを訊かれた。

 優太は柊のアパートにいることを教えて、病院へ向かった。


 凜子の病室に入ると、凜子は電気を付けたまま眠っていた。

 

「凜子? 寝てるの?」


 軽く呼びかけて肩を揺すってみるが、起きる気配はない。

 凜子の手にはスマフォが握られていた。

 その時、凜子のスマフォがブブブと震える。

 震えはすぐに収まったので、メールが送られて来たようだ。


「凜子、メールだよ?」


 俺はそう呼びかけながら、そっと凜子の手からスマフォを手に取った。


「ごめんね、凜子」


 凜子に謝って、俺はスマフォを見た。

 メールの送信者は、はやりハーフアウトからだった。

 もうメールはやめろと言ったのに、凜子はハーフアウトとやりとりをしていた。


 メールの文面から、ハーフアウトは俺達と同じ学校だということが分かった。

 凜子はハーフアウトに会うために学校に来ていたのかもしれない。

 俺はハーフアウトが誰なのか突き止めようと思い、待ち合わせ場所を指定してメールを返信した。

 すぐにハーフアウトから返事が来て、明日学校で会うことになった。

 念のためハーフアウトのメールアドレスを自分のスマフォに入力して、凜子の手にスマフォを戻した。


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