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姫宮衣千子・二日目・02「童話」

 学校が終わり俺は病院に向かった。

 凜子の病室の前に行くと、話声のようなものが聞こえた。

 誰か来ているのだろうかと思い、扉をノックして病室に入る。


「あ、お姉ちゃん」凜子が俺を呼ぶ。

「話声が聞こえたけど? 誰か来てるの?」


 俺は病室を見ました。

 けれど、凜子の他には誰もいなかった。


「誰も来てないよ。もしかしたら、それ……私の独り言かも」


 えへっと恥ずかしそうに凜子は笑った。


「独り言か、珍しいね」

「うん、メール見てたから」


 そう言ってスマフォを持ち上げて俺に見せた。


「ふーん、誰とメールしているの?」

「うん……とね。最近出来たメル友の人と」

「へえ、メル友か。まさか出会い系サイトとかで知り合ったとかじゃないよね?」

「違う違う。たぶん同じ病院の人で、私と友達になりたいって手紙をくれたの。それでハーフアウトさんと知り合ったんだ」


 凜子が手をぷるぷると横に振って慌てて否定する。


「ハーフアウトさん?」直訳すると、半分外か?

「う、うん、お互い本名は名乗らずにハンドルネームで呼び合ってるんだ。ちなみに私のハンドルネームはアップルだよ」

「アップルって、そのまんまだね」

「うん」


 あはは、と二人で笑った。


「最近はね。ハーフアウトさんが考えた童話を送って来てくれるんだよ」

「へえ、どんな話なの?」


 メル友の話をする凜子はとても楽しそうな顔をしているので、俺は話を広げることにした。


「えーとね、三匹のウサギさんの話。

 一つの家に白ウサギさんと灰色ウサギさんと黒ウサギさんが住んでいました。

 白ウサギさんは三匹の中で一番の力持ち、いつも未来のことばかり考えています。

 未来のことばかり考えているので、周りが見えず突っ走ってしまうことがしばしばありました。

 黒ウサギさんは一番の弱虫で、いつも過去のことばかりを考えています。

 周りのことを良く観察していたので、白ウサギさんが暴走するのを防いでいました。

 灰色ウサギさんは特に取り柄はありません。

 ですが、他のウサギさんと仲良くなるのだけは得意でした。

 白と黒のウサギさんは仲があまり良くありません。

 だけど灰色ウサギさんが間を取り持っていたので、三匹のウサギさん達は平和に暮らしていました。


 ある日、大きな地震が起きて白うさぎさんが家を出て行ってしまいます。

 家には灰色ウサギさんと黒ウサギさんの二匹になってしまいました。

 仕方ないので黒ウサギさんが家のリーダーになることになりました。

 灰色ウサギさんは白と黒の間を取り持つのが仕事でしたが、その仕事がなくなってしまったので、深い眠りについてしまいました。

 それからしばらくは、二匹だけで暮らしました。


 そして、また地震が起きたのです。

 今度は灰色ウサギさんが家を出て行ってしまいました。

 灰色ウサギさんは、海の近くに住んでいるウサギさんの家で一緒に住むことになりました。

 海辺のウサギさんはとても心配性で、どうしたら自分の心配性が治るか灰色ウサギさんに相談しました。

 すると、灰色ウサギさんは王様になれば良いとアドバイスをしました。

 王様になれば、全ての心配事から解放されると分かった海辺のウサギさんは、王様になることを決意しました。

 こうして海辺のウサギさんと灰色ウサギさんの大冒険が始まるのです」


 凜子が話を終えた。


「続きは?」俺は凜子に訊ねた。

「まだここまでしか出来てないんだって。これからどうなるのか楽しみだなー」


 ワクワクといった様子で凜子が顔を綻ばせた。

 童話の内容はいまいち分からなかったが、凜子が楽しそうにしているので良かった。

 それから凜子とたわいも無い話をして、俺は家に帰った。

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