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2 ≪人間を捕食しました≫

 吾輩……じゃなくて、俺。


 たった今まで何があったのかを思い出していたけれど、明らかに心臓発作か何かの病気を突然起こして、そのまま意識を失ってしまった。


「あ、あれはきっと夢だ、夢に違いない。ハハハ、やけにリアルな夢だったなー」


 油汗をかきつつ、俺はあれが夢だったのだと思い込むことにする。

 だって、現に今も俺は夢の中にいる。


 何しろ俺の周囲は、見渡す限り暗い闇だけが広がっていて、周りには何も存在していない。


「う、うん。まだ夢の中にいるから、周囲が真っ暗なだけなんだ。そうに違いない……」

 それからしばらく俺はこれが夢の中だと思い続けるのだけど……思い続けているからって、何か変化があるわけじゃない。


「や、やだなー。この夢いつまで続くんだ。っていうか意識はものすごくはっきりしてるのに、何も変化がないってひどすぎる夢だなー」


 ほんの一瞬だけ、もしかしてここは死後の世界では?

 という疑心が生じた。


 だけど、それは怖くて認めたくない。


 だって、ここが死後の世界なら、周り真っ暗で何もないんですけど。


 天国とまでは言わないけれど、死後の世界はもっと光がさしていてほしいです。

 間違っても、こんな俺1人だけが存在していて、周りは真っ暗な闇がどこまでも続いているのは勘弁してほしい。


「……う、うわあああーー、俺は死んでねぇー!」

 待てど暮らせど周囲は闇から変化がないので、俺はついに焦った。

 焦って、全力疾走して移動する。


「うわあああーっ」

 ――ゲシッ


 っと走っていたら、俺の体が何かにぶつかった。


「いてて……ん?痛くはないな?でも何か硬い物にぶつかったのはわかる」

 結構な速度で走っていたはずだけど、まったく痛みを感じなかった。でも、俺の肌が何か堅い物があると、触覚で知らせてくる。


「痛くないってことはやっぱり夢かー。ふうっ、焦って損した。でも、何も見えないのに、この堅い物は何なんだ?」

 とりあえず夢だと分かれば怖くない。

 そう思うと、今度は夢の中でぶつかったもののことが気になる。


 ――サワリサワリ

 とりあえず手で触れてみる。


 ……なんか、俺の手がないんですけど。

 代わりに体がアメーバみたいな感じになってる気がする。


 手ではなく、アメーバ状の体が動いて、堅い物全体へと広がっていく。


「……変な夢だなー。相変わらず何も見えないけど、体の動かし方はわかるから、違和感が……ないな」

 夢の中での俺の体は、人間からアメーバになっているっぽい。けれど、特に違和感なく体を動かせる。


 そのあまりの違和感のなさに、

「なんじゃこりゃ?」

 と、思うけど、自分の体を自由に動かせるなら問題はないか。

 どうせ夢だしなー。

 ハハハー。


 ――サワリサワリ


 ふむ、まったく何かわからん。

 そうしている間にも、目隠しされた状態で、手で触った感触だけで、何があるのかを確かめていく。

 とりあえず、触ってるものがゲテモノじゃなければいいけれどー。


 ――モグモグモグ

 なんて思ってたら、無意識のうちに俺の体が、触れているものを食べ始めた。


「コラコラ俺の体。訳の分からないものを本能のままに食うんじゃない!」

 もしかして蛇とか、虫とかだったらどうするつもりだい!

 そんなゲテモノ食べたら、全身鳥肌どころじゃなくて、気絶できそうだよ。


 ああいう気持ち悪い生き物は、全滅するべきだね。ゲテモノども、死すべし!慈悲はない!


 なお、俺はゴキブリを見付けたら、ギャギャー叫びながらもハエ叩きで殺戮するタイプだ。

 5、6回全力でたたきまくって、奴らを確実に仕留めなければ。

 強くたたきすぎたせいで足がもげたりすることもあるけれど、奴らは不死身の生命力があるから、確実に死んだと分かるまで、手加減してはならない。

 あと、殺虫剤は論外だ。あの程度では死なないゴキもいるからな。


「っと、今はゴキのことじゃない。勝手にモグモグしてる俺の体よ、とりあえず食べるのをやめい!」

 ――ペシッ


 そういって自分で自分の頭をたたいてやりたいなー。

 でも、今の俺って体がアメーバになってるから、どこに頭があるのかわからないや。

 ハッハッハッ。


 なんてしている間も、口だけはモグモグと動いていく。

 アメーバの体のどのあたりが口なのかと激しい疑問が出てくるけれど、どうも今の俺は体のどこからでも外にあるものを食べられるっぽい。


 ちなみに地面は硬くて、石なのかな?

 なので、さすがに石の地面までは食べられないけれどな。




≪人間を捕食しました≫

 なんて思っている間に、どこかから不思議な声が聞こえてきた。



 ……

 OK。

 今、いくつか突っ込みたいことができた。


 さっき食べていたものだけど、どうやら人間らしい。

 というか、何この声?

 俺の心の中から聞こえてきたんだけど、女とも男ともつかない不思議な声で、ひどく抑揚に欠けている。

 あなたは一体だーれ?


 てかさ、いくら夢の中だからって人間を捕食……つまり食べたなんて、どういう悪夢だよ。

 マジで勘弁してほしいわー。

 これは夢だから許されるけど、リアルでやったら犯罪だよ!

 道徳的にやばすぎるって。


「人肉饅頭食べました」なんて、昔の中国で本当にあったとかなかっなんてレベルの話だよー。


 うわー、人肉なんて夢の中でも食いたくなかったー。





 とまあ、この時の俺はここが夢の中だと思っていたから、ものすごく暢気にしていた。けれど、俺はこの時マジで人肉を食ってしまった。

 後になって思い返すと、あの時の俺のアホさ加減にあきれてしまうけど、俺だってまさか異世界転生しているなんて、この時はこれっぼっちも思わなかったから仕方ない。


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