1 とあるデ……ぽっちゃりの死亡
吾輩……じゃない!
俺の名前は斎藤一樹。日本人の37歳、会社員。
体型はオブラートないい方をすればぽっちゃりで、無慈悲に宣告すれば肥満のデブだ。
いまだに髪はふさふさの黒髪で、将来ハゲの心配はないこと確実だ。
でも、ぽっちゃり体型なのが災いして、会社にいる若い女性社員たちから煙たがられているのが玉に瑕。
グスンッ。
俺、昔は今みたいにぽっちゃり体型じゃなかったんだけどな。
むしろハンサムボーイで、学生時代には女の子からキャーキャー言われていたアイドルフェイスの持ち主だった。……だったんだけど、成人してからアルコールに手を出したのがまずかった。
若いころから酒を飲みすぎたせいで、それに合わせて体がぷくりと膨れはじめ、気が付いた時には見事に中年太りをしていた。
顔が脂ぎっていて、少し歩いただけでヒーヒーゼーゼーと息を切らして、汗だくになる始末。
Noー!
若いころの俺はこんなのじゃなかった。
昔は女の子から「キャーキャー」と黄色い歓声を受けたのに、今では、「見苦しい、あのデブ」と、女性社員から陰口を叩かれている有様だ。
……ああ、生まれ変わることができたら、今度は酒に手を出さず、若いころの体型維持に努めよう。
ぎゅっと拳を握って、俺は何度も心に固く誓ったものだ。
……まあ、誓いはしたけれど、仕事のストレスの発散先が、どうしてもアルコールにいくのをやめられなかった。
そして昔の体型に戻そうと、食事に注意したり運動をするわけでもない。
おかげで、ぽっちゃり体型は全く解消されることがなかった。
「このまま40過ぎても俺はぽっちゃりさー」
なんて虚しいことを口ずさみつつ、俺は日々生活していた。
……そのはずだったけど、ある日自宅で寝ていたら、突然体が金縛りにあったかのように動けなくなってしまった。
それも体だけでなく、なぜか息までできなくなってしまう。
「ちょ、体が動かない、息ができない。てか、心臓が滅茶苦茶やばい音をたててる!」
意識はあるけれど、心臓はバクバクと早鐘を打ちを、耳の後ろでその音を聞き取ることができるほど。
おまけに、体中が燃えるように熱くなって、全身から汗が出まくった。
だけど、それよりなにより、息ができないことが一番の問題だった。
「ま、まさか日頃の不摂生な生活のせいなのか!」
アルコーはよく飲むし、ぽっちゃり体型になってからはろくに運動をしていない。
おまけに独り身の独身生活を送っていたので、食事に気を遣わなかった。毎日冷食や油っぽい物ばかり食べていた。
「野菜?なにそれオイシイノ?ハハハハハッ」
なんて笑っていた。
けれど、明らかにそんな不摂生な生活の付けが来たことを、今の体が明確に物語っていた。
「も、もしかして心臓発作か!い、いやだ、こんなところでいきなり死にたくない!それにまだ童貞なのに!」
もう少しすれば40間近か。
30過ぎた童貞は魔法の使えない魔法使いになれるけど、40過ぎれば賢者にジョブチェンジできるからね。
ハハハー。
って、笑っていられるか!
「グアー、死にたくねー!」
叫ぶけれど、俺の心臓はとてつもない速度で早鐘を打ちまくり、俺の意識はいつしか暗い闇の中へ落ちていった。




