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同じ場所

少しだけ、見覚えのある場所がありました。

どうしてかは、思い出せません。

放課後。

 特に理由もなく、歩いていた。帰り道とは、少し違う方向だった。

 

「……あれ」

 

 足が止まる。

 

 見覚えがあった。高い建物。フェンス。見下ろせる景色。

 どこかで、見た気がする。

 

「……なんで」

 

 自分でもわからなかった。ただ、足が勝手に向いていた。

 

 階段を上る。一段ずつ。妙に静かだった。

 

 ドアの前で止まる。屋上。

 

 手をかける。

 開けようとして――

 

「だめ」

 

 後ろから声がした。

 

 振り向く。

 紬がいた。

 

「……なんで」

 

 息が少し上がっている。

 

「なんとなく」

 

 それだけ言う。

 

 しばらく、何も言わなかった。ただ、ドアの前で止まったまま。

 

「……開けるのやめとこ」

 

 紬が言う。

 

「なんで」

 

「今日はいい」

 

 それだけだった。

 

 理由は言わない。

 

 でも、なぜか逆らう気になれなかった。

 

「……わかった」

 

 手を離す。

 それだけで、少しだけ息が楽になった気がした。

 

 なんでだろう。

 

 階段を下りる。

 さっきまでの静けさが、少しだけ遠くなる。

 

「ねえ」

 

「なに」

 

「さっきさ」

 

 紬が、少しだけ間を置く。

 

「なんか思い出しそうな顔してた」

 

「……そうか?」

 

「うん」

 

 それ以上は、何も言わなかった。

 

 でも。

 

 確かに、何か引っかかっていた。

 

 見たことある場所。

 でも、思い出せない。

 

「……なあ」

 

「なに」

 

「ここ、来たことあったっけ」

 

 一瞬だけ、空気が止まる。

 

「ないよ」

 

 すぐに返ってくる。

 

「気のせいじゃない?」

 

 

 どこかで、聞いた気がした。

 

 

「……そっか」

 

 それ以上は、聞かなかった。

 

 

 帰り道。

 さっきまでの軽さが、少しだけ戻っていた。

 

 でも。

 

 頭の奥に、何か残っている。

 

 風。

 高い場所。

 

 ――誰かの背中。

 

 そこで、止まる。

 

「……なんでもない」

 

 考えるのをやめる。

 今は、それでいいと思った。

 

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