63 幕間 天界にて 4
~大天使ガブリエラ視点~
もうララーナ様についていけない。
天界の倫理規定を捻じ曲げ、新たな勇者を召喚したからだ。基本的に転生者を自分の世界に一人しか送り込めない。しかし、ララーナ様は抜け道を見つけた。まず、他の世界から死亡した転生勇者を自分の世界に再転生させ、こちらの世界で死亡させる。
そうすれば、見かけ上は転生者が死んだことになり、新たに転生者を送り込める。
実際はまだ転生者が生きているから違反なのだが、バレたとしても「勘違いした」とでも言い張って、押し通すのだろう。
今も目の前で、ララーナ様は新たな勇者に向かって指示をしている。
緑の聖女と同じくらいの年の頃の女性で、戸惑いながらも真剣に話を聞いている。
「私は光り輝く創造神ララーナ!!美貌と英知を兼ね備えた絶対神ララーナ!!唯一無二の偉大なる女神ララーナ!!貴方は勇者として世界を救い、私への信仰を取り戻すのです!!」
前回の転生者に名前を伝え忘れたことを反省し、自分の名前を何度も連呼している。
転生者の女性はつぶやく。
「選挙にでも出るんでしょうか・・・やたら名前を連呼するし・・・」
そんな転生者を無視して、ララーナ様はすぐに転生させようとする。
「ということで、貴方の活躍を祈っています。それでは・・・」
言い掛けたところで、私はララーナ様を止めた。
「ララーナ様!!少しよろしいでしょうか?」
「何よ?」
「私もこの者に力を与えたく存じます」
「あら?殊勝な心掛けね。いいわよ、特別に認めてあげる。貴方もやっとやる気になったのね?」
「はい。何とかお役に立ちたいと思いまして・・・」
今回の転生者はいつになく酷い扱いだ。
ジョブは「勇者」だが、それは名ばかりで何の能力も与えられていない。そうなったのは、もうララーナ様の信仰心が底をついているからだ。信仰心がなければ強い加護なんて与えられない。今回の転生者も捨て駒にしようと考えてのことだろう。流石にこれは許せない。サマエル様に言われた通り、自分にできることをしようと思い、なけなしの力を使うことにした。
「勇者よ。貴方の望みを聞こう。大した力は与えられんが・・・」
彼女から希望を聞き、テイマーの能力を与えることにした。
「本当にありがとうございます。新たな人生を歩ませてくれて、本当に感謝しています。それに動物たちと意思疎通ができる能力を与えてくださるなんて・・・」
心苦しいがテイマーはテイマーでも下級のテイマーだ。
意思の疎通はできるが、上級テイマーのように強制的にテイムすることなんてできない。その旨を伝えても、転生者は感謝してきた。
「強制的に従わせるなんて、できません。十分な能力です。私は前世でペットショップに努めていたんですが、動物たちの声が聞けたらとずっと思っていましたからね。本当にありがとうございます」
そんな様子を見ていたララーナ様が言う。
「感謝するなら、私にでしょ!?もう時間がないから、早く行きなさい」
私はララーナ様にバレないようにそっと、転生者に手紙を手渡した。
「これは?」
「後で見てくれ」
「は、はい・・・」
しばらくして、転生者は光に包まれて消えた。
「すぐに死んでもいいけど、少しは私の信仰心を増やしてもらわないとね」
そう吐き捨てると、ララーナ様は去って行った。
★★★
私はすぐに神具でサマエル様に事の次第を報告した。
流石のサマエル様も呆気に取られていた。
「そこまで腐っているとは・・・」
「ええ・・・私も我慢の限界です。すぐに天界の倫理委員会に・・・」
言い掛けたところで、遮られた。
「それはやめておけ。後はこっちで何とかする。お前に迷惑は掛けられん」
「しかし・・・」
「お前は自分のできることを十分にやった。後は元上司に任せろ。これでも大天使だったからな」
「フフフフ・・・知ってますよ」
ここ最近、褒められたことなんてない。
それが無性に嬉しかった。
「それで、今回の件が明るみ出たら、正直に証言してほしい」
「もちろんです」
「それと書類の控えはしっかり取るようにな。紛失してもいかんからな」
暗にララーナ様に証拠隠滅をさせるなということだろう。
「分かりました」
「もう少しの辛抱だ。その内天罰が下るだろう」
神様に天罰って・・・
本当に皮肉なものだ。
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次回から、いよいよ最終章となります。




