62 エピローグ
世界樹を治療したことで、帰らずの森で採れる薬草やキノコ類が激増した。
ハイエルフも飢えることがなくなって喜んでいる。世界樹が言うには、世界樹があそこまで弱っていたのは、帰らずの森全体の維持に力を使っていたからだそうだ。それが魔力を取り込めるようになって、力が回復し、帰らずの森も元気になったというわけだ。
同行したアンダリエル王女たちも、スズキタウンの住民と打ち解けている。
当初は心配していたけど、杞憂だった。聞いた話だと、アンダリエル王女とダークが良い感じらしい。種族が違うことで結婚を反対されていたらしいけど、今回の件で結婚が認められたからだ。それに伴って、ダークたちダークエルフの扱いが良くなり、それが広がって他の種族も差別することがなくなっていった。
そんな状況で、今年も冬祭りが開催された。
変ったことは、かまくら鍋に新メニューのカレー鍋が加わったことと、大幅に雪像が増えたことだ。獣王国からは幻獣とその庇護を受けている種族が大集合し、自分たちの幻獣の雪像を作り始めた。一応、名目は種族の代表が会議をするためなのだが、会議なんてものの5分で終わって、宴会を始めてしまった。これは視察団が私たち神聖ネフィス教国の会議を見て、すぐに宴会を始めることがデフォルトと勘違いしたからだという。ルナールが言うには、今のところ問題は起きていないから特に問題はないとのことだった。
因みに会議で決まったことは幻獣の呼び名を神獣に統一するということだけだった。平和な会議だ。
なので、基本的に昨年と同じ流れで冬祭りは進んで行く。
オークたちは集団でお見合いを繰り広げ、子供たちは種族を問わずに雪の中を駆けまわって遊んでいる。プライドの高いハイエルフも赤ドラと白ドラの雪像を一生懸命に作っているしね。
そんな中、少し落ち込んでいる者たちもいた。
下半身が馬のケンタウロス族と下半身が蜘蛛のアラクネ族だ。話を聞いてみると、神獣が羨ましいとのことだった。
ケンタウロス族の族長タリアスが言う。
「贅沢な悩みかもしれんが、我らも神獣様に来ていただきたかったな・・・我らを庇護してくださる神獣様は、絶対にこの世界にいるはずだと思うが・・・」
そればっかりはどうしようもないなあ・・・
赤ドラと白ドラに聞いても、大した答えは返ってこなかった。
(知らないよ)
(どこかにいるんじゃない?)
そしてもう一人、気が気でない者がいる。ゴブリナだ。
今も来賓としてやってきたレッドさんたちに昨年の冬祭りの感動を伝えている。
「ネフィス様が降臨された光景は本当に感動的でした。今年も来ていただけたらいいのですが・・・」
ブルーさんが慰める。
「ネフィス様も忙しいかもしれませんしね。でも祈るだけは祈りましょう。たとえネフィス様が降臨されなくても、祭り自体は素晴らしいと思います」
私だって来てほしい。
私もそっとネフィス様の雪像に祈りを捧げるのであった。
★★★
そして冬祭り最終日、王であるグリューンが閉会を告げる。
その時、奇跡が起きた。昨年と同じく、広場中央の大ネフィス雪像にネフィス様が降臨されたのだ。柔らかな光が降り注ぎ、そしてネフィス様は言葉を発せられた。
「今年も皆が無事に冬を迎えられたことを嬉しく思います」
観衆が歓喜の声を上げる。特に初めて目にするレッドさんたちや獣人たちは腰を抜かしそうになるくらい驚いている。
「また、新しい仲間が加わったことは、大きな喜びです。それでは皆に感謝し、雪像は有難くいただきます」
すると、設置してあった雪像が一斉に輝き出して消滅した。歓喜の声が上がる。
ゴブリナなんかは興奮しきっている。
「ブルーさん!!素晴らしいでしょう!?」
「ええ・・・本当に感動の体験です」
しかし、ここでネフィス様は驚きの発言をする。
「ここで皆に言っておかなければならないことがあります。人間の国で勇者が誕生しました」
興奮していた観衆が一斉に沈黙した。
勇者は魔族たちにとって、憎むべき存在だ。前回の勇者も獣人たちに多大な損害を与えたしね。それが誕生するなんて・・・
「できるなら勇者を殺さず生け捕りにしなさい。皆で力を合わせれば、それは可能です。それでは皆を信じ、私は天に帰ります」
巨大なネフィス様の雪像は眩い光を放ち、すぐに消滅した。
お祭りムードから一変し、お通夜のような雰囲気になった。顔つきの変わったグリューンが宣言する。
「これより緊急の会議を行う。幸いここに各種族の代表者が来ている。これはネフィス様の思召しだろう」
すぐに会議が行われた。
勇者なんて、誕生しなければいいのに・・・
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