61 神木を救え 3
赤ドラと白ドラのお陰で、なぜか歓迎ムードになってしまった。
ダークが説明してくれた。
「その昔、精霊と呼ばれる存在がこの里の危機を救ったという言い伝えがある。赤ドラ殿と白ドラ殿がその精霊ということだろう。王家には我らが知らない言い伝えがあるのかもしれん」
(精霊じゃないよ。マンドラゴラだよ)
(そうだよ。マンドラゴラだよ)
赤ドラと白ドラは否定しているけど、この際、このまま精霊で押し通すのもありかもしれない。
その旨をダークに伝える。
「そうだな・・・そうしよう。それでさっさと世界樹を治療してスズキタウンに帰還しよう。ハイエルフは気に食わないが、世界樹が枯れると一大事だからな」
グリューンもうなずく。
他のメンバーはというと、いつもの視察と同じ感覚なので、宴が始まると思ってそわそわしている。しかし、ハイエルフのほうは女王以外は、あまり歓迎してくれていない。なので、無用なトラブルを避けるため、さっさと世界樹を治して帰る計画だ。ちょっと、可哀想だけどね。
ダークが女王に進言する。
「宴よりも前に治療をさせていただきたい」
「そうですか?精霊様がよければ・・・」
(ここから見ても分かるくらい危ない感じだね)
(うん。早く治療してあげたいな)
その旨をダークと女王に伝えた。
「では早速、お願いします。それにしても、精霊様と意思疎通ができるなんて・・・」
女王は、私を尊敬の眼差しで見つめてくる。
それからすぐに世界樹の下に案内された。
近くで見ると想像以上に大きい。でも素人の私から見ても元気が無さそうだった。早速、赤ドラと白ドラが世界樹の周りをぐるぐると周ったり、触ったりして診察をしている。
(かなり弱っているね。魔素が取り込めないことが原因だね)
(「品種改良」を使ったら治りそうだよ)
赤ドラと白ドラに言われた通りに世界樹に触り、「品種改良」のスキルを発動させる。
細かい調整は赤ドラと白ドラがやってくれたけど、かなり魔力を消費したと思う。久しぶりに立ち眩みがした。すぐにグリューンが支えてくれた。
「大丈夫か?聖女殿」
「大丈夫です。かなり悪いようだったので、魔力の消費量がいつも以上に多くなりました。赤ドラと白ドラの話では、もう大丈夫とのことです」
女王が歓喜する。
「なんと素晴らしい!!流石は精霊様ですね」
これに女王のお付きのハイエルフが進言する。
「女王陛下。この際、精霊様だけ里に残ってもらい、他の魔族たちはすぐに里から出て行かせればいいのではないでしょうか?世界樹様が完治した以上、この者たちをもてなす必要はありません」
「それもそうですね・・・」
流石にそれは酷すぎる。
私だって、倒れそうになりながら治療したのに!!
そんなことを思っていたら、急に世界樹から声がした。
深く威厳のある女性の声だった。
「なんという恩知らずな!!恥ずかしくないのですか!?」
一同が唖然とする。
女王が世界樹に向かって語り掛ける。
「ま、まさか・・・」
「そうです!!私です。これまでずっと、貴方たちの行いを見てきました。私を献身的にお世話してくれたことは感謝しますが、他種族に対する姿勢が酷すぎます。まずは、そこの聖女殿に感謝すべきではないのでしょうか?」
世界樹が私たちの気持ちを代弁してくれた。
「それにダークエルフやハーフエルフをこの里から追い出したのも許せません。彼らだって里のために頑張ってくれていたのに・・・弱りきった私では、声を上げることもできず、申し訳ありません」
これにはダークたちダークエルフも感動で涙を流して喜んでいた。
まだまだ世界樹のお説教は続いた。
「だいたい貴方たちがやってきたことって、結界を張って維持するくらいなものでしょ!?私がこんな状態になった時も祈るだけでしたし・・・」
だんだんとハイエルフたちは涙目になっていく。
そんな時、空気の読めないゴブリナが世界樹に話し掛ける。
「世界樹様、ハイエルフたちの祈りがネフィス様に通じ、そして私たちがやって来たのです。ハイエルフたちの祈りは無駄ではなかったと思います」
思うわぬ助け舟にハイエルフたちは呆気に取られている。
ここでハイエルフの女王は、ゴブリナの話に乗ることにしたようだ。
「そうなのです。私たちは、全身全霊でネフィス様に祈りを捧げてきたのです。それによって・・・」
「分かりました。私もネフィス様に感謝をしています。よって、この里にネフィス様をお祀りする神殿を作ることを命令します。素材は私が準備します。世界樹で作った神殿なら、ネフィス様にも喜んでいただけるでしょう」
上手く怒りの矛先を逸らせた女王は言う。
「さあ、宴を始めましょう。世界樹様の快気祝いとネフィス様への感謝、そして精霊様と聖女様とそのお供の方々への歓迎の宴です。早く準備をしなさい!!」
ということで、なし崩し的に宴会になってしまった。
★★★
3日滞在した後、私たちはスズキタウンに帰還することになった。
アンダリエル王女以下5名が同行することになる。神官学校に入校するためだ。世界樹の手前、そうするしかなかったようだ。すぐに態度を改めるとは思えないので、苦労するだろうけどね・・・
別れ際に世界樹から言われた。
「改めて感謝を申し上げます。この調子なら次世代を生み出す種も作れそうです。そうなったら真っ先に貴方たちに託します」
これにはハイエルフたちが歓喜している。
世界樹の種ができることは、凄いことらしい。なんでも、3000年に1度あるかないかのことらしく、いくら長命のハイエルフでも立ち会えることは稀なようだった。
「本当にありがとうございました。私たちも態度を改めて参ります。交易も定期的に行おうと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします」
ハイエルフの女王に見送られ、私たちは里を後にした。
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