6 聖女として 2
神殿の礼拝所が住民でいっぱいになっている。
ほぼすべての住民がここに集合しているし、長であるグリューンも来ている。神殿に入れなかった者も神殿の外で大勢待機している。
どうしてこうなったかというと、ゴブリナの熱意に負けて礼拝の仕方を教えることになってしまったのだが、調子に乗ったゴブリナが住民に触れ回ってしまった。それにしても、ここまで大々的にしなくていいのに・・・
パンツスーツを身に纏ったゴブリナが住民に語り掛ける。
「皆さん、これより聖女様から礼拝方法をご指導いただきます。その前に私の服装を見てください。これが正式な神官服なのです。この服は「創造の木」によって作られ・・・」
住民たちが呆れた様子でゴブリナの話を聞いている。
「またゴブリナちゃんの長い話が始まったよ」
「悪い子じゃないんだけどねえ・・・」
「余程、聖女様に神官服をもらったことが嬉しかったのよ」
「我慢して聞いてあげよう」
ゴブリナは住民から、残念な子扱いをされているようだ。
私はゴブリナの長い話を聞きながら、どうすればいいか頭をフル回転させていた。
この流れで、「実は何も知りません」とは言いづらい。
それにしても、礼拝所の肖像画も女神像も私を転生させた女神とあまり似ていない。
私を転生させた女神は金髪で白い肌だけど、肖像画の女神は褐色の肌で黒髪だ。ツッコミを入れようかと思ったがそういう雰囲気でもないし、そもそも想像で描いた肖像画なんだから、多少容姿が違っていても指摘しないのが、大人の対応だろう。
そんなことを思っていたら、グリューンがゴブリナを窘めた。
「ゴブリナ、その辺にしてくれ。聖女殿も困っておられる」
「も、申し訳ありません。聖女様、ご指導をお願いします」
「は、はい・・・えっと・・・」
こうなったらヤケクソだ!!
私は女神像の前に立ち、柏手をパン、パンと2回打って合掌して、目を閉じた。
「神様は2回手を叩く、仏様は叩かない」くらいの知識しか持ち合わせていない私は、そうするより他になかった。多分、誰も分からないし、これで何とか押し切ろう。
しばらくして目を開けた私は言う。
「以上です」
ゴブリナもグリューンも住民たちも呆気に取られている。
「聖女様・・・それだけですか?」
そう思うよね・・・
でも、ここは押し切るしかない。私は自信に満ちた口調で言う。ハッタリは勢いと自信が大事だからね。
「神様に祈るのに特別なことは必要ありません。それよりも目を閉じたときに「神様ありがとう」と心から感謝することが大事なのです。大事なのは形ではなく、心なのです!!」
礼拝所が静まり返った。
しばらくして、ゴブリナの嗚咽が聞こえてきた。
「そうだったのですね・・・私は神官でありながら、形ばかりに囚われ・・・ウッウッウウ・・・」
それに続くように住民たちからも声が上がる。
「心が大事か・・・そうだな。そういうことだ」
「なんか感動したぞ。俺は毎日ここに礼拝に来るぞ」
「私も来るよ」
「僕も!!」
この人数に毎日来られたら、スローライフどころではなくなる。
なので、一計を案じることにした。
「皆さん、少しここでお待ちください。皆さんにお渡しする物があります」
そう言うと、私は一旦退席した。
★★★
30分程して、戻ってきた私は大量の小型女神像を抱えていた。
「創造の木」で大量生産したのだ。
「これから皆さんに小型女神像をお渡しします。こちらに来て礼拝するのは週に一度で構いません。なので、お渡しした女神像に短時間で構いませんから、毎日祈りを捧げてください。その際に収穫した作物やお土産にもらったお菓子やお酒をお供えしてください」
住民の一人が質問してくる。
「お供えした物は、その後どうすればいいのでしょうか?」
「普通に食べてもらっていいですよ。感謝してお供えすることが大事なんです。お供え物の良し悪しは関係ありません」
「それなら何とかなりそうだ」
ここで私はつい調子に乗ってしまう。
「それで週一回の礼拝なのですが、その際に賽銭箱を用意しておきますので、少額で結構ですので、ご寄付をいただきたいのです。銀貨でも銅貨でも構いませんよ」
ちょっとした小遣い稼ぎのつもりだったが、場内は打って変わって静まり返った。
住民の表情も暗くなる。
あれ?私ってヤバいこと言ったのだろうか?
空気を読んだグリューンが説明してくれる。
「我の不徳の致すところだが、銅貨さえも我が集落には、ほとんどないのだ。行商人が月に一度やって来るが、行商人に頼みこんで借金し、食料や物資を購入しているのが現状だ。申し訳ない・・・」
そこまで酷いのか・・・
ここで空気を読まないゴブリナが言う。
「皆さん、落ち込んではいけませんよ。聖女様が仰りたいのは、銀貨や銅貨なんて、すぐに稼げるようになるということです。そして稼いだ金額の一部を寄付すればいいのです。
聖女様、そういうことですよね?」
そういうことではないのだが、空気的にこう言うしかなかった。
「わ、私に任せてください」
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