55 神獣を救え
今年も収穫祭が無事に終了し、のんびりと過ごしている。
神殿では、収穫祭の来賓としてやってきたレッドさんたちを前にゴブリナが冬祭りの感動を伝えている。因みにレッドさんたちは冒険者と兼務で、ネフィスタウンの外交官的仕事もしているらしい。
「冬祭りでは、ネフィス様が降臨され、感動に包まれました」
「それは凄いですね。私たちも是非、冬祭りに参加したいと思います」
「是非、来てください。今年もきっとネフィス様が降臨されると思います。ねえ、聖女様?」
ここで私に振るのか・・・
「来てくれたらいいと思うけど、ネフィス様も偉い神様だから、お忙しいかもしれないしね。みんなで来てくれるようにお祈りでもしようか?」
とりあえず、誤魔化した。
そんな話をしていることころにグリューンから呼び出しを受けた。
広場にいるグリューンの元に行ってみると、フックスの父親で獣王国の宰相であるルナールとオオカミっぽい女性がいた。この女性は餓狼族の族長でウルバというらしい。なんでも、私たちに助けを求めに来たようだ。
「ルナール殿、どこの種族にも肩入れしないようにとの話だったはずだが?」
「それはそうですが・・・少し、抜き差しならない事情がありまして・・・」
ウルバが話を引き継ぐ。
「頼む、幻獣様を救ってくれ。我らではどうにもならんのだ」
幻獣?
話を聞くと、餓狼族を庇護している知能の高い魔物らしい。
かなり大きなオオカミで、頭が二つあるそうだ。
「実は人間の冒険者の襲撃に遭い、大怪我をされた。何とか総出で撃退したのだが、幻獣様の怪我が完治しないのだ。ルナール殿に聞いたところ、こちらの聖女殿に頼めば何とかなると・・・」
言い掛けたところで、広場で寝ていたウリと母親の主さんがやってきた。
「もしかしてオルトロスか?」
「そ、そうです。もしや貴方様も幻獣様でしょうか?」
「そう呼ばれることもあるな。とりあえず、詳しく聞かせてくれ」
話を聞くかぎり、ヨルやフェニーと同じ症状のようだ。
一通り、話を聞いた後に主さんが言ってきた。
「オルトロスは我が修行時代に世話になってな。100年程会っていないが、助けてやりたい。奴も我と同じような魔物だ。聖女殿、助けてはもらえないだろうか?」
ここで断ることなんてできない。
私がグリューンを見ると、うなずいてくれた。
「分かりました。できるだけのことはします」
★★★
それから3日後、私たちは餓狼族の集落に向かった。
メンバーはいつものメンバーに加えて、主さんとヨルとフェニーも同行する。ヨルもフェニーも他人事ではないようだった。
「もしかして、あの勇者がこちらの世界にも来たのか?」
「でも、確実に死んだよ。別の奴だと思うけど・・・」
勇者?
私にはテロリストにしか思えない。
スズキタウンを出発して5日後、餓狼族の里に到着した。
ウルバと共にオルトロスの現状について、担当者から報告を受ける。
「症状は変わっていません。いえ、悪化しているとおしゃっています。具体的には・・・」
冒険者の光る剣で右の頭を斬られたことにより、右の頭が暴走し始めたそうだ。
誰彼構わずに襲い掛かるようになったらしく、左の頭が何とか止めているようだが、それも限界に近いみたいだった。
「幻獣様は『制御が効かない。もうここへは来るな』と言って、森の奥に入って行かれました。我らに迷惑が掛からぬように・・・ウッウッウウ・・・本当に不憫で・・・」
担当者は泣き崩れた。
私も何とかしてあげたい。
「話を聞くかぎり、妾やヨルと同じ症状じゃな」
「そうだね。白ドラ様の出番だね」
(任せて!!)
それなら話が早い。
早速、次の日からオルトロスの捜索が開始された。
オルトロスはかなり森の奥に入ってしまったようだ。
主さんが匂いをたどって捜索を続けているが、一向に見つけられない。
「どうも奴は我らに気づいて、逃げているようだ。迷惑を掛けたくないのであろうな。オルトロスはそういう奴だ」
主さんの話や餓狼族からの慕われ方を考えると、オルトロスはいい魔物のようだ。
なかなか見つけられないことに苛立ったフェニーが言う。
「これでは埒が明かん。妾が飛んで見つけてくる。その場にとどまるように言っておく」
そう言うと、フェニーは飛んで行ってしまった。
しばらくして、主さんが言う。
「匂いが強くなった。オルトロスは近いぞ」
緊張しながら、更に森を奥に進む。
すると、黒く大きなオオカミが姿を現した。ただ、普通のオオカミと違うのは頭が二つあるところだ。右の頭は唸り声を上げ、左の頭が私たちに警告を発する。
「ガルルルル!!」
「逃げろ!!制御が効かないんだ。最悪、殺してしまう」
主さんが声を掛ける。
「久しいなオルトロス。助けに来たぞ」
「もしかして、グレートボア?大きくなったね。でもそんな場合じゃないんだ。どんな薬草も餓狼族の魔法薬も効かなかった。だから、僕たちのことは放っておいてよ。誰にも迷惑の掛からないところに行くからさ」
ここでヨルとフェニーが歩み出た。
「僕たちも同じ症状だったけど、聖女様のお陰で治ったんだ」
「うむ。診察だけでも受けてはどうじゃ?」
少し悩んだオルトロスが言う。
「そうしたいけど、制御が効かないんだ。近づいたら誰彼構わず攻撃してしまう・・・」
「だったら僕に考えがあるよ。毒魔法を使うけどいいかな?」
「毒?」
「ちょっと体が痺れるくらいさ。痛くはないよ」
かなり悩んだオルトロスが言う。
「じゃあ、お願い」
「うん」
すぐにヨルがオルトロスに魔法を掛け、痺れさせた。
動けないのを確認して、早速診察に入った。
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