54 幕間 天界にて 3
~大天使ガブリエラ視点~
私はララーナ様から呼び出され、激しく罵倒される。
提出した報告書を投げつけられた。所謂、パワハラというやつだろう。
「どうなっているのよ!?こんなことになるまで気づかなかった貴方は無能ね。何が大天使よ・・・」
ララーナ様が怒るのも無理はない。
ララーナ様が管理する世界、ヴェルトラでのネフィス様への信仰心がララーナ様への信仰心を大きく上回ったからだ。このままではヴェルトラの管理権がネフィス様に移ってしまう。
「何が原因か、分かっているんでしょうね?」
何とか誤魔化してやってきたが、もう限界だと思い、新たに作成した報告書をララーナ様に手渡した。
ララーナ様が驚愕の表情を浮かべる。
「な、なぜ・・・私がネフィスの部下ってどういうことよ!?あの転生者は何が楽しくて、ネフィスの布教活動をしているのよ!?」
自業自得だろう。
そう言えればどれだけ楽か・・・
「調査によりますと、転生者はネフィス様とララーナ様を当初は混同していたようです。転生時にララーナ様のお名前を伝えなかったことがそもそもの原因かと・・・」
「私が悪いっていうの!?」
「今、それを言っても仕方がありません。まずは対策を・・・」
言い掛けたところで遮られた。
「もういいわ!!直接ネフィスに文句を言ってやるわ。貴方もついてきなさい」
私はララーナ様に連れられて、ネフィス様の神殿を訪れることになった。
★★★
ネフィス様の神殿は正直言って、ボロボロだ。
「こんなボロ神が調子に乗って、ムカつくわね」
しばらくして、サマエル様がネフィス様の元に案内してくれた。
サマエル様は大天使だったが、ララーナ様に苦言を呈したことが原因で、堕天使となった方だ。私も天使になりたての頃はお世話になった。本当に尊敬できる上司だった。私もサマエル様のような大天使になりたいと思っていたが、そうはなれず、ただララーナ様に言われたことをやるだけの天使になってしまった。
「どうぞ、こちらへ」
ララーナ様は開口一番、ネフィス様に文句をつけ始めた。
「私が貴方の部下ってどういうことよ?嘘ついて平気なの?」
「私は部下のようなものと言っただけだ。それに今の状況では、私の部下と言っても差し支えはないだろう?」
ネフィス様は悪びれることなく、そう言った。
これにはララーナ様がキレた。
「天界の倫理委員会に訴えるわよ!!」
「好きにしろ。それで困るのはお前のほうだ」
「後悔することになるわよ!!」
怒ったララーナ様は私を置いて帰ってしまった。
残された私はどうしろと?
神殿間の天使の移動は、神の権限がなければできないのに・・・
そんな私にネフィス様は優しく声を掛けてくれた。
「貴方も大変ね。少しここでゆっくりしていけば?」
「そうは言われましても・・・」
「私に気兼ねすることはないのよ。それにサマエルとは知らない仲じゃないのよね。今日はサマエルの仕事はないから、二人でお茶でもしてくれば?帰りは私の権限で移動させてあげるからね」
「は、はい・・・ありがとうございます」
ネフィス様の好意に甘え、私は久しぶりにサマエル様とお茶をすることになった。
二人きりになると、昔の上司と部下に戻ったようだった。自然と愚痴が止まらなくなる。
「聞いてくださいよ、サマエル様。ララーナ様は本当に酷いんですよ。完全に倫理規定に違反しているし、私がそれとなく注意しても聞き入れてくださらないんです。サマエル様が居た頃はまだよかったです。私もサマエル様と同じ立場になると・・・」
サマエル様は、昔と同じように私の愚痴を聞いてくれた。
「ガブリエラ、お前がこれまで頑張ってきたことは分かる。苦労もしただろう。しかし今一度、自分がやってきたことが正しかったのか、考えてみることだ。君はもうただの天使ではない。押しも押されもしない大天使だ。自分が正しいと思えることをすればいい。元上司として言えるのはこれくらいだ」
思えば、私はララーナ様の命令というだけで思考停止していた。
もっとやり方があるはずだ。サマエル様はそうやってやってきたはずだ。だから、堕天使にされることも厭わず、ララーナ様に苦言を呈し続けていたのだ。
「分かりました。私、やってみます。もしララーナ様の逆鱗に触れ、堕天使になってしまったら、その時は堕天使の先輩として、指導してくださいね」
「うむ。だが、そうはならんだろう。もし行動に移す時は、相談に来い。しっかり指導してやる」
久しぶりに気が晴れた。大変有意義な時間だった。
お茶会が終り、ネフィス様にララーナ様の神殿に送ってもらった。
神殿に着くとララーナ様に激しく罵倒される。
「どこで油を売っていたのよ!?この忙しい時に」
貴方が置き去りにしたんだろうが!?
そんなことを言えるはずもなく、平謝りをする。
「申し訳ありません」
「そんなことよりも、勇者を送り込むわよ」
「そ、それは・・・明らかに倫理規定に違反しています。短期間で転生者を送り込むなんて、間違いなく・・・」
言い掛けたところで遮られた。
「転生者ならね。でも厳密に言えば転生者じゃないのよ。ある世界で勇者パーティーが全滅したんだけどね。それを・・・」
天界でも有名になった馬鹿勇者か・・・
流石にそれはリスクが高すぎる。その勇者は最悪で討伐すべき魔王はそっちのけで、神獣や比較的害のない魔物を大量に狩りはじめ、挙句の果てには全く害のなかった魔獣に挑んで全滅した。そんな危険な奴をヴェルトラに?
もう我慢の限界だった。
ララーナ様の元を辞した私は早速サマエル様に神具で連絡を取った。
「実は、ララーナ様が・・・」
多分、これは天使として正しい行動だとも思う。
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次回から新章となります。




