48 恒例の視察 2
今回の視察の最後はドラゴンズホームだ。
リザードマンやフロッグ族、ラミア族が多く住む集落で、リザードマンとラミア族はドラゴンを崇拝しているので、この集落だけはヨルが大人気だ。
緊張しているヨルにウリが声を掛けている。
「キュー!!」
「落ち着いて、自信を持ってドラゴンをやれってことですね・・・分かりました。頑張ります」
集落に入る前にヨルは巨大化する。
本当は大蛇だけど、ヨルは頑張ってドラゴンを演じてくれている。しばらくして、集落に到着すると熱烈な歓迎を受けた。どの集落も熱烈な歓迎をしてくれるが、この集落は他と比べて段違いに熱狂的だ。
それと普段は見かけない赤い鱗のリザードマンも多く出迎えてくれた。
グリューンと集落の長であるザードが挨拶を交わしている。
「元気そうで何よりだ」
「うむ。それでグリューンに紹介したい者がいるのだ」
ザードに紹介されて、グリューンの前に歩み出たのは赤い鱗のリザードマンだった。
「レドルだ。レッドリザード族の族長をしている。我らも神龍様を信仰している」
「グリューンだ」
挨拶を済ませたのを見計らって、ザードが言う。
「グリューンよ、レッドリザードの里を訪れてくれないだろうか?少々困ったことになっているようでな」
「話は聞こう」
ザードに促されて、レドルが話始めた。
「我らレッドリザード族は暑さに強く、火山地帯に住んでいる。しかし、火山が不安定になり移住を検討している。できるならば、火山の異常の原因を突き止めてもらいたい。そちらの聖女殿はそういったことが得意と聞いたからな」
「我らがレッドリザードの里に調査に向かうことはやぶさかではない。ただ、結果は約束できんぞ」
「それで構わない。聖女殿と神龍様が来てくれて、それでも解決できないのであれば、その時は移住を検討する。移住に反対する住民も納得するだろう。それで移住先なのだが・・・」
レドルの話をまとめると、レドルとしてはネフィス教国への移住を検討しているのだが、住民の多くが納得しない。里の問題を解決するというよりは、私やヨルが行って移住を促してもらうことが本心のようだ。
私としても協力したいと思う。それに今回は結果を求められないから気楽なものだ。それに・・・
「温泉ですか!?」
「うむ。火山地帯だから温泉の質はいい。住民の多くが離れたがらないのも温泉があるからだ」
温泉か・・・
この世界でお風呂には入っているけど、温泉に入ったことはない。だったら温泉旅行気分で里に行くのいいかもしれない。私の心は決まっていた。
「グリューンさん。レッドリザードの里に行きましょう。困っている人を助けるのが私たちの使命です」
「聖女殿がそこまで言うのなら、そうしよう。レドル殿、そういうことだ」
「聖女殿、グリューン殿、礼を言う」
こうして、私たちはレッドリザードの里に向かうことになってしまった。
ほぼ全てのメンバーが賛成したのだが、ヨルだけは反対していた。
「嫌だよ・・・ドラゴンを演じるのは辛いし・・・」
「キュー!!」
「えっ!?分かりました。ちゃんとやります・・・」
ウリに半ば脅されて、レッドリザードの里に向かうことに同意したヨルだった。
★★★
一旦スズキタウンに帰還し、準備を整えた私たちはレッドリザードの里に向かうことになった。
当然、ザード以下リザードマンやラミアも同行する。ヨルと一緒に旅をすることは、この上ない幸せらしい。まあ、ヨルはかなり嫌がっていたけどね。
「これじゃあ、気が休まらないよ・・・」
「キュー!!」
「はい、分かりました」
これもウリが説教をして解決した。
スズキタウンを出発して5日でレッドリザードの里に到着した。
標高は高いのに火山の影響からか、そこまで寒くはない。道中にレドルがガイドをしてくれる。
「ザードからもらった作物を育てたところ、大部分の作物は育たなかったが、キャベツと大根だけは不思議とよく育つのだ。そのお陰で食料事情は改善し、里は豊かになった」
大根と聞いて、白ドラのテンションも上がる。
(大根だ!!嬉しいな!!)
前世が大根だからだろう。
里では例の如く、大歓迎を受ける。既に神殿とヨル用の社が完成していた。
「神龍様!!」
「ああ・・・有難い」
「神龍様!!こっちを向いてください!!」
私たちはすぐに調査をしようと思っていたけど、住民の熱狂が凄まじく、宴会をすることになってしまった。そして、出てきた料理に唖然とする。ほとんどが激辛料理だった。
この土地ではスパイスの生産が盛んで、レッドリザードは辛い物好きだった。かく言う私も辛い物は好きだ。某カレーチェーンの10辛なら余裕で食べられるレベルだしね。
それにカレーっぽい料理もあって、私はどんどんと料理を食べていた。
「聖女殿が料理を気に入ってくれて有難い。里の外の者には人気がないからな」
「そうですね。もう少し辛味を押さえれば外の方にも好まれますよ」
「そういうものか?」
「はい。できれば定期的にスパイスを購入したいと思いますしね」
そんな話をしている時、急にシステムウィンドウが開き、メッセージが表示された。
「スパイスの木」が栽培可能になったわよ。色々なスパイスが1本の木から採れるわ。
どういうわけか、「スパイスの木」が植えられるようになっていた。
まあ、帰ったら植えてみよう。
これだけでも、この地に来た意味があったと思う。
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