49 新たな神獣
私は今、朝風呂を堪能している。
昨日は温泉に入れなかったから、早起きして朝風呂に入ることにした。レドルが言うように本当に泉質がいい。
お風呂から出て身支度を整え、のんびり朝食を取った後に調査に出発する。
レドルの話では、火山の直近は猛烈な暑さで、如何に暑さに強いレッドリザードといえど、近づくことさえできないという。
まあ・・・あれだ・・・行ってみたけど駄目でしたというやつだ。
聖女と神龍が頑張って駄目だったら、それで移住に反対している住民も諦めがつくだろうとのことだった。気持ちは分からなくもない。何とかしてあげたいけど、無理なら仕方がない。
里から歩くこと2時間、火山の中腹までやってきた。
同行するレッドリザード以外は、全員が汗だくになっている。暑すぎる・・・
「もうそろそろだ。これ以上はかなり危険な状態だ。流石に我らレッドリザードでも厳しい。安全を考えて調査を中止してもらっても構わない」
レドルにそう言われた時に思い出した。
私って、ネフィス様に付与していただいた結界が使えるんじゃなかったっけ?
試しに心の中で「結界」と唱えてみた。
すると、半透明の膜のようなものが現れて、私たちを包み込んだ。急に暑さが和らいだ。
ゴブリナとブルーさんが騒ぎ出す。
「こ、これはまさか・・・ネフィス様の奇跡ではないでしょうか?」
「そんなこともできるのですか・・・ネフィス様は凄すぎます・・・」
私が二人に事情を説明する。
「凄いです!!ネフィス様・・・」
「聖女様も凄いです。ネフィス様から加護をいただけるなんて・・・」
グリューンが言う。
「これがあれば、もう少し奥まで進めるな?」
「そうですね。感覚的に3時間くらいは持ちそうですね。ポーションで魔力を回復すれば、もっといけると思いますけど」
「それでは行こう。だが聖女殿、くれぐれも無理はしないようにな」
「はい」
それから私たちは火山を登っていく。
山頂に差し掛かった時、ヨルが騒ぎ出した。
「懐かしい魔力を感じるよ!!間違いない!!きっとそうだ・・・」
「ヨル、どうしたの?」
「前の世界でしばらく一緒に行動していた魔物の魔力に似ているんだ。多分、その魔物が近くにいると思う。助けてあげないと・・・」
よく分からなかったけど、他に当てもないのでヨルの案内で、その魔物がいる場所まで行くことになった。臆病なヨルが助けてあげようと思うくらいだから、悪い魔物だとは思えないしね。
ヨルの案内でしばらく山頂付近を捜索したところ、マグマ溜まりから、全身が炎に包まれた大きな鳥が姿を現した。
「あっ!!やっぱり、フェニーだ!!」
「うん?おお・・・ヨルか?久しぶりじゃな」
「フェニーもこの世界に来たの?」
「うむ。ネフィス様にこちらの世界に連れてこられたのじゃ」
詳しく話を聞くと、このフェニーと呼ばれている鳥も元々はヨルと同じ世界に住んでいたらしい。
「不覚じゃった。勇者に聖剣で斬りつけられてから、炎の暴走が止まらなくなってのう。こんなことなら、問答無用で焼き殺しておくんじゃったわ。今度会ったらただではおかんぞ」
こちらもヨルと同じように勇者の所為で、魔力が暴走して、常時全身が炎で覆われた状態になってしまったようだ。
「勇者たちはもう死んじゃっているよ。僕も同じように勇者たちにつけ狙われて、結局、暴走した僕の毒で全滅したんだよ」
「そうか・・・まあ、死んで当然じゃな。ところでヨルは、なぜここに来たのじゃ?」
「この火山で異常があるって聞いて、それを調査しに来たんだよ」
「間違いなく妾の所為じゃな。妾の魔力の炎が火山に干渉したのじゃろう。どうにかしてやりたいが、ここを動くわけにはいかん。他の場所に行っても同じようなことが起きるからのう」
私も二人の会話に入る。
「ということは、貴方を治せば何とかなるということですね?」
「何じゃお前は?」
「フェニー、気づかない?」
「この人間からはネフィス様を感じる。どういうことじゃ?」
「私はミドリ・スズキ、緑の聖女です。ネフィス様から加護をいただいております」
「妾は不死鳥フェニックス。親しい者からはフェニーと呼ばれておる。人間は好きになれんが、ネフィス様の加護がある以上、話くらいはしてやる」
不死鳥フェニックスと聞いて、ブルーさんが驚きの声を上げる。
「不死鳥フェニックスって・・・伝説の神獣ですよ!!これは大発見です!!フェニックスの尾は死者をも蘇生させる効果があるとの言い伝えもあります」
「それは間違いじゃ。妾の尾にそんな効果はない。ただ、死んで間もない者であれば蘇生できんかことはないがな」
「そうなのですか!?それではもっと詳しく、教えてください。まずは・・・」
ブルーさんのテンションが上がり、全く関係ない話になったところで、ヨルが会話に入った。
「話が逸れているようだけど、フェニーを治療するって話だよね?だったら、早く聖女様に治療してもらおうよ。いいよね、聖女様?」
「もちろんよ。お願い、白ドラ」
(分かったよ)
白ドラは頭頂部の葉っぱをちぎって、結界から出てその葉っぱをフェニーに手渡した。
それをフェニーが口に入れると、フェニーが輝き始めた。しばらくして、光が収まったところ、全身を包む炎が消えていた。
「信じられん・・・礼を言うぞ、聖女殿」
「お礼はネフィス様にお願いします。ここに来れたのも、治療できたのもすべてはネフィス様の思召しです。私はネフィス様にいただいた能力を使っただけですよ」
「ネフィス様は妾を見捨てなかったのじゃな・・・」
それからしばらくすると、火山の異常事態は収まった。結界を解除しても、少し汗ばむ程度で結界がなくても活動ができそうだった。
レドルが言う。
「本当に有難い。奇跡としか言いようがない。我らレッドリザードは、聖女殿とグリューン王に忠誠を誓う」
レッドリザードの里に帰還した私たちは、住民総出で出迎えられた。
住民を前にレドルが宣言する。
「聖女殿と神龍様のご活躍により、火山の問題は解決した。そして、新たに神鳥様をお迎えすることになった。この御恩に報い、我らレッドリザードは、神聖ネフィス教国に加入することを宣言する」
大歓声でこの提案は受け入れられた。
国に加入するとかいう重大事項をそんなに簡単に決めてもいいのだろうかと思っていしまう。
それからは、すぐに宴会になってしまった。
レドルとザードの会話が聞こえてきた。
「税金もないし、毎年1回は神龍様に来ていただけるなら、加入しない手はないな」
「うむ。義務といえば、どこかの集落が困った時は出来る範囲で助けることだ。今のところ、そういったことはないがな」
「もちろんだ。この恩に報いる」
神獣たちはというと・・・
「キュー!!」
「仕方ないのう・・・ここでは妾は新入りか・・・よろしく頼むぞ、ウリ先輩」
「そうだよ。僕も先輩だからね」
「うむ。ヨル先輩もよろしく頼む」
みんなそれなりに仲良くしているようだった。
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