37 エピローグ
ドワーフ王国を出た私たちは、すんなりとスズキタウンに帰還することはできなかった。
というのも、リザードマンの集落に立ち寄ることを半ば強制されたからだ。まあ、気持ちは分かるけどね。
当然、リザードマンの里はお祭り騒ぎだ。
近隣の集落からも大挙してリザードマンたちが押し寄せてきた。それにラミアたちもヨルのことを崇めていた。ラミアもドラゴンの末裔を自称しているからね。この状況に違和感を持っていたのはフロッグ族だ。漁師のケロッグが言う。
「蛇にしか見えないケロ・・・」
「それは言わないであげて。ドラゴンだからね。そういうことだから・・・」
「聖女様が言われるなら・・・」
それ以後、フロッグ族たちは、空気を読んでヨルをドラゴン扱いしていた。
ヨルはというと、一生懸命に神龍を演じていた。
「わ、我は偉大なるドラゴン、ヨルムンガンドである!!皆の者、女神ネフィス様に祈りを捧げるのだ!!」
「「「はい!!」」」
お祭りは三日三晩続いた。
その後、ヨルにどうしてもリザードマンの里に住んでほしいという話になり、専用の社まで建設されることになった。
ヨルに希望を聞いたところ、この集落に住むのは絶対嫌らしい。
「流石に神龍を演じ続けるのは、精神的に無理だよ・・・」
なので、定期的にヨルがリザードマンの里を訪問することで話がついた。
当然ながら、見送りも盛大に行われた。
★★★
やっとスズキタウンに帰ってきた。
建国際から始まり、意外に忙しい日々が続いていたけど、しばらくはスローライフだ。旅先で鉢植えで「創造の木」を育てたので、同じように「水の木」と「フルーツの木」の鉢植えも育てることにした。ちょっとした視察の時にお土産として渡せば喜ばれるしね。
ヨルはというと、魔力の扱いも上手くなり、弱毒性の毒魔法を駆使して害虫駆除を行っている。
これは住民も大喜びで、仕事が楽になったと連日、神殿にお礼に来る。今日もゴブリナとヨルは付近の畑の害虫駆除を行っている。
怪しげな防護服を着たゴブリナがヨルに乗って、害虫駆除をする姿は異様な光景だ。まあ、前の世界でも農薬を散布する時は防護服を着るから、ヨルを農薬散布機、ゴブリナを運転手と思えば違和感はない。
「ヨル様に乗る時は、この防護服を着ることが正式な作法なのです!!と言いますのも、聖女様とヨル様がドワーフ王国の鉱山で・・・」
作業の前には必ずゴブリナが有難い話をしているけどね・・・
そして私はスキルに頼らない農業にも挑戦し始めた。土を耕すだけでもいい運動になるしね。
育てているのは、人参、大根、ジャガイモ、トマトだ。人参と大根は赤ドラと白ドラの熱い希望による。
(立派な人参にするよ)
(立派な大根にするんだ)
赤ドラと白ドラが魔法のようなものを使っているけど、それくらいはいいだろう。
農業の傍ら、聖女の仕事や国の運営にも携わっている。聖女の仕事は週に一度、住民に話をしたり、視察に行くだけだし、国の運営といっても、視察の日程を決めたりすることがメインだけどね。
でも今日は少し違っていた。
「予算が余り過ぎて、使い道がないということですか?」
「そうだ。冬の備えも十分あるし、防衛のために武器、防具を多めに作ってもまだ余りがある。他の集落に援助しようにも他の集落も余裕があるから断ってきたしな」
「そうなんですね・・・神殿の寄付金も余ってますし・・・これは困りましたね・・・」
グリューンとゴブリナが真剣に話し合っているが、贅沢な悩みだと思う。
そもそもこの国は税金がない。集落の集まりだった時から何かあれば、その都度みんなでお金を出し合っていたのだ。例えば、橋を作る計画が持ち上がったとする。お金がある者はお金を寄付し、お金がない者は労働で貢献する。どちらもできない者は作業員に食事を振る舞ったり、マッサージをしてあげたりする。前世の日本では考えられないシステムだ。
他の集落も同じようなものらしく、最近は神殿の賽銭箱もすぐにいっぱいになる。
その寄付金も私たちの運営費を差し引いて、すべて国に納めているから、かなり予算が余っているのだという。
軍備をもっと強化して、軍事国家にするつもりもないし、どうしたらいいものかと頭を悩ませているというわけだ。
「聖女様は、何かご意見はありますか?」
私に聞かれてもねえ・・・
「みんなが入れる大きな公営浴場を作るのはどうでしょうか?」
「それは賛成だな。でもまだまだ予算は余るぞ」
「うーん・・・冬のために暖房設備がない家庭に暖房を設置するというのはどうでしょうか?」
「最近、移住して来た者以外は全家庭に暖房設備があるし、無い家庭も順次設置している。そのための予算は既に計上している」
そんな時、ゴブリナが会話に入ってきた。
「冬で思い出しましたが、冬に娯楽がないのも悩みですね。以前は動く気力もありませんでしたからね」
「そうだな。訓練ばかりでは気が滅入るからな」
あれ?だったら、こういうのはどうだろうか?
「冬にお祭りをするのはどうでしょうか?運動会をしたり、雪像を作ったりして・・・それで、優勝者には賞金を出すとかはどうでしょうか?」
「それなら、近隣の集落から招いても面白いな」
「いい案です。早速、準備しましょう」
私の提案は受け入れられることになった。
でも私が冬祭りの企画運営をすることになってしまった。仕事が増えたけど、そこまで負担にならないと思う。みんなが協力してくれるし、困っていたら助けてくれるからね。
それにしても、私は本当にいい世界に転生させてもらったと思う。
スローライフを満喫し、素晴らしい仲間たちもいる。今日もネフィス様に感謝の祈りを捧げるのだった。
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