36 外遊 4
早速ダークが診察を始める。
色々とヨルを触ったり、様々な魔法薬を振りかけたりしている。でも表情が優れない。
「魔力が暴走しているようだ。原因は分かったが、分析には時間が必要だし、現時点では治療法も思い浮かばん」
ドワンナが言う。
「それじゃあ、このままの状態ってこと?そうだと、鉱山は閉鎖するしかないわ。そうなると、ドワーフ王国は大きな損失を被るわ。ヨルと言ったかしら?ここから出て行ってくれない?」
これには、グリューンが反論する。
「それは無理だろう。ここから出した時点で住民が被害に遭う。ここに居てもらうしかないだろう」
ヨルが悲しそうに言う。
「僕はいないほうがいいんだね・・・」
可哀想になってきた。
これまでのヨルの人生?蛇生?には同情する。毒魔法の能力が低いだけで、同族から相手にされず、仕方なくひっそり暮らしていたら、勇者パーティーに命を狙われ、挙句の果てにこんな仕打ちだ。何とかしてあげたい。
(だったら葉っぱを食べて)
白ドラが自分の頭頂部に生えている葉っぱをちぎり、ヨルに差し出した。
ダークが感嘆の声を上げる。
「その手があったか!?マンドラゴラの葉は、かなりの治癒効果がある。試してみる価値はあるな」
そういえば、瀕死のウリを救ったのは赤ドラの葉っぱだった。
今回は白ドラだけど、効果に違いがあるのだろうか?
「ありがとう。食べてみるね」
ヨルが葉っぱを食べる。すぐにヨルの体が輝き始めた。
しばらくして、白ドラの思いが伝わってきた。
(これで大丈夫だよ)
ダークが再度、診察をする。
「信じられん・・・魔力暴走が治まっている。なるほど・・・赤ドラ殿の葉っぱが傷を回復する効果があり、白ドラ殿の葉っぱが病気やステータス異常の回復効果があるのだな・・・これは研究のし甲斐があるな」
「つまり、治ったってことですか?」
「そうだ」
ヨルが確認を始めた。しばらくして、ヨルの体が子犬サイズになった。
「治ってる!!勇者に斬られてから、体のサイズ調整ができなかったけど、それも治ってるよ。ありがとう、聖女様」
私も嬉しくなった。
「お礼は私じゃなくて、ネフィス様に言ったほうがいいわ。私たちをここに導いたのは、ネフィス様だからね」
「それでも聖女様には感謝です。それに白ドラさんもありがとう。ネフィス様・・・本当にありがとうございました」
そんな話をしていた所にグリューンが言う。
「それで今後のことなのだが、ドワーフたちは納得してくれるだろうか?死者は出なかったが、多少なりとも損害は出たわけだからな」
ドワンナが言う。
「私から父上に説明しますわ。きっと分かってくれると思います。それとヨルの今後も考えなければなりません。この国に居てもらうかどうかも検討しなくては・・・」
まあ、そうだろう。
「だったら私が引取ります。聖女として、ヨルに危険性がないことを保証しますし、ネフィス様もそう仰ると思います」
「分かった。とりあえず帰還しよう」
ヨルが言う。
「だったら僕に乗って行ってよ」
ヨルは急に元の大きさになった。
私たちは、恐る恐るヨルに乗り、帰還することになった。
★★★
鉱山の入口には大勢のドワーフたちやゴブリナたちが待機していた。
私たちが大蛇であるヨルに乗って帰還したものだから、ドワーフたちがパニックになっていた。ドワンド王が声を掛けてくる。
「グリューン殿、聖女殿。これは一体、どういうことだ?」
「ドワンド王・・・これは・・・」
グリューンが説明しようとしたところ、その声を遮るように大声を上げる者がいた。
普段は冷静なリザードマンのザードだった。
「こ、これは・・・まさか神龍様では・・・ああ・・・なんと言う、幸運!!リザードマンの悲願がここに達成された!!」
ザードが大興奮している一方、ザードのお付きのリザードマンたちは、泣き崩れていた。
リザードマンの一人に聞いたところ、リザードマンはドラゴンの末裔を自称し、ドラゴンを崇拝しているという。この世界にドラゴンが現れたことはなく、ヨルを見てドラゴンと勘違いしているようだった。ヨル本人も蛇って言っているのにね・・・
話がややこしくなりそうなところに怪しげな防護服を着たゴブリナが登場する。
「分かりましたわ!!つまり、ネフィス様に導かれた神龍様が、この地に巣食う悪辣な魔物を討ち倒したということですね!!そうですよね、聖女様?」
どうしたら、そういう発想になるのだろうか・・・
「ネフィス様がヨルをこちらの世界に来させたことは、間違いないんだけど・・・」
「やはりそうでしたか!!これは奇跡です」
「ゴブリナ、少し落ち着いて!!順を追って説明すると・・・」
言い掛けたところで、グリューンが小声で言ってきた。
「色々あると思うが、この勘違いを利用しよう。ヨル殿はスズキタウンに来てもらうし、この際、これで押し切ろう」
「分かりました・・・」
ドワンナとダークを見ると頷いていた。
ヨルがつぶやく。
「僕はドラゴンじゃなくて、蛇なんだけど・・・」
「空気を読んでね。もうドラゴンとしてやっていこうよ。バレないから」
「聖女様がそう言うなら・・・」
それから話はとんとん拍子に進む。
神龍であるヨルがドワーフの危機を救ったという話で決着した。
そしてヨルはというと・・・
「キュー!!」
「はい!!ウリ先輩。ご指導お願いします」
「キュー!!」
「分かりました。堂々とドラゴンをやります」
「キュー!!」
「ありがとうございます」
ウリに指導されていた。ウリは「新入りなんだから、ちゃんとしなさい」みたいなことも言っていた。
これから、ヨルに何か頼むときは、ウリを通そうと思う。
まあ、よく分からないけど、これで一件落着でいいよね?
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