29 建国祭 2
グリューンが言う。
「フリン、ダブルマイスターの最終選考に集中しろ」
「でも、それだと建国祭が・・・」
「心配するな。おい!!ドワーフたち、フリンがいなくても大丈夫だろ!?」
「もちろんです!!」
「任せてください」
グリューンがフリンに向き直って言う。
「そういうことだ。我らも協力する」
「有難いッス」
それからのグリューンの行動は早かった。
各集落に使者を派遣し、協力を求めた。3日もすると多くの者が集落に集まってきた。ゴブゾウなんかは、集落の長自ら来てくれた。
「ゴブゾウ、悪いな」
「気にするな。それに来たのは俺たちだけじゃないぜ。居ても立ってもいられないらしいからな」
ゴブゾウたちゴブリンと一緒にやって来たのは、主さんとウリ坊たちの親たちだった。
「我らも協力しよう。ウリたちにも会いたかったしな」
人手が増え、ドワーフたちもいつにも増して働き出したので、何とかなりそうだった。
「凄いですね、ゴブリンって・・・」
「そうだな。我らゴブリンは弱いから助け合わねばならん。そのためには早めに助けを求めることが重要なのだ」
目から鱗だ。私も前世で、もっと早く「無理です。助けてください」と言えばよかったと思う。
「じゃあ、私も頑張りますね」
「その件なのだが、聖女殿にはフリンの側に居てやってほしい。アイツも無理をするからな」
「そうですね。大した力にはなれませんが、それでも健康管理くらいはしますね」
こうして、建国祭の準備はみんなに任せて、私はドワーフの王がやって来るまで、フリンの手伝いをすることになった。
★★★
フリンは悩んでいた。
「急に言われても・・・どうしたらいいんスか?」
「そうね・・・ところで、物作りについては、どういった点が評価されたの?」
「それはッスね・・・一言で言えば、使い手のことを第一に考えて作ったことが評価されたッス。コンパウンドボウはダークエルフたちの為、クロスボウはゴブリンのためっスからね。以外にも長槍の評判もよかったッス。実は長槍も前衛用、後衛用、防御用と細かく分かれているッス」
なるほど・・・単純な性能だけじゃないのね。だったら・・・
「だったら、お酒も同じように考えてみたら?ゴブリンが好きなお酒、ケンタウロスが好きなお酒、ドワーフが好きなお酒は全部違うよね?」
「なるほどッスね。その案でいけば、他の職人たちに負けないッス。この集落には多くの種族が住んでいるッスからね」
「じゃあ、そういうことで進めていきましょう」
それから私はしこたま飲んでいた。
メイン業務が試飲だからね。どんだけ飲んでも酔わないから適任と言えば適任なんだけどね。
そんな努力のお陰で、美味しい酒が多く誕生した。
例を挙げるとケンタウロスは人参が大好きだから、人参を漬け込んだ火酒が大人気になった。人参も厳選しており、臭みがあるけどかなり栄養価が高い。因みにこの人参を選んだのは赤ドラだった。
(自信作だよ。大事に使ってね)
そして建国祭の10日前にドワーフの王が到着した。
見るからに豪華な馬車に屈強な護衛が取り囲んでいるから、遠目から見ても分かる。すぐに出迎えの準備を行う。
馬車から降りてきたドワーフの王をグリューンと共に出迎える。
「我は神聖ネフィス教国の王、グリューンだ。ようこそ、我が国へ」
「出迎え感謝する。我はドワーフ王国の王、ドワンドだ。それでそちらが噂の聖女殿だな?」
「お初にお目にかかります。ミドリ・スズキです。一応、緑の聖女です」
挨拶を済ませ、すぐにフリンの蒸留所に向かうことになった。
移動中、ドワンド王が小声で言ってきた。
「建国祭で忙しいところ悪いな。実はダークドワーフがダブルマイスターになることを良く思っていない者も多くてな・・・その者たちを納得させんことには、事が上手く運ばんのだ」
「そちらにはそちらの事情があるのだな?こちらは一向に構わん。まあ、フリンの酒を飲めば納得するだろう」
「それは楽しみだ」
そんな話をしていたところ、偉そうなドワーフ女性が会話に入ってきた。
「父上、審査の前に工房も確認しましょう。そもそも物作り部門のマイスター認定について、私は納得していないのです。ダークドワーフを認定するなんてあり得ません。それにこのような出来たばかりの国の建国際に歴史と伝統あるドワーフ王国の王が出席するなど・・・」
「ドワンナ!!その辺にせよ!!神聖ネフィス教国からは格安で食料を売ってもらっておる。その感謝の意を表するのは当然のことじゃ。それにマイスターの認定は種族に関係なく、条件をクリアすれば誰でも認定を受けられる。我の目が節穴だと言いたいのか?」
「そういうことでは・・・」
ドワンナと呼ばれた女性は、バツが悪そうにしている。
また小声でドワンド王が言ってきた。
「我が娘がすまんな・・・我がここに来たのは、娘に現実を知ってもらう意味もあったのだ。失礼なことをするかもしれんが、勘弁してくれ」
「一向に構わん」
そんな話をしているうちにフリンの蒸留所に到着した。
フリンに審査の前に工房の方を視察することを説明した。
「いいッスよ。好きなだけ見て行ってほしいッス」
フリンの工房では、多くの職人が様々な物を作っていた。
ドワンド王が興味津々で質問している。
「これは変わった槍だな。長槍もだが、これは誰が使うのだ?」
「それはリザードマンが水中で使う槍ッス。水中で使いやすいように工夫をしているッス」
「どんな工夫なのだ?」
「それはッスねえ・・・」
ドワンド王は王というよりは、気さくな職人といった感じだ。
一方のドワンナはというと、不機嫌ではあったが、フリンの腕は認めているようだった。
「どうだ、ドワンナ?」
「マイスターに認められているのだから、これくらいは当然でしょう。私は不正がないか、確認したかっただけです」
「では、酒造り部門の審査を行おう」
そして、いよいよ酒造り部門の審査が始まった。
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