30 建国際 3
酒造り部門の選考会が始まった。
ドワンド王が言う。
「それでは審査を行う。始めてくれ」
「分かったッス!!」
フリンが指示を出し、お酒だけでなく料理も運ばれてきた。
「フリン殿、これはどういうことかな?」
「私たちが造ったお酒は、料理とも相性抜群ッス。それを味わってもらおうと思ったッス。規定的には問題ないッス」
「そうだな。では、折角だから宴をしながら、審査をすることにしよう。暇な者は是非参加してくれ」
歓声が上がり、作業をしていたゴブリンたちも選考会という名の宴会に参加することになった。
「ジャガイモとエールの相性は抜群だな。是非ともジャガイモを輸入したいものだ」
「果実酒の炭酸割りも旨いな。これなら仕事中でも飲めるな」
「それにしても、変わった酒が多いな」
ドワーフたちの反応はいいようだ。フリンが解説する。
「変わったところで言えば、人参が好きなケンタウロス族用の酒やリザードマンの集落で獲れた米で造った米酒ッスね。米酒はサマスの塩漬けと併せれば絶品ッス」
「旨いな。しかも楽しい。我は満足だ。皆の者、我は合格にしても・・・」
ドワンド王を遮り、ドワンナが発言する。
「父上!!我らドワーフを満足させる酒は出されていません。如何に他種族を喜ばせたとしても、それは選考に値しません。我らを満足させる酒が造れないことを隠すための策かと愚考致します」
「ドワーフを満足させる酒も用意しているッスよ。あれを持ってくるッス!!」
フリンに言われて、ダークドワーフたちが酒を運んで来た。
透き通った透明の火酒だった。
「これは「聖女の涙」という酒ッス。説明は後にして、まずは飲んでみてほしいッス」
「うむ」
しばらくして、ドワーフたちは静まり返った。
そして、ドワンド王が口が開く。
「この香りは一体・・・ま、まさか・・・エルフか?」
「流石は王様ッス。この火酒にはエルフ由来のハーブがたくさん入っているッス。どうッスか?」
「素晴らしい・・・それにしてもなぜ、「聖女の涙」なのだ?理由を教えてくれ」
「それはッスね・・・」
フリンの説明はこうだった。
現在、「フルーツの木」から採れたフルーツを火酒に漬け込んだ物を「聖女の恋」として売り出しているが、それに匹敵する出来だったので、「聖女」を冠した名前にしたようだ。そして「聖女の涙」にしたのは・・・
「大昔、ドワーフもエルフも仲が良かったと聞くッス。今は信じられないくらい仲が悪いッスけど、この国では違うッス。この酒造りに協力してくれたダークエルフを紹介するッス」
フリンがダークを紹介する。
「ダークをはじめとしたダークエルフのお陰でこの火酒が誕生したッス。この酒を飲んで、ドワーフとエルフの仲が良かった時代のことを思い出し、聖女様が涙を流されたという話を元に「聖女の涙」にしたッス。ドワーフとエルフが再び仲良く交流する未来・・・いつかそんな日が来ることを願っているッス」
感動する話だが、ドワーフとエルフが大昔は、仲が良かったなんて初耳だ。
多分、ゴブリナの妄想話をフリンが真に受けたのだろう。ただ、ここで「違います」という勇気は、私にはなかった。
「味は申し分ない。もしかしたら大昔、こういった酒が飲めたのかもしれんな・・・よし!!では結果を発表する・・・」
言い掛けたところで、またドワンナが遮った。
「父上、少し飲み比べをしてみてはどうでしょうか?軟弱なダークドワーフ風情に目にもの見せてやりましょう」
このドワンナはどうしても、フリンをダブルマイスターにさせたくないようだ。
それに明らかにダークドワーフたちを差別している。フリンもそれが分かっているようで、挑発に乗ってしまう
「受けて立つッス」
「では、この勝負に負けたらダブルマイスターを辞退するってことでいいわね?」
「もちろんッス」
「その言葉に二言はないわね?ギムリ!!貴方がやってあげなさい」
フリンが青ざめる。
ドワーフの中でも一際筋肉質なギムリは、ドワーフ王国最強の戦士であるとともに、国一番の酒豪らしい。その名はダークドワーフたちの間でも有名なようだ。フリンもお酒は強いが、流石に勝てないというのが、大方の予想だ。
「あれ?怖気づいたの?代理を立ててもいいわよ?」
「そ、それは・・・」
「早く勝負を決めるために、お酒は「ドワーフ殺し」にしましょう。いいわね?」
「ドワーフ殺し」とは、火酒の中でも酒精が最も強い酒だ。ショット2~3杯で、いくらお酒の強いドワーフでも酔いつぶれるらしい。因みにギムリは11杯という記録を持っているそうだ。
フリンを含め、ダークドワーフたちは意気消沈する。こんなの絶対に勝てない勝負だからね。
「さあ、始めるわよ」
「ちょっと待ってください。その勝負、私が受けます」
気づいたら名乗りを上げていた。
ここまでフリンやダークドワーフたちは、一生懸命に頑張ってきた。それをこんな理不尽な勝負で無駄にはしたくなかった。
「人間が勝てるとでも?」
「勝負は下駄を履くまでは分かりませんよ」
「下駄?」
「えっと・・・下駄というのは、別世界の・・・」
「もしかして、ネフィス様の履物ですか?聖女様、詳しく!!」
ゴブリナが会話に入ってきて、ややこしくなりそうだったので、下駄の説明は省略し、勝負を始めた。
「ショットなんて、面倒くさいので、ジョッキでやりましょう」
こっちはネフィス様の加護、「毒無効」があるからね。
勝負は一瞬でついた。目の前でギムリが倒れている。私は全く酔ってないけどね。
「流石は聖女様ッス!!」
「凄いな!!ギムリを倒すとは」
「ああ・・・聖女殿か・・・ドワーフとして尊敬する」
いつの間にか、私はドワーフたちの尊敬を勝ち得ていたようだ。
そんな時、ドワンナがまた文句をつけてきた。
「父上、そもそもの話、フリンは自分一人で酒を造っていません。ダークエルフや人間に力を借りています。誇り高いドワーフとして・・・」
言い掛けたところで、ドワンド王が怒鳴った。
「いい加減にしろ、ドワンナ!!まだ分からんのか?ドワーフの王となるのに必要なダブルマイスターの称号がなぜ、物作りと酒造りに分かれているか考えたことはあるのか?」
「そ、それは・・・素晴らしい技能を併せ持った者が王として相応しく・・・」
「違う!!お前は何も理解しておらん。ダブルマイスターに必要なのは、スキルよりも組織を管理し、運営する能力だ。どちらかのスキルが優れている職人は少なからずいる。しかし、二つの最高クラスのスキルを持っている職人なんておらん。だからこそ、人を頼り、人を使う。それが出来なければダブルマイスターになれんのだ!!」
ドワンド王は私たちに向き直って言った。
「グリューン王、聖女殿、そしてフリン殿。これまでの非礼を詫びる。そしてドワーフ王ドワンドの名において、フリン殿をダブルマイスターと認める」
歓声が上がる。
「やったッス!!これもみんなのお陰っス!!」
みんなと抱き合っているフリンにドワンド王が言う。
「娘のドワンナがすまなかった。ドワンナ、お前をドワーフ王国から追放する。しばらくここで修業するように。フリン殿、ドワンナの面倒を見てくれんか?」
「そう言われても、流石に・・・」
「ダブルマイスターは後進を育成する義務がある。ドワンナはもう王女ではない。普通に下働きからやらせてくれ」
「それなら仕方ないッス・・・」
ドワンド王がドワンナに言う。
「ここで修業し、我を納得させる功績を上げるまでは、ドワーフ王国の土を踏むことは許さん。分かったな?」
「はい・・・」
ドワンナは落ち込んでいるが、周囲はもうお祭り騒ぎだ。
可哀想になった私は、ドワンナに声を懸けた。
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