20 盗賊の事情
ケンタウロスの族長タリアスから話を聞く。
「長年、お前たち二足歩行の連中は我らケンタウロス族に激しい迫害を加えてきたことを忘れたとは言わせん。同数なら負けはせんが、我らの数は少ない。それで我らは二足歩行の種族となるべく接触しないように生きてきたのだ。しかし5年前、何の前触れもなく、我が里に攻め込んできたことは絶対に許せん。里を追われた我らがお前たちから奪い返して、何が悪いのだ」
グリューンが話を遮る。
「我らの同族が貴殿らの里を攻めたと?」
「そうだ」
「我らは、そんなことはしていない」
「嘘をつくな!!」
会話が噛み合っていない。
私は思ったことを口にした。
「あのう・・・私たちは同じ二足歩行ですが、いろんな種族がいます。それに二足歩行の種族間でも争いがあります。詳しい特徴を教えてくれませんか?」
タリアスは周りを見回していった。
「言われてみれば、特徴が全然違うな・・・強いて言えば、貴殿のような者が多かった」
グリューンが言う。
「人間か・・・彼女は違うが、人間は強欲だ。我らも人間に土地を奪われたことがある。気持ちは理解できるが・・・」
「ということは・・・我らは無関係な者たちを襲ったということか?」
「そうだ。貴殿らの事情は理解できるが、相応の刑罰は科す」
「厚かましい願いだが、処罰は我だけにしてほしい」
それからはタリアスを群れに戻し、残ったメンバーで今後どうするかという話になった。
そんな話をしていると、自警団のゴブリンがやってきた。
「ゴブゾウ様、捕虜の食事はどうしましょうか?」
「そうだな。家畜用の人参でも食わせておけ。盗賊どもに豪華な飯を出すほど、お人好しじゃないからな」
「分かりました。そうします」
その後も話し合いが続く。
「処刑まではしなくてもいいと思うが?」
「そうだな。何年かの強制労働が相場だろうな」
「後はウリと主殿がどう言うかだな」
主さんが言う。
「お前たちの法で裁けばよい。ウリは無事だったし、特に意見はない」
「だったら、強制労働か・・・ウチだけじゃ、使いきれんな・・・」
そんな話をしていたところ、ケンタウロスたちが突然騒ぎ出した。
何事かと思い、現場に向かう。衝撃の光景が飛び込んできた。
ケンタウロス族が涙を流しながら、ゴブリナの話を聞いていた。
「この人参は、女神ネフィス様に遣わされた聖女様が育てられた人参なのです!!」
「こんな旨い人参を食ったことはない」
「慈悲深い・・・罪を犯した我らにもこんな素晴らしいものを食べさせてくれるなんて」
「我らケンタウロス族の好物が人参と知っていたのか?」
「すべてはネフィス様のお導きです。さあ、みんなで祈るのです。私と同じようにしてください。そして、心からネフィス様に感謝するのです!!」
ケンタウロスたちは、一斉にゴブリナに合わせて柏手をパン、パンと2回打って、祈りを捧げていた。
ゴブゾウが言う。
「一体どういうことだ?家畜用の人参をやっただけだが・・・」
困惑しているゴブゾウにタリアスが言う。
「我らにここまで敬意を払ってくれる二足歩行の種族はいなかった。本当に感謝する」
★★★
次の日、タリアスに決定事項を説明した。
ゴブゾウが代表して、説明する。
「戦闘参加者は2年間の強制労働にする。無給で働いてもらうが、食事と住居は保証する。怪我したり病気になったら、治療はしてやる。以上だ」
タリアスが答える。
「感謝する。それで相談があるのだが・・・」
タリアスが言うには、草原の牧草がどんどんと枯れ、一族存亡の危機にあるそうだ。それで、戦闘に参加しなかった同族を受け入れてほしいとのことだった。大体100人くらいだそうだ。
「グリューン、どうする?流石に俺たちの集落だけでは無理だぞ」
「そうだな。だったら他の集落にも声を掛けてみるか・・・」
5日後、周辺の集落の代表者が集結した。
ゴブゾウが代表で説明を行う。
「・・・まあ、そういう事情だ。ケンタウロスたちにも同情すべき事情があるってことだ。今のところ、真面目に働いているし、毎日のお祈りもしている。ゴブリナちゃんや聖女殿に懐いているようだしな。ただ、一つの集落に全員を受け入れるとトラブルが起きるかもしれない。それで、みんなに声を掛けたというわけだ」
リザードマンのザードが言う。
「我らは多めに受け入れよう。こっちは人手不足だからな。戦闘力は高そうだが、湿地や水中では、我らリザードマンには勝てんだろうしな」
これに続いて、他の集落の代表者たちも声を上げる。
「とりあえず、ウチは一家族を受け入れる」
「俺たちもだ」
「ウチは10人までなら、何とかなるぞ」
話合いは上手くいき、私たちの集落は族長のタリアスを筆頭に20名のケンタウロスを受け入れることになった。
そして今日、私たちは帰還する。
「何度も世話になったな。礼を言うよ」
「気にするな、お互い様だ」
「じゃあ、またな」
「うむ」
グリューンとゴブゾウが挨拶を交わす側で、ウリも主さんやグレートボアたちと別れを惜しんでいた。
「キュー!!」
「また顔を見せてくれ。楽しみにしているぞ」
こうして私たちの視察は無事に終えたのだった。
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