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40 何もできない。だからもどかしい

ついさっき真冬くん達が到着したらしい。

カミリア家へ挨拶に来ていた。


あの告白の日以来、何をしたらいいのかわからず、ぼーっとしている日々を過ごしていた。今はハンモックに体を預け、本を読んでいる。内容なんて一つも頭に入ってこないけど。


ウィルはというとお父様とクリス様のお手伝いをしていた。昨日辺りから貴族が増えてきたらしく、その管理だそうだ。

本当はお父様のしごとなんだけど、クリス様がいつも手伝って貰っているからと、お父様と何か相談をしていた。


お母様達は相変わらず話に花が咲いていて、あれに入ると一日は抜け出せないということを本能で感じ取れる。


まあ何が言いたいのかというと、、暇、なのだ。




「エリー、こんなところにいたの」


ふわあとあくびをしていると、上の方から真冬くんの声がした。

び、びっくりしすぎてハンモックから落ちるところだった……。


「真冬くん!! もう仕事は大丈夫なの?」


「うん。国王にも見てもらったし、発売は来月くらいになりそう」


「意外と早いね」


「世界初だからね。今でもほしいって言ってる人は結構いるよ? 予約殺到」


「それはよかった!」


自分が携わったものが人気になっているというのはとても嬉しい。

ぜひお茶会でも紹介させてもらおう。



「…………何か、あった?」


え?? 


何を言われたか理解するのに少し時間がかかった。


何か……は、あった。そりゃあ私の人生を180度変えるくらいの出来事は。

でもそれがなぜ真冬くんに分かるのかがわからない。

どう、答えたらいいんだろう。真冬くんに相談してもいいのかな。



「ウィルラインに、告白でもされた?」


半分冗談のように笑って訪ねる。ただ今度ばかりは私もつられて笑うことができなかった。

それが真冬くんにも伝わったらしい。真冬くんの顔から柔らかい笑みが少しずつ消えていった。


「そう」


声のトーンがいつもより3つくらい低いのは気のせいではないだろう。

だが、何か言う前にそれ(・・)は起こった。



「魔物だ!!」



!?!?


この声は……クリス様??

なんて言った? 魔物?? 


私よりも先に真冬くんが動いた。


「エリー、先ずは部屋の中へ入るんだ。急いで!」


「真冬くん、どういうこと!? 魔物って何?」


「……ここの避暑地から森が見えるだろう? あそこには普段は表に出てこないが、奥深くに魔物たちの住処がある、らしいんだ」


は!? なんでそんな危険な森ととなろ合わせのところを避暑地として貴族のリゾート地になんかしちゃってるのよ!? 


「ただその魔物っていうのは伝説上の生き物って言うことにされているのは知ってる? 魔物の上には魔神っていう存在もいるらしいんだけど……。って今はそんな話をしてる場合じゃない、とりあえず屋敷の中に入って!!」



真冬くんに言われるがままに別荘の中へ入る。




私の他にもお母様やウィルなどももうすでに部屋の中へいた。

皆不安そうな顔をしている。




「どう、したらいいの……?」


我ながら情けない声しか出ないことに呆れてしまう。ここでじっとしていても何も状況は変わらないのは分かっている。ただどうすればいいのかわからない。


頭を抱えていると、お父様や真冬くん達、男性陣が立ち上がった。



「……少し言ってくるよ」



重々しくもすべてを分かっているような口調でお父様が言葉を発した。

それにお母様たちが反論する。


「何言ってるの!? 王都から援軍が来るまで待ちましょう?」


「そうよ、向こうは一匹じゃないわ。無事に戻ってこれるとは……限らない」


私も反論したかった。でも……ここで引き止めてしまったら被害が大きくなってしまう。それにこの場に居るのは私達だけじゃない。他の貴族だって……いるんだ。


私も役に立ちたい。ついていっても足手まといになるだけだって分かってるからもどかしい。

そんな私の心の葛藤に真冬くんとウィルは気づいたらしい。二人とも安心させるように口角を上げ、余裕の笑みを浮かべていた。


「大丈夫だよ、エリー。そんな顔しないで。仮にも僕は魔法師団長だよ? この世界に僕よりも優れた魔法の使い手はいないから」


「そうだぞ。俺も騎士副団長だ。魔法師団長と騎士副団長が揃っておいて負けると思うか?」


「…………思わない」


そうだった。二人ともこの国の1、2位を争う実力の持ち主だ。負けるはずない。


二人の言葉のおかげで私の心は軽くなったように感じた。

そして笑顔で気をつけて、行ってらっしゃいと言おうとしたその時だった。



『やっと見つけた』



「「「!?!?!?」」」


誰!?


きちんと閉じられていたはずの窓からは外からの涼しい風が吹き込み、カーテンが優雅に揺れている。


その縁に腰をおろしていたのは、額に大きな角を一本はやしたヒト(・・)だった。

しかし人間ではないことが一目で分かる。大きな角もそうだが、白目のはずのところは真っ黒で瞳は爛々と燃えるような金色をしている。

魔物の襲撃から考えても相手は魔物の類と考えるのが妥当か。いきなり過ぎて理解が追いつかない。


それにさっきの言葉。"やっと見つけた"……?

何を見つけたのだろう。


だが考える暇もなかった。私の体は宙に浮いていたからだ。


「!? な……!!」


『もらっていくぞ、俺の花嫁』


は、花嫁……??


「「返せ!!!!」」


ウィルと真冬くんの声が重なると同時に、魔物? は私を抱えたまま、窓から飛び降りた。

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