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41 なんで九字?

「ん……んん……」


目を覚ますとそこは見知らぬ場所だった。私を連れ去った本人は不在のようだ。

どうやら私は連れ去られている最中に気を失っていたらしい。そりゃあほぼ荷物抱えるような格好であんな高いところビュンビュン走られたら失神でもなんでもするわ!! 危うく高所恐怖症になるところだったぞ!?


で、ここは何処なのさ。

見渡す限りだとどこかの一室のような雰囲気だけど。結構上等なところの。

私はというと縛れてもなければ動けないわけでもなく。あんなに雑に運ばれた割には置かれ方は丁寧だったようで体の痛いと感じるところはない。

あいつは一体私をどうしたいのだ?



私が置かれているところはだだっ広い場所で、机と椅子が一つずつある。逆に言うと一つずつしかない。ほんとにそれだけだ。ただ、壁やその机と椅子には細かい彫刻がびっしりと施されていて、王族のものに並ぶ絢爛豪華さを発揮させていた。

しかし彫刻と言ってもよく見る花や草木、動物などをモチーフにしているものではない。これは……文字……?

見たことは……ないと言いたいところだが所々にある。


"漢字"だ。


何故こんなところに描かれてるんだ? この世界に勿論だけど漢字なんて存在しない。なんせ横文字の世界だから。前世では見たことない言語だけど。


机と椅子に関しては細かすぎて読めないからちょっとおいておいて。壁に施されている分には知っている漢字がいくつか見つけることができる。


「臨」「兵」「闘」「者」…………。




…………九字かな?


九字のイメージって何かを封印したり何かを祈ったりするときに切るやつだったと思う。詳しくは覚えてないけど……。


この9つ(臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前)の漢字は一箇所に固まって書かれているのではなく、部屋の4つの面にそれぞれバラバラになって書かれていた。


最後の「前」だけ見つからないなと思ってたけど、よく見ると地面にあるじゃん……。


漢字が書かれているだけでも謎なのにましてや九字ときた。書かれている彫刻見たら何かわかるかなーとか思って調べてみたけど、余計にわからなくなっちゃった。



『起きたか』


遠くから響いてくるような、少し不気味さを醸し出している声の持ち主は私を連れ去ったやつだ。

人間ではないと思う。人間に角生えてるのとか見たことないし。


「ここは?」


『やっと連れてこれた。忌々しい花嫁!! 俺をここへ閉じ込めた!!』


ええ……!! どうしてそうなる!?

何か聞き方間違えたかな。ここは? としか言葉発してないから大丈夫だと思うが。


「あの……」


『ああ、そうだ。そうしよう。俺と同じ…………』


だめだ。一向に私の話なんて聞く気がない。今も一人の世界に入っていってしまった。


なにかぶつぶつ言ってる。時々聞こえてくる単語は"聖女"だの"閉じ込めた"だの……。

これ、私絶対人違いされてると思うんだけど……。無理だと踏んだ上で、ものは試しだと思い言ってみることにした。


「あの……!! 私エリーナって言います。あなたの花嫁なんて聞いてないし、人違いだと思うのですが……」


それでも案の定ぶつぶつ言っている言葉は止まらない。どうすればいいんだ? 逃げ出す?

そうだ、逃げよう!! バカ正直にこんなところにずっといる必要なんてないんだ。今なら魔物(?)も一人の世界に入ってるから気づかないだろう。


そろっとドアへ近づく。だが逃げることは叶わなかった。


ドアを開けようとした瞬間に後ろからどんっという音がしたと思うといつの間にか目の前には魔物(?)がいたのだ。


背中には先程まではなかった黒い翼が大きく開かれていて、それだけで軽く部屋の半分は埋まっているだろう。


『どこへ行く』


感情の読み取れない声で上から睨みつけてくる。


「か、帰りたいの」


何とか体の震えをさとられぬように気丈に振る舞う。

自分よりも位が上の人に理不尽な理由で絡まれたら自分の弱さを見せてしまったその時が負けであると、この世界に来て学んだ。例え相手が人間で無かろうと同じだろう。むしろこっちのほうがしっくりくる。


キッと相手を下から睨みつける。


『この部屋からは、出られない』


「だから、なんで私はここに連れられて来られたの? 理由が無いんだったら帰るわ!」


『理由ならあるさ。お前は俺の花嫁になるんだからな。お前はこの部屋で一生過ごすんだよ』


ニヤニヤとキミの悪い笑いを浮かべている。

連れ去ったときも花嫁がどうちゃらとか言ってたよね。あのときも"こいつ、頭トチ狂ってんのかな"って思ってたけどマジだったみたい。


絶対、100%人違いだ。


「私は、あなたにあったことがないわ。名前だって知らないし」


『何言ってるんだ? お前が俺を閉じ込めたんだろ、聖女!! ギルアとでもいえばわかるか?』


わかるわけな……いや、ちょっとまって。

"ギルア"……? どこかで聞いたことあるような……、あーー!!

お前、あれか!! いつしか起こった誘拐事件の雇い主! 

確かギルアって言ってた!!

まさかのここで繋がってしまうとは……。


そしてやっぱりギルアとやらは人違いしてる。

私はギルアを閉じ込めた覚えもないし、ましてや"聖女"なんて言われたこともない。


再び人違いだと言って部屋を出ようとし、ドアノブを回したが、開かなかった(・・・・・・)

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