36 魔法石の完成
「……というわけで少し領地に戻るね」
真冬くんの手伝いをしながら思いたったように口にする。
今何をしているかというと、前に言っていた携帯出来る魔法石を作りたいということで少し前からお手伝いしているのだ。もうすぐ完成するため領地に戻る前に作ってしまおうと、魔術師団本部であるこの塔に来ているわけです。
週2〜3のペースで来ているためここの人たちとも随分顔見知りに。今や王宮に出向いただけで魔術師団の誰かがここまで連れてきてくれるようになっています。
歓迎されているというか尊敬されてる? 私はただ手伝いしているだけだと思うんだけど……いささか謎である。
今日も王宮を出向くとすぐさまこの部屋に通された。
「領地って?」
「ほら、避暑地で有名なとこ。あそこアストランティア家の土地になるの」
あくまで手は止めずに喋る。
「そろそろ完成じゃない?」
「うん。後は……」
最後の仕上げに、と魔法石(はじめはただの石)に少し加工を施す。
これは真冬くんじゃなくても魔力がそこそこあれば誰でもできるらしい。私には出来ぬが。
「出来たよ」
完成したのはポケットに入るくらいの小さな石。普通の石と違うところはぼんやりと光っているところか。
魔法石といえば高くて、貴族でもそうやすやすと買えないのが特徴だった。だがしかし!! これは石に魔力を加えただけなので平民でも扱えるお値段に!!
魔力を加えているだけだから簡単だろうと思っているがそうではない。分かってしまえば誰でも出来るのだけれど、このやり方を見つけ出すために約一ヶ月ほどかかってしまい……。
無事出来たから終わりよければ全て良しということで。
ふうっとお互い息をはき、休憩に他の魔術師団員の方が丁度いいタイミングでお茶とお菓子を持ってきてくれた。
はじめはなかったがいつの間にか置かれていたふかふかのソファに腰を下ろす。
「後はこれを国王に見せるだけだ。ありがとう、エリー」
「いやいや、少し手伝っただけだよ。ほぼ真冬くんが全部やってたみたいなもんだし……」
手伝っているとはいえ本当に役立っているのかは謎だ。
一口お茶を頂いたところで本題へと入る。
「領地に戻ったら一週間くらいここに来られないかもしれない」
手伝いの他、この報告のために来たのもある。
昨日のこともあり、何も言わずに領地へ戻るのは気が引けたため、一応真冬くんにはと。
「そこの避暑地だったら僕も行くよ?」
当然のごとく真冬くんが言ってのけた。
僕も行くよって、、何故?
「なんでって顔してるね。今まで気づかなかった? ウィスダリア家も毎年そこに行ってるんだけど」
マジか!!?
確かに結構な貴族の数は来てるなって思ってたけどウィスダリア家もだったのか!
ほんと自分の貴族への感心のなさに呆れる……。これからはもっとちゃんと見ておこう。せめて自分の家に関わる事くらいは。
「じゃあ向こうで会うかもしれないね。離れてるとはいえ意外と近いから」
「それなら今回は少し外に出てみようかな。いつもは避暑地に行っても部屋にこもってるだけだから」
「じゃあウィルも連れて遊びに行くね!」
その瞬間真冬くんの動きが止まったような気がした。
そう。毎年恒例で私の家、アストランティア家とウィルの家、カルミア家は一緒に避暑地へ行ってるのだ。
前世では友達とどこかに泊まりに行くっていうことはなかったから新鮮で嬉しい。
カルミア家の別荘でいつもとまらせて貰っているからアストランティア家よりも広いっていうね。
「ウィルラインも、、行くの?」
「? うん。毎年一緒に行ってるよ? 家族ぐるみで仲いいから」
お母様同士も仲いいけど案外お父様同士も仲が良かったりする。ほんとに家族ぐるみだな!!
「……3日後って言ったよね。ちょっとまってね」
真冬くんはそう言って立ち上がり、何処かへ行ってしまった。
一人取り残された私。……何をすればいいのだ?
と、考える暇もなく、一瞬で真冬くんは部屋へ戻ってきた。
「ごめんね、待たせて。3日後には丁度国王への謁見の予定が入ってていけないんだ。僕も出来るだけ早く避暑地に行くようにするから。……そうだね、、ついたら会いにいくよ」
「! 分かった!! うち、いつもカルミア家の別荘にとまらせて貰ってるの。アストランティア家に行っても誰もいないと思うからこっちの方に訪ねてもらえる?」
「……カルミア家だね。なおさら早く行くようにするよ」
やった!! 真冬くんも来てくれると!!
避暑地なら他の貴族に会う必要もないから二人がいても目立つことはないし、いがみあうこともないと思う。
真冬くんと遠出って久しぶりだな。
一応ウィルにも言っておいたほうがいいか。突然真冬くん来たらビックリすると思うから。
「何かあったらすぐに言うんだよ。あ、これをあげる」
そう言って先程完成した魔法石の一つをくれた。
真冬くんの髪の色と同じ、淡く銀色に光っていて真冬くんの魔力を感じる。
「それはエリーのために作ったものだから他のものよりも少し魔力が多く入ってるんだ。何かあったらすぐに守ってくれる。絶対にはなさいでね」
ありがとう、とその時は感謝の気持ちだけで受け取った。
私はまだこの魔法石のおかげで命が助かることになるとは思いもしない。




