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32 お約束の時間です。

さあさあ来ました。来てまいりました。

お約束のお時間ですよ。


とりあえず今の状況を軽く説明いたしましょう。


先ず初めに私がどこにいるかというと、ホールとは少し離れた人気の少ない場所に来ております。そして目の前にはひー、ふー、みー……5人のご令嬢。中心には皆様ご存知のあの方! アナスタシア様です!!

少し般若のようなお顔になっていらっしゃいますねえ。




うん、あのね……


……誰か助けてください……。



少し時間は遡る。


♢♢♢


一つの曲が終了する。

真冬くんと踊ったのと比べると比較的動きが小さくてすむから楽だった。ウィルと踊るときも八割型この曲である。


「大丈夫か?」


「うん。でも普段2曲も続けて踊らないから疲れちゃった。ちょっと休むね」


「ああ、そうしておけ。飲み物でも取ってきてやろうか?」


「うーん……じゃあおねが……」


「はい」


私が言い終わる前に後ろから真冬くんの手が伸びてきて、私にレモンのジュースを渡してくれた。

いつからいたのかな……?

毎度のことながら必ずと言っていいほど知らない間にそばにいる真冬くん。いいんだけど急に現れるとめちゃくちゃビックリするから心臓に悪い。体がびくってしたのも許してほしい。



「あ、ありがとう」


レモンジュースを受け取り口をつける。

あ、これ美味しい。こんな場に置かれているのは基本フルーツのジュースだから誰もが飲みやすくなっている。今日はガウラ王子の生誕パーティーだと言うこともあって未成年が多いためいつも以上にジュースの種類が多い。

アルコール類も勿論あるよ。大人もいるし、数的に言えば半々くらいか。

成人は18だからね。まだ私も、ウィルや真冬くんも成人していないからお酒は飲めない。


「で、これからどうする?」


ウィルも私と同じレモンジュースを飲んでいた。何故こう、飲んでいる人が変わるだけでこんなにもお洒落に見えるのか……。真冬くんも同じの飲んでる。やっぱりこの二人、並んでると絵になるなあ。


「どうする……、もう用事も終わったし帰ろうかな。フラン兄もそろそろ挨拶終わった頃だと思うし聞いて見るよ」


「フランとやらに頼まなくても僕が送っていくよ。ちょうど僕も帰ろうと思ってた頃だしね」


「いや、それなら俺が行く。フラジスト、お前まだ侯爵家への挨拶終わってないだろう」


やはりおわってなかったのか!!

それに私フラン兄にも送ってもらうつもりは無いのだけれど……。フラン兄も久しぶりにこっちに出てきたからまだパーティー楽しみたいと思うし、帰るとだけ言って馬車でピューッと帰ろうかなって思ってた。


「何故侯爵家等にわざわざ挨拶しにいかなくてはいけない。それに先程向こうから挨拶に来ていた。もう必要ないだろう」


「いやいや、そうはいかないだろ。どれだけ面倒くさくても一応は決まりだから守っておけよ。俺はもう終わってるからな。お前が勝手にリーナを連れ出して踊っていたときに」


ちっと真冬くんが盛大に舌打ちしたのが聞こえた。

今日はやけに舌打ちするのを聞くな。私、舌打ち上手くできないからならないんだよね。運動音痴に引き続きこれは何音痴になるのか。


「……挨拶は行ったほうがいいよ。私は一人で帰れるし、何ならフラン兄に言っても一人で帰るつもりだったし」


「「一人は駄目だ!!」」


そこはハモることができるのね……。仲がよろしいのは良いことで。これだけ拒絶されると一人で帰ると押しきれないじゃないか。


「……分かった。言ってくるよ。そのかわり!! エリーはここで待ってて。すぐに終わらせてすぐに帰ってくるから」


「分かった」


そう言い残して真冬くんは人混みの中へ去っていった。どれだけ早く終わらせるって言ってもたぶん真冬くんが挨拶していないのはグランディ侯爵。あそこ、確か私と同じくらいのご令嬢がいたはず……。帰ってくるまで三十分はかかるか。


「それじゃあ帰るか」


えっ!? ウィル!?

まさかの約束を正面から突き破って"帰るか"と来ましたか。いや、いいけどさ。何も言わずに勝手に帰るのは流石の私でも抵抗あるよ。

だが、それは叶わなかった。私を外へとエスコートしようとする前にどこかの伯爵に捕まった。


「これはウィルライン様ではございませんか!! 私はファスカー・リーゼルと申します!! 良ければ……」


と、ウィルが何か言う前に何処かへ連れて行ってしまった。ああぐいぐい来れるのは一種のスキルだと思う。私には出来ないことだ。


しかし……また一人になってしまったな……。でもこれは好んで一人になったわけじゃないからね。後で私に対しては文句は言われないはず。ただ、一つ問題があるとするならば……。


「エリーナさん、少しよろしくて?」


ほら来た。

今日は一人になると必ずと言っていいほど面倒くさい事に絡まれる。ガウラ王子の時だってそうだ。あれは自分から一人になってしまったのが悪かったけど、、。


「何でしょうか」


軽く笑みを作る。微笑みはいわば私達の武器だ。


「ここでは少し……向こうに席を用意してありますのでご一緒にお茶もいかがです?」


アナスタシア様が周りのご令嬢に相槌を打つ。すると待っていましたと言わんばかりに少しホールから離れた場所へと案内された。


まあ、予想通りというかそこに椅子は勿論机もお茶もないけどね。


それで冒頭へ戻ります。

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