表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

240/242

240.セイラの帰還

 双子の育児なんて、大変に決まっている。

 双子でなくても、育児をやっている人を、心から尊敬する。


 ミコトは、本当に、本当に恵まれていた。


 ダイとレイの夜のお世話は、夜寝なくても平気なロイがやってくれる。

 

 昼間は、保育所と化した聖女の部屋で、セイラとマリーとシェナと4人の赤ちゃんでワイワイと過ごす。

 

 たくさんいる護衛の騎士団員も、コランを筆頭に赤ちゃんの散歩などを手伝ってくれた。


 ミコトは、一人で行動することを禁止されているので、自然にいつも誰かがお手伝いをしてくれる状況だったのだ。


 この感謝を、どう伝えたらいいのか。

  

 そんな思いから、ミコトは女性騎士団員に併設予定だった保育施設の出資者になり、施設の建設を早め、自ら施設長に就任し、料理長にはシェナを指名した。


 保育施設は、女性騎士団員以外の誰でも利用出来るように変更もかけた。


 保育士という資格はこの世界にはないのだが、育児経験のある多数の女性たちが職員に志願してくれて、マニュアルも育児経験者の意見を元に作成された。

 働きたい女性はたくさんいたのだ。


 女性騎士養成所も年々志願者が増え、一期生が卒所した年に、女性騎士団も満を持してスタートした。


 とはいえ、初年度の団員は10人だったので、騎士団の男性たちの勤務に混ぜてもらう形をとった。


 男性は、女性がいると、張り切るらしい。

 思わぬ士気上昇効果があったとかなかったとか……。


 

 ダイとレイの髪色は、ミコトとロイの希望通りにはならず、2人とも濃い茶色になった。

 瞳の色も、2人とも茶色で、陽に当たると、髪も瞳も、キラキラとした琥珀色に見える。


 ただ、2人の髪が伸びた頃には、ミコトもロイも髪色なんてどうでもよくなっていた。


 ダイは、アリアンらしく元気にスクスクと成長し、レイは多少体は弱いが、ミコトの治療を受けながら、普通の生活を送れている。

 

 そう、親からすれば、元気に育っているのなら、外見など、二の次なのだ。


 


 こんな風に、仕事に、育児に、忙しくも幸せに過ごしていると、月日はあっという間に過ぎていくものらしい。


 ダイとレイが4歳になった9月。

 

 そう、ミコトとセイラがエラルダに転移してから、10年の月日が経った9月。


 第1エラルダ国の教会では、聖女帰還の儀式が行われていたーー。



 

 

 聖女帰還の儀式は、セイラの意向でかなり少人数で行われることになった。


 出席者は、ミコトとロイとダイとレイ、代表のセタ、マリーとリントとルリ、神官長のゼノマだけだ。


「ミコちゃん、元気でね。ミコちゃんが幸せに暮らしていることは、この私が責任を持って、大パパと琴ママに伝えるから、何も心配しなくていいからね」


 20歳になったセイラはそう言うと、同じく20歳のミコトをギュッと抱きしめる。


 本来なら、「派遣聖女」は記憶を消されてしまうのだが、神様との交渉により、セイラは記憶を持ったまま、地球に帰還する事になったのだ。


 ただ、手紙などのモノはやはり持っていけないそうで、セイラの言葉だけで、ミコトの無事をミコトの両親に説明することになる……。


 こんなこと、信じてもらえなくて、セイラが辛い思いをするのでは……とミコトは心配だが、セイラは全く気にした様子はない。


「うぐ、セイラ、元気で、幸せに……」

「もう泣いてるじゃん!」


 ミコトは悲しくて涙が止まらないのに、セイラは、アハハと笑う。


「セイラ、元気でね。私、セイラが聖女で本当に良かった……」

 ルリと手を繋いだマリーは、瞳を潤ませて微笑む。


「私もマリーが侍女で良かった! いっぱいありがとうね!」

 セイラは笑顔でマリーに向かって親指を立てる。


「セイラちゃん、どっかいっちゃうの?」

 ルリは首を傾げている。


「セイラちゃん、レイとダイも一緒にいくー」

 ロイの左腕に抱っこされたレイが、セイラに手を伸ばす。


 右腕に抱っこされているダイは、状況を理解しておらず、あくびをして眠そうにしている。


 セイラは、ルリとレイに微笑んだ。


「お母さんの言うことをよく聞いて、元気でね!」


 セタとロイが口を開こうとすると、セイラは右手をピシッと前に出した。


「アンタと腹黒兄貴と話すことはない! ミコちゃんをよろしく!」


「承知しました。聖女様もお元気で……」

 セタは一礼をして微笑む。


「ミコトは任せて。聖女も伝言をよろしく……」

 ロイも微笑む。


 セイラは頷くと、リントを見てニヤリとする。


「2人目頑張ってね!」


「最後の言葉がそれ? まぁ、聖女も元気でな」

 リントは苦笑する。


「聖女様、そろそろかと……」

 ゼノマは、一歩前に出る。


「そだね。おっさんたちにも長生きしてって言っといてね」

 セイラはゼノマにそう言うと、ミコトから離れる。


 いやだ。

 行かないで。


 ミコトは離れていくセイラに、手を伸ばす。

 でも、セイラは待ってくれない。


 祭壇の前に向かって歩いていくセイラの姿が、涙で霞んでいる。


 セイラは祭壇の前で、くるりと向きを変えて、真っ直ぐミコトを見る。


 その顔は、驚くほど笑顔で、泣いているミコトとは対照的で、そして、セイラは何かを話していた。


 何を言っているのか、分からなかった。


 でも、それをきく前に、セイラの姿はすうっと消えた。


「……セイラ……! セイラぁ……」

 ミコトはその場に泣き崩れた。


 別れの覚悟なんて、全然出来ていなかった。


 もしかしたら、セイラはミコトと同じで、帰れないのかもしれない、なんてことまで思っていた。


 そんなこと、ないのに。

 そんなこと、あるはずなかったのに。


「ママ……」

 いつの間にか抱っこから下りていたレイが、ミコトの隣に立っている。


 顔を上げると、眠ってしまったダイと心配そうなロイが視界に入る。


 マリーもリントもセタも表情を曇らせている。


 大切な、ミコトの家族。

 そして、大切なミコトの仲間。


 ミコトはレイを抱きしめて、立ち上がった。


「みんな、セイラのこと、ありがとう」

 ミコトは笑顔でそう言っていた。


 最後まで泣かなかったセイラ。

 

 ちゃんと強く生きていこう、とミコトは思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ