230.ミレイとアサキの結婚式
マリーの出産から1週間が経ち、ミコトとロイは、ミレイとアサキの結婚式に出席するため、第2エラルダ国に来ていた。
赤ちゃんともっと触れ合いたいミコトだったが、ミレイの結婚式では大切なお役目がある。
本来神官が読み上げる「誓いの言葉」をミコトが読み上げるのだ。
この日の為に、ミコトはゼノマにお願いして読み上げる練習までしていたのである。
ミレイとアサキの結婚式は、ミコトが「神聖な治療」を行った中央の教会ではなく、町外れの小さな教会で行われた。
参列者は親族のみで、ロイとミコト、リオとカーサ、ミレイの育ての両親と姉、アサキの姉の8人だった。
ミレイの育ての両親と姉は、ミレイと仲が良く、ミレイは10歳以降病気ではあったが、それまでは幸せに暮らしていたのだと、ロイはホッとしていた。
アサキの両親はすでに亡くなっており、唯一の家族の姉はかなりの美人で、ミレイはアサキの姉の事を「お姉さん」と呼んでいた。
これは、ミレイがミコトを「お姉ちゃん」と呼ぶ日は永遠にこなさそうだ、とミコトは少し残念に思っていた。
ミレイはあの頃より健康的にふっくらとし、顔色も良く、なによりしっかりと歩いていた。
きっとアサキの食事とリハビリが功を奏しているのだろう。
レースがたっぷりあしらわれた純白のドレスを纏ったミレイと白いスーツのアサキを前に、ミコトは「誓いの言葉」を無難に読み上げ、結婚式は無事終了した。
「お姉ちゃん、これ、約束のケーキです」
アサキはミコトに大きな箱を3個差し出した。
アサキはミコトを「お姉ちゃん」呼びすることに抵抗がないようだが、ミコトはイマイチ慣れないし、アサキの姉もかなり引いている。
「あの、このケーキ、今からみんなで食べませんか? 陽気的にも悪くなってしまうし、帰りに崩れてしまうかも、なので……」
ミコトの提案に、アサキは「それなら新居にご案内しますよ」と微笑んだ。
アサキの姉とミレイの育ての両親と姉は、仕事があるからと帰ってしまったが、その代わり、今日は休日でリオとカーサを迎えにきたというソマイが一緒に来ることになった。
ソマイが現れる事は想定外で、ロイは何だか変なメンバーになったな、と思っていたが、ミコトもソマイも気にした様子はなく普通に会話をしている。
ソマイは女性と話せるようになったのだから、今はもう、付き合っている女性がいるのかもしれない、とロイは少し安心していた。
アサキとミレイの新居は、台所やお風呂などを除けば、リビングと寝室のみの暮らしやすそうな平家だ。
「じゃあ、ミレイさんも、医者を目指すんですね」
「ええ、冬の医学試験に向けて勉強中なの。受かったら、ヒロ先生に弟子入りしたいなと思っていて……」
ミコトとミレイは、アサキの作ったぶどうのパウンドケーキを食べながら、医学試験の話で盛り上がっていた。
ミコトも医学の勉強をしていたし、実は今も密かに勉強中なのだ。
「体の各部の名称が似ていて覚えにくい!」という愚痴も、同じ勉強をしているからこその話題である。
「ミレイ、元気になって本当に良かった……」
医学の話はさっぱり分からないが、将来の目標を話すミレイに、ロイは感動して思わず呟いていた。
アサキとリオも「本当に……」と頷く。
そんな男性たちを見て、カーサはリオに目線で合図をする。
「ああ、そうだったな。すみません、ロイさん、それからアサキとソマイも、少し別室でいいでしょうか」
リオの言葉に、ロイとアサキとソマイは顔を見合わせて頷いた。
「では寝室に……」
寝室に移動するリオとロイとアサキとソマイを見て、ミコトとミレイは首を傾げる。
カーサはふふっと笑った。
「男の人たちは、つまらないお仕事の話なのよ。それより、私たちは別の話をしましょうよ」
『別の話?』
ミコトとミレイの声が重なる。
「そう。例えば、男性を喜ばせる夜の手法……なんてどうかしら?」
な、なんですとっ!?
そんなものが存在するんですか!?
ミコトとミレイは顔を赤らめて目を見開く。
カーサはウフフと妖艶に微笑んだ。
「ご興味ないのなら無理にとは言いませんが……」
「あ、あります! ぜひご教授下さい!」
「ちょ、ミコトさん!?」
前のめりなミコトに、ミレイはギョッとする。
「だって、ロイが喜ぶことですよね? ぜひ教えて欲しいですよ! ミレイさんもアサキさんを喜ばせましょう!」
「ミコトさん、絶対に意味分かってない!」
ミレイは真っ赤になって叫ぶ。
「ミレイさんはご興味ないですか?」
カーサの問いに、ミレイは「な、なくもないですけど……」と小声で答える。
「では決まりですね。わたくしの知っている全てをお教えしますわ」
『全て……』
ミコトとミレイはゴクンと唾を飲み込んだのだった。




