227.目隠し?
政務棟の代表室で、セタとロイが話していたところに、突然目隠しをしたミコトが現れた……というところで、セタとロイは呆気に取られていた。
「ちょ、え? なんで目隠し……? ていうか、気配消してた?」
ロイは混乱しながらミコトに質問を投げかける。
「ロイは私の居場所が分かるから、悟られないように気配遮断でここまで来たんだよ!」
「ミコトさん、そっち壁、壁に話してるよ。ロイ先輩はあっち」
タリスが横から出てきてミコトに言う。
「タリス!? どういうことなの!?」
ロイは頭を抱えてタリスに質問する。
「いや、理由は全然分からないけど、気配遮断して政務棟まで行くっていうから、俺も気配遮断して護衛をしてた……」
「理由も分からず付き合ってたの!?」
「俺、ミコトさんの言動の9割は意味不明なんで、いつものことだと……」
タリスの言いように、ロイはガクッと膝をついた。
「そんなことはどうでもいいの! セタさん! もう契約だとか言ってないで、キッパリハッキリ、シェナさんに気持ちを伝えて下さい!」
ミコトは言い放ったが、セタ視点では、ミコトは目隠しをしてセタの方ではなく、ソファの方を向いている。
セタはぶはっと吹き出した。
「ごめ……。いや、分かった、分かったけど、肝心のシェナは……?」
「ミコトさんの足が速すぎて置いてきちゃったんすよ。もうすぐ来るんで待ってもらえますか?」
ミコトの代わりにタリスが答える。
セタは「置いてきた……!」とさらに笑い、ロイは床から立ち上がれないでいた。
「じ、じゃあ、待ってる間にミコトちゃんに聞いてもいい? 目隠しはどこからしてきたの?」
「聖女棟からです! 方向はタリスさんが教えてくれました!」
「うわ、すごい……!」
セタはお腹を抱えた。
つまり、ミコトは気配遮断しながら、目隠しでかなりのスピードで走ってきたということだ。
「何で目隠しをしてるの?」
「……そ、それは、企業秘密です!」
セタは、何の企業なんだよ、とさらに笑う。
すると、息を切らしたシェナとセイラが代表室に入ってきた。
先に口を開いたのは、セイラだった。
「あ、腹黒兄貴! 聖女を利用したこと、許さないんだからね! くらえ、ミコちゃんの意味不明行動を!」
「う、うん、もうくらったよ」
セタは顔を覆った。
これは、攻撃だったらしい。
ある意味成功している。
「……セタ、私……」
シェナは息を整えながら、セタを見る。
「ああ、シェナ。何だか細かいことがどうでも良くなったよ」
セタは立ち上がってシェナの方へ歩く。
ロイも何とか立ち上がり、ミコトの腕を引っ張って引き寄せる。
ミコトは急に引っ張られて、「ひゃっ」と声を上げた。
「静かに。後でちゃんと理由を教えてね」
ロイはミコトの耳元で囁く。
目隠しをしているせいなのか、ロイの声や感触がいつもより大きく、ミコトは顔を赤くした。
「シェナ、契約を持ち出してプロポーズしてごめん。本当はただ一緒にいて欲しかったんだ」
「……セタ……」
セタの言葉に、シェナは涙ぐんで顔を両手で覆う。
ミコトも、何も見えないが、「良かった」と呟き涙ぐむ。
目隠しの布がその涙をじんわり吸い込んでいく。
「ミコト、布が濡れてるよ。コレ、取ってもいい?」
ロイはミコトの目隠しの布をくいっと引っ張る。
「ダ、ダメ! 取らないでっ! 視覚情報に惑わされずに生きたいの!」
ミコトは手を振り回す。
「ロイ先輩、ミコトさんの言動の意味が分かるなんてある意味尊敬する……」
「いや、これに関しては俺も分かんない……」
タリスとロイは溜息をついて、チラリとセイラを見る。
二人の視線に気付いたセイラは、嫌そうな顔をした。
「ちょっと! 私の差し金じゃないからね! マリーも違うよ! マリーなんて『恥ずかしいから私は行かないわ』って言ってたくらいなんだから!」
「そこまで冷静に常識的に見てるなら、ミコトを止めて欲しかった……」
ロイはハァと息を吐いてから、ハッとした。
ミコトは気配遮断して、ロイに悟られないようにしたと言っていた。
ロイはミコトが近づいてきたらすぐに分かる。
気配遮断で完全にミコトの気配が消えたら、これもすぐに分かる。
つまり未熟な気配遮断で気配が分かりづらい微妙な状態になり、ロイを目くらました、ということだ。
「恐れていたことが……!」
ロイは再びガクッと膝をつく。
「ロイ先輩!?」
「ロイ? あれ? どこ?」
タリスは突然膝をついたロイに驚き、ミコトは見えないので、手をバタバタさせる。
「ミコちゃん、もうそれやめなよー」
ミコトに寛容なセイラも、さすがに呆れて溜息をついたのだった。




