224.アリアンは辞められない
マリーとリントの結婚式と披露宴が無事に終わったその日の夜、ミコトは自宅のベッドの上でロイの膝の上に座りながら、ロイから女性騎士団の話を聞いていた。
セタが来ていた……という話は、実はセイラの侍女が話していたので知っていたが、女性騎士団設立の話と第1での家探しだったとは……。
「それでね、女性騎士団の団長をミコトにやってほしいんだよ」
「ええっ!? そんな責任ある役職に、15歳の私じゃ無理だよ!」
ミコトは驚いて振り返り、ロイを見る。
ロイは、予想通りの反応だな、と笑う。
「統括はリントなんだ。全責任がミコトじゃないよ」
「でも……」
「えーと、女性騎士団長は、騎士団長、つまり俺との仕事が多いんだけどさ……」
ロイはセタに言われた通り、ロイ自身との仕事が多いことを仄めかす。
ミコトは振り向いていた顔を元に戻して前を向いた。
「……じゃあ、やる」
「あ、ホント? ていうか、決め手は俺?」
ロイはミコトを抱きしめながら耳元で言う。
「だって、他の女性がロイとたくさん仕事するのは……」
「あー、ミコト可愛い……」
「ひあっ! 耳元で言うのやめて!」
ミコトはロイの膝の上でジタバタと暴れる。
「そ、それより、セタさんと一緒にいた女性って、シェナさんだよね? シェナさんも第1に来るの?」
「あ、うん、セタ兄とシェナさん、結婚したんだって」
「そっか、結婚……って、ええっ!?」
ミコトは大声を上げて振り向き、再びロイを見る。
「俺も今日聞いてビックリしたんだよ」
「そっかぁ。でも、良かった。やっぱり2人は恋人同士だったんだね」
笑顔のミコトに、ロイは曖昧な表情で「うーん」と首を捻る。
「ち、違うの?」
「俺さ、セタ兄と前の聖女が一緒にいるところをよく覚えてるんだけど、結構イチャイチャしてたんだよね。でもシェナさんとは、こう、距離があるというか……」
なにその不穏な情報は!
まさか、偽装結婚!?
兄弟揃って!?
ロイは、ミコトの表情が不満げな事に気付いて苦笑する。
「まあ、アリアンを辞めたからかもしれないけどね。ほら、アリアンの男ってスキンシップが激しいんでしょ?」
ロイは言いながら、ミコトを抱きしめる。
ミコトは、ハッとする。
「ロイ! あのね、大事な話があるの!」
ロイはミコトを抱き上げて、膝の上に向かい合わせに座らせた。
「なんとなく分かるけど……、どうぞ?」
「わ、私がね、先に病気で死にそうだったら、アリアンを辞めて欲しいの!」
やっぱりその話か、とロイは微笑む。
「この話がロイを苦しめるって分かってるんだけど、でも先に言っておかないと……」
「ミコト、アリアンの記録を全部読んだよね。そして歴代、アリアンを辞めた先祖はいなかった。何故か分かる?」
ロイの質問に、ミコトは「アリアンでいることの誇り?」と言いつつも、首を傾げる。
ロイは「誇りか……」と笑う。
「神様は簡単に言ったけどさ、愛する者と繋がっている状態では無理なんだよ。切り離して考えられないんだ」
「だ、だって、それじゃあ、死んじゃったら意味がない……」
「ミコトのいない世界で、俺に生きる意味なんてな……ぐぅっ……!」
「ロイ! ごめん、この話やめよう!」
ミコトは、ロイにガバッと抱きつく。
ロイを苦しめたい訳じゃないのだ。
ロイはハァと息を吐くと、ミコトを抱きしめる。
「ごめんね。ミコトを困らせたくはないんだ。でも、分かって欲しい。無理なんだよ。そんな世界、生きられない……」
「うん、分かった! 私、死ぬほど長生きするよ! 長寿記録を更新してみせる!」
ロイはミコトを抱きしめながら「死ぬほど長生き……?」と呟く。
死ぬのか生きるのか、よく分からない……?
「この世界で一番長生きした人って、何歳?」
ミコトの質問に、ロイは首を傾げる。
「さあ……? 調べないと分からないけど、あのさ……」
「じゃあ、キダンさんに調べてもらおう! それで、私はその記録を追い抜くよ!」
キダンは今、ミコトを狙いそうな人物を各国を回って調査をしている。
そんな多忙を極めるキダンに、長生きした人の年齢を調べる依頼……?
「安心して、ロイ。おじいちゃんとおばあちゃんになっても、ずっと一緒だよ。私、死なないから!」
その上、まさかの、死なない宣言……?
ロイは、ぷはっと吹き出した。
「え? 何で笑うの!? 私真面目に……」
「うん、分かってる。ミコトはクソ真面目だから……」
「あ! またクソって言った! セイラも今日言ってきて……」
ロイはそのままミコトを持ち上げて、ふわっとベッドに寝かせた。
「ありがとう、ミコト……」
「……う、うん」
ロイはミコトに覆い被さるように抱きしめて「あのさ……」とミコトの耳元で言う。
「俺、ミコトとの、その、赤ちゃんが欲しいな……と思うんだけど……」
ミコトは赤面する。
「私も、私も欲しい……! あ、でも女性騎士団長……」
ロイはふっと微笑む。
「それは大丈夫。女性騎士団は、出産前後のお休みが取れるようになってるし、子どもを預ける施設を併設するって言ってた。騎士団長が率先して利用するのが一番いいってセタ兄が言ってたよ」
「すごい、さすがセタさ……んん!」
ロイはミコトの言葉を塞ぐように唇を重ねる。
ロイはミコトの話の途中でよくキスをする。
そして、少しだけ唇を離して、至近距離で会話をする。
「じゃあ、今日は、そういうことで……」
「は、はい、そういうことで……」
ロイとミコトは微笑み合うと、再びキスをした。




